2015年5月3日(日)


2015年5月1日(金)日本経済新聞
仏ルノーが株主総会 政府の議決権抑制焦点
(記事)

 

2015年5月2日(土)日本経済新聞
ルノー、議決権2倍決定 日産側 介入を警戒 雇用保護VS.世界戦略 仏政府 関与強める
(記事)



2015年4月23日
日産自動車株式会社
本日の取締役会決議に関する声明
ttp://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2015/_STORY/150424-04-j.html

 


過去のコメント↓

2015年4月9日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201504/20150409.html

 



【コメント】
2015年5月2日(土)の日本経済新聞の記事には、フランスでは会社法制に関して、

>2014年、株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与える法律を制定した。
>ただ株主総会で投票者の3分の2が反対すれば適用されない。

と書かれています。
これは、フランスの会社法では、
株式会社では「株式を2年以上持つ株主は2倍の議決権を与える」ことが原則規定となった、という意味のようです。
つまり、定款変更その他を行って、「株式を2年以上持つ株主は2倍の議決権を与える」という株式制度も株式会社は選択可能になった、
ということではなく、むしろ、1株1議決権という株式制度の方が例外的な取り扱いになった、という意味のようです。
あくまで1株1議決権という取り扱いを会社が行いたければ、「当社の議決権は1株1議決権とする。」というふうに別途定款に定めないと、
その株式会社では自動的に「株式を2年以上持つ株主は2倍の議決権を与える」という株式制度になってしまうわけです。
4月30日に開催されたルノーの株主総会を経て、
ルノーは「株式を2年以上持つ株主は2倍の議決権を与える」という株式制度になったわけですが、
それはその旨定款変更を行ったから株式制度が変更になったわけではなく、
会社側が提出した「当社の議決権は1株1議決権とする。」という旨の定款変更の議案は、株主総会決議で否決されてしまったからなのです。
記事に書いてあります「3分の2」という割合は、定款変更を行うための特別決議を可決させるための割合なのだと思います。
株式会社における意思決定の原理というものを考えてみますと、
何と言いますか、”現状維持のためには特別決議が必要だ。”というのはおかしいように思います。
会社の現行の制度を変更するためには特別決議が必要だ、というのなら分かりますが、
現行の制度のまま会社を運営していきたいという場面なのに改めて特別決議を取らなければならないというのは意味不明な気がします。
法理的なことを言えば、既存株主は現行の制度を望んでいるはずだ、と言うことができます。
なぜなら、仮に既存株主が現行の制度ではなく他の制度を望んでいるというのなら、
既存株主は過去の時点においてその旨制度の変更を既に行っているはずだからです。
既存株主は現行の制度を好んでいるのです。
ですから、会社は現行の制度で運営されているのです。
現行の制度の継続・維持のために特別決議を取らなければならない、というのは、
やはり意思決定の法理に反しているのではないでしょうか。

 


これは「契約」という場面でも全く同じことが言えるのだと思います。
改めて意思決定を行わなければ契約内容が自動的に変更になる、と考えてみますと、やはりそれはおかしいと分かるでしょう。
契約というのは、契約締結時の法律に基づいて締結されたわけです。
たとえ契約締結後法律が変更になっても、契約内容は契約締結時のままであるわけです。
契約内容は事後的な法改正に影響されないと言いますか、もしそのようなことがあれば、それは法の遡及適用というものでしょう。
このたびのルノーの場合も全く同じではないでしょうか。
既存株主は1株1議決権だからルノー株式を購入し保有しているわけです。
既存株主は「株式を2年以上持つ株主は2倍の議決権を与える」などという話は聞いていないわけです。
これが例えば、「株式を2年以上持つ株主は議決権の個数が半分になる。」という法改正であったとしたらどうでしょうか。
長期保有株主にとっては、ちょっと待てと言いたいどころの話ではないわけです。
2年以上保有していれば議決権の個数が2倍になるから問題がないように感じるだけなのです。
「保有している議決権の個数が自動的に減る。」という状況を考えてみると、そのおかしさに気付くでしょう。
株式制度の「変更」のためには、必ず株主総会決議(株主がその制度を選択したのだという事実)が必要であるわけです。
株式制度の「維持・継続」のために株主総会決議が必要だ、という考え方は根本的に間違いであるわけです。
契約内容の「維持・継続」のために、当事者の意思決定が必要でしょうか。
契約内容の「維持・継続」のために当事者の意思決定は必要ないのなら、株式制度の「維持・継続」のために株主総会は必要ないのです。
このたびのフランスにおけるフランス会社法の改正およびその運用(施行方法)は、
「意思決定の法理」を鑑みますと、根本的に間違っていると言わねばならないと思います。
今日は、「意思決定の法理」に照らしてコメントを書きましたが、
「株式の長期保有すると議決権が増加する」という考え方のおかしさについては、
2015年4月9日(木)のコメントを読んでいただければと思います。

 


An investment means an investment exactly at this time.
An investment does not mean an investment in the past nor in the future nor for a time.

出資というのは、まさに今現在の出資のことを指すのです。
出資というのは、過去の出資を意味するわけでもなければ将来の出資を意味するわけでもなければ
しばらくの間の出資を意味するわけでもないのです。

 

The means to determine an investment as at which time the investment is is exactly a "record date."

その出資はいつ時点の出資なのかを決定する手段がまさしく「基準日」なのです。