2015年9月9日(水)



2015年9月9日(水)日本経済新聞 公告
売出価格等の決定に関するお知らせ
株式会社トプコン
発行価格等の決定に関するお知らせ
プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
株式併合に関する公告
株式会社ゴールドウィン
(記事)

 

2015年9月9日(水)日本経済新聞
損保、海外が主戦場に 三井住友海上、英社6420億円で買収 収益基盤、欧米に拡大
再保険事業を強化 災害などリスク管理 課題
円売り広がり 一時120台前半
(記事)

 

2015年9月9日(水)日本経済新聞
法人向けマイナンバー 来月22日から発送
(記事)

 

 


2015年9月9日(水)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
QAON合同会社
(記事)

 


【コメント】
QAON合同会社が発表した「公開買付開始公告についてのお知らせ」を見て、
新株予約権の発行価額とは何だろうか、新株予約権の取得価額とは何だろうか、
そして、新株予約権の譲渡価額とは何だろうか、と思いました。
新株予約権は会計上は有価証券に分類されるわけですが、果たしてその考え方は正しいのだろうか、と思いました。
まず、新株予約権を会計上有価証券に分類する、すなわち、新株予約権を貸借対照表の資産の部に計上する、とします。
この時、新株予約権の取得価額は権利行使により取得する株式の取得価額を構成しない、としますと、
新株予約権者は、権利を行使しても会計上損失(新株予約権の償却)を計上しますし、
権利の期限が切れても会計上損失(新株予約権の償却)を計上することになります。
このことを考えると、新株予約権を貸借対照表の資産の部に計上するという会計処理方法を前提にすると、
株予約権の取得価額は権利行使により取得する株式の取得価額を構成する、と考えないとおかしい、ということになると思います。
逆に、新株予約権は会計上有価証券には分類しない、すなわち、新株予約権を貸借対照表の資産の部に計上しない、
すなわち、新株予約権については権利の取得時に現金支出額を費用として処理する、とします。
この時、新株予約権の取得価額は権利行使により取得する株式の取得価額を構成しない、と考えても、
新株予約権者は、権利を行使しても会計上損失(新株予約権の償却)を計上しませんし、
権利の期限が切れても会計上損失(新株予約権の償却)を計上しません。
以上の議論を踏まえますと、株予約権の取得価額は権利行使により取得する株式の取得価額を構成しない、
ということを前提にしますと、
新株予約権は貸借対照表の資産の部に計上しないという会計処理方法が正しい、ということになると思います。
すなわち、新株予約権については権利の取得時に現金支出額を費用として処理する、という会計処理方法が正しいと思います。
仮に、新株予約権は貸借対照表の資産の部に計上しないという会計処理方法を行う場合、
新株予約権者は、保有する新株予約権を譲渡する(このたびの事例で言えば公開買付に応募する)、
ということができるのだろうか、と思いました。
もちろん、価額としてはゼロであるだけで、権利としては保有しているわけだから新株予約権は譲渡できる、
と考えることもできるとは思いますが、では新株予約権の譲渡益の金額はどう把握するべきなのでしょうか。
譲渡価額は明確かもしれません。
では、取得価額はいくらでしょうか。
新株予約権の元々の取得価額については既に費用処理していることを踏まえれば、やはり0円と考えるべきでしょうか。
権利行使価格が買付価格よりも高い場合は、その新株予約権は無価値であるわけですが、
無価値の新株予約権を1円で売ると(譲渡損ではなく)譲渡益が発生するというのは何かおかしな感じがします。
新株予約権にまつわる発行価額、取得価額、そして、譲渡価額(この事例の場合は買付価格)というのが何となく説明が付かないな、
と感じる部分が非常に多いわけです。
率直に言えば、「それらの価額に根拠はあるのだろうか?」と思うわけです。
そして、そもそも新株予約権は譲渡は可能なのか、と。
私が今日たどり着いた一つの結論は、「新株予約権は証券ではない。」という結論です。
言葉足らずでまだ十分には説明し切れていないかもしれませんが、今日考えたことを以下に書きました。
また、法律と会計で、確定債権(確定債務)の捉え方が異なる場合がある、という点についても書きましたので参考にして下さい。

 


The reason why what you call a stock purchase right is not a security is that the right is not a monetary obligation.

いわゆる新株予約権と呼ばれるものが証券ではない理由は、新株予約権は金銭に関する債権債務関係ではないからです。

 


All things considered, a security is a monetary obligation.

煎じ詰めれば、証券というのは金銭に関する債権債務関係のことなのです。

 


A stock is an extremely exceptional security.
A stock is a mix of a potential monetary obligation and a non-monetary obligation.
A stock represents these two rights above.
A potential monetary obligation is a right to receive a dividend in the future
and a non-monetary obligation is a right to vote to a company.
When shareholders liquidate a company,
a right to receive a residual asset of the company can also be regarded as a potential monetary obligation.
But, a shareholder doesn't have a right to claim a stock repurchase on a company.
A right to claim a stock repurchase on a company is not a potential monetary obligation nor a non-monetary obligation.
The only reason why a stock is regarded as a security is that a stock has an aspect of a monetary obligation.
For a monetary obligation has its monetary value, but a voting right has no monetary value.
A voting right is certainly precious, but at least it has no monetary amount.
In other words, no one can answer the question "How much is a voting right?"
On the other hand, any one can answer the question "How much is this monetary obligation?"


株式というのは、極めて例外的な証券です。
株式というのは、潜在的金銭債権と金銭債権ではない債権債務関係とを組み合わせたものなのです。
株式というのは、上記これら2つの権利を表象するものなのです。
潜在的金銭債権というのは、将来配当金を受け取る権利のことです。
金銭債権ではない債権債務関係というのは、会社に対し決議を行う権利のことです。
株主が会社を清算する際のことですが、会社の残余財産を受け取る権利もまた、潜在的金銭債権とみなすことができます。
しかし、株主には会社に株式の買い戻しを請求する権利はありません。
会社に株式の買い戻しを請求する権利というのは、潜在的金銭債権ではありませんし金銭債権ではない債権債務関係でもありません。
株式が証券であるとみなされる唯一の理由は、株式には金銭債権の側面があるからなのです。
というのは、金銭債権には価額がありますが、議決権には価額はないからです。
議決権というのは確かに貴重なのですが、少なくとも金銭上の価額はないのです。
他の言い方をすれば、「議決権はいくらですか?」という質問には誰も答えられないのです。
一方、「この金銭債権はいくらですか?」という質問には誰もが答えられるのです。

 



How about a stock purchase right?
Seemingly, the value of a stock purchase right is
a difference between the to-be-acquired price of a share and the exercise price.
It is true that the value of a stock purchase right can be calculated numerically,
but the numerical value is very superficial.
A stock purchase right is no more than a right to "acquire a share."
It is not a right to sell a share.
Will a holder of a stock purchase right exercise his stock purchase right
as at the settlement date of the takeover bid?
As of now, a holder of a stock purchase right doesn't have any shares.
In other words, as of now, a holder of a stock purchase right is not able to sell his shares.
What you call a put option of a share has its value because the put option is something like a lending or a receivable.
On the other hand, a call option of a share has no value
because to acquire a share doesn't generate any cash-in-flows nor any revenues.

 


Let's think that Mr. X (a vendee) makes a transfer contract with Mr. Y (a vendor).
Mr. X wants to buy corporeal property which Mr. Y now owns in the near future,
but Mr. Y wants to sell the corporeal property to someone as soon as possible.
So, Mr. X asks Mr. Y not to sell the corporeal property to any one until Mr. X buys.
Mr. X says to Mr. Y, "I will absolutely buy the corporeal proprty. I promise you."
Then, Mr. X says to Mr.Y, "I am going to pay you some money
in consideration of your patience not to sell the corporeal property to anyone for a while.
This is not a price of the corporeal property. This money doesn't compose the transfer price.
I am going to pay you only in token of my thanks for your patience and another obligation.
It's not a consideration of a trasnfer of the corporeal property
but a consideration of a committment not to sell the corporeal proprty to anyone."
In this case, what is the fair value of the consideration which Mr. X pays to Mr. Y?
No one can know it.
The only fact anyone can know is the amount which Mr. X pays to Mr. Y.
The amount itself can be decided quite arbitrarily.
But, can Mr.Y transfer the consideration which Mr. X paid to Mr. Y to anyone?
The discussion above is largely true of a stock purchase right.
In a sense, the consideration of a stock purchase right can be decided quite arbitrarily,
but the consideration doesn't compose assets nor liabilities.
That a certain cash expenditure is recorded on a balance sheet or a list of property means
that it is expected to or is able to be transferred in the future.
A stock purchase right is purely a right.
At that, it is not a monetary obligation.
It is not something which is able to be transferred.
Therefore, a stock purchase right is not a security.

 



では新株予約権の場合はどうでしょうか。
一見、新株予約権の価値は、株式売却価格と権利行使価格の差額であるように思えます。
確かに、数字の上では新株予約権の価値は計算できますが、その数値は非常に表面的なものです。
新株予約権は、あくまで「株式を取得する」権利に過ぎません。
新株予約権は、株式を売却する権利ではないのです。
新株予約権者は、公開買付の決済日に新株予約権を行使するでしょうか。
現時点では、新株予約権者は株式を全く所有していません。
他の言い方をすれば、今の時点では、新株予約権者は株式を売却することはできないのです。
株式のいわゆるプット・オプションであれば、価額があります。
なぜなら、プット・オプションは貸付金や売上債権のようなものだからです。
一方、株式のコール・オプションには価額はありません。
なぜなら、株式を取得することは何らのキャッシュ・イン・フローも収益も生まないからです。

 



X氏(買い手)がY氏(売り手)と譲渡契約を締結すると考えてみましょう。
X氏はY氏が現在所有してる有体物を近いうちに買いたいと思っています。
しかし、Y氏はその有体物を誰かにできるだけ早く売却したいと思っています。
そこで、X氏はY氏に、自分が買うまで誰にもその有体物を売らないで欲しいとお願いをします。
X氏はY氏に「私はその有体物を必ず買います。約束します。」と言います。
ここで、X氏はY氏に
「しばらくの間誰にもその有体物を売らないという辛抱をしていただく謝礼としてお金をお支払いしたいと思います。
これはその有体物の対価ではありません。このお金は譲渡価額は構成しません。
あなたの辛抱とあなたが負う新たな義務に対する謝礼のしるしとしてお支払いするだけなのです。
これは、有体物の譲渡の対価ではなく、有体物を誰に売らないという約束の対価です。」
と言います。
この場合、X氏がY氏に支払う対価の公正な価額というのはいくらでしょうか。
誰にも分からないでしょう。
誰にでも分かる唯一の事実は、X氏がY氏に支払う金額だけです。
その金額自体は全く任意に決めることができます。
しかし、Y氏は、X氏がY氏に支払った対価を誰かに譲渡できるでしょうか。
上記の議論の大部分は新株予約権に当てはまります。
ある意味、新株予約権の対価は全く任意に決めることができます。
しかし、その対価は資産も負債も構成しないのです。
ある現金支出が貸借対照表や財産目録に計上されるということは、
その現金支出はその後譲渡を予定しているもしくは譲渡をすることができる、という意味なのです。
新株予約権というのは純粋に権利なのです。
それも、金銭債権ではないのです。
譲渡できる何かではないのです。
したがって、新株予約権は証券ではないのです。

 

 



甲さん(買い手)と乙さん(売り手)との間で有体物の売買契約を締結した場合

 

ケースA:掛取引の場合


@売買契約を締結した日
法律上は、どちらにも行為に関する確定した債権債務関係が発生する。
甲さんには、有体物を買う権利と買う義務が発生する。
乙さんには、有体物を売る権利と売る義務が発生する。
ところが、会計上は、どちらにも確定した債権債務関係が発生しない。
甲さんには、代金を支払う義務はまだ発生していない。
乙さんには、代金を受け取る権利はまだ発生していない。

A有体物を引き渡した日
法律上は、行為に関する債権債務関係は消滅し、金銭に関する債権債務関係が発生する。
甲さんには代金を支払う義務が発生する。
乙さんには代金を受け取る権利が発生する。
会計上は、ここで初めて確定した債権債務関係が発生する。
甲さんには代金を支払う義務(仕入債務)が発生する。
乙さんには代金を受け取る権利(売上債権)が発生する。

B代金の決済を行った日
法律上は、全ての金銭債権は消滅する。
会計上も、全ての金銭債権は消滅する。

 



ケースB:現金取引の場合


@売買契約を締結した日
法律上は、どちらにも行為に関する確定した債権債務関係が発生する。
甲さんには、有体物を買う権利と買う義務が発生する。
乙さんには、有体物を売る権利と売る義務が発生する。
ところが、会計上は、どちらにも確定した債権債務関係が発生しない。
甲さんには、代金を支払う義務はまだ発生していない。
乙さんには、代金を受け取る権利はまだ発生していない。

A有体物を引き渡した日(=代金の決済日)
法律上は、全ての債権債務関係は消滅する。
会計上も、全ての債権債務関係は消滅する。

注:現金取引の場合、会計上は何らの債権債務関係も発生しない。

 



甲さん(寄付をする人)と乙さん(寄付を受ける人)との間で寄付を行う契約を締結した場合

 

@寄付を行う契約を締結した日
法律上は、行為に関する債権債務関係が発生すると同時に金銭に関する債権債務関係も発生する。
甲さんには寄付を行う義務と権利が発生する。
乙さんには寄付を受け取る権利と義務が発生する。
会計上も、確定した債権債務関係が発生する。
甲さんには寄付を行う義務(未払金勘定)が発生する。
乙さんには寄付を受け取る権利(未収金勘定)が発生する。

A寄付を行った日
法律上は、全ての債権債務関係は消滅する。
会計上も、全ての債権債務関係は消滅する。


注:会計上は契約締結日にではなく寄付を実際に行った日にそれぞれ仕訳を切ればよいのではないか、と思われるかもしれません。
  しかし、掛取引における商品代金の決済を思い浮かべてみれば分かるように、
  確定債権と確定債務が発生した時点で、それぞれ、収益が実現した、そして、費用が発生した、と考えるわけです。
  したがって、「@寄付を行う契約を締結した日」に、
  甲さんには支払寄付金(企業会計上は費用、税法上は損金ではない)が、
  乙さんには受取寄付金(企業会計上は収益、税法上は益金)が、
  それぞれ計上されることになります。
  これが、それぞれ実現主義会計そして発生主義会計と呼ばれる会計処理方法です。