2015年3月6日(金)


2015年3月3日(火)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社テクノグローバル
(記事)



H27.03.03 11:59
株式会社テクノグローバル
公開買付届出書
(EDINETと同じPDFファイル)



2015年3月2日
新華ホールディングス・リミテッド
株式会社テクノグローバルによる当社普通株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://www.xinhuaholdings.com/uploadedFiles/media-center/news-and-events/press-releases/2015/20150302194210594.pdf

 


【コメント】
株式会社テクノグローバルが株式公開買付を実施する計画ですが、株式会社テクノグローバルは非上場企業のようです。
そして、株式公開買付の対象となる企業は
「新華ホールディングス・リミテッド」(新華控股有限公司Xinhua Holdings Limited) 
という会社です。
株式会社テクノグローバルの戦略面その他については特にコメントはありませんが、
「新華ホールディングス・リミテッド」については、公開買付届出書に以下のように説明があります。


対象者の事業内容等
(3/26ページ)



「新華ホールディングス・リミテッド」は香港を拠点とした企業であるようです。
「新華ホールディングス・リミテッド」自身は香港に登記された会社なのだと思いますが、
事業展開地域・クライアントは、中国本土を中心としているようです。
「新華ホールディングス・リミテッド」は、2004年10月28日付けで東京証券取引所マザーズに新規上場した、とのことです。
株式会社テクノグローバルはこのたび、東京証券取引所マザーズに上場している「新華ホールディングス・リミテッド」の普通株式を対象に、
株式公開買付を行っていく計画であるわけです。
「新華ホールディングス・リミテッド」の普通株式は、日本の東京証券取引所マザーズにのみ上場しているようでして、
香港の証券取引所や中国本土の証券取引所、さらには他の海外(米国やEU諸国などなど)の証券取引所には上場していないようです。
株式公開買付を実施するとなりますと、一定数以上の株式を買い集めるということが前提・背景にあろうかと思います。
極端な話をしますと、例えば新華ホールディングス・リミテッドが発行している全株式を取得しようと思えば、
上場している全ての国々において株式公開買付を実施していかねばならない、ということになるわけです。
さらには、その各国々の法律に従って、その国内にある新華ホールディングス・リミテッドの株式の全部を強制的に取得していく手続きを
進めていかなければならない、ということになります。
海外に上場していなくても海外に株主がいるということは理屈ではあり得ますが、
株式が海外に上場しているとなりますと、まず間違いなく上場している各国各国に株主がいる、ということになるわけです。
会社の株式が各国各国に広く分散している、と表現してもいいと思います。
新華ホールディングス・リミテッドが発行している全株式を取得しようと思えば、
各国各国に分散している全ての株式をその各国各国において取得していく必要がある、ということになるわけです。
会社の株式が、地理という意味でも言語という意味でも法律数という意味でも、広く分散している、と表現できるでしょう。

 


また、仮に、地理の壁と言語の壁と法律数の壁を全て越えることができたとしても、絶対に越えられない壁があります。
それは、活用できる法律の壁、です。
新華ホールディングス・リミテッドは香港を拠点とする会社です。
ですので、新華ホールディングス・リミテッドには香港の法律が適用されるわけです。
また、他のプレスリリースには、新華ホールディングス・リミテッドはケイマン諸島の法令に従っている、との記述もありましたので、
新華ホールディングス・リミテッドは実はケイマン諸島に登記されている法人なのかもしれません。
その場合は新華ホールディングス・リミテッドにはケイマン諸島の法律が適用されるわけです。
正確なところは分かりませんが、新華ホールディングス・リミテッドには香港の法律もしくはケイマン諸島の法律が適用されるわけです。
端的に言えば、会社は「登記された国の法律に従う(従わなければならない)」、という法の適用に関する基本ルールがあるわけです。
しかるに、公開買付者である株式会社テクノグローバルはどこの国に登記された会社でしょうか。
言うまでもなく、株式会社テクノグローバルは日本という国に登記された株式会社であるわけです。
したがって、株式会社テクノグローバルには日本の法律が適用されるわけです。
この文脈で言えば、株式会社テクノグローバルに適用される日本の法律とは、金融商品取引法であり会社法です。
ではここで、株式会社テクノグローバルが法律の規定に従って対象者の全株式を取得していく手続きを進めいくとします。
どのような手続きを進めていけばよいでしょうか。
会社法に、普通株式に全部取得条項を付するであったり現金交付式の株式交換を行う、といった手続きが規定されているではないか、
と思われるかもしれませんが、実はそれらの手続きでは新華ホールディングス・リミテッドの普通株式は全く取得できないのです。
なぜなら、新華ホールディングス・リミテッドには日本の会社法は適用されないからです。
では逆に、新華ホールディングス・リミテッドが登記されている香港もしくはケイマン諸島に株式取得のための特別目的会社を設立し、
香港の法律もしくはケイマン諸島の法律に従って新華ホールディングス・リミテッドの普通株式の全部を取得していく手続きを
進めていくとしたらどうでしょうか(ここでは現地の法律に全部取得のための手続きが日本同様規定されているとします)。
しかし、実はその手続きを行っても新華ホールディングス・リミテッドの普通株式は全く取得できないのです。
なぜなら、日本国内の株主には香港の法律もしくはケイマン諸島の法律は適用されないからです。
香港の会社法もしくはケイマン諸島の会社法自体が、日本国内には適用されないわけです。

 


もしくは、その国の会社法はその「会社の株式」に対して適用されるのであって、株主に適用されるわけではない、
というような論理立てもあるいは可能かもしれません。
例えば、株主が国外にいても配当金はその株主にも支払われるかと思います。
配当金も会社法に従って支払われる(配当金支払いの根拠法は会社法)わけですが、
国外にはその国の会社法は適用されないとしても、あくまで「会社の株式」に対して配当を受け取る権利が生じるのだから、
株主の所在場所に関わらず、国外の株主も含めて全株主に配当金は支払われるのではないかと思います。
この国外の株主への配当金の支払いを理解のヒントにして考えてみますと、全部取得手続きの場合も同様の論理立てでもって、
全部取得手続きは会社法に従って行われる(全部取得手続きの根拠法は会社法)わけですが、
国外にはその国の会社法は適用されないとしても、あくまで「会社の株式」に対して全部取得手続きが進められていくわけなのだから、
株主の所在場所に関わらず、国外の株主も含めて全株式を対象に全部取得手続きを進めていくことができる、
という論理立ても可能なのではないかと思います。
会社法も属地主義であるわけですが、「会社の株式」そのものがそもそも国内の会社法に従って発行されているわけなのだから、
たとえ株式が国外にあろうとも、「会社の株式」には現地の法律ではなく国内の会社法の方が優先される、
他の言い方をすれば、「会社の株式」には会社の法源である会社の根拠法が優先される、
という論理立ても可能なのではないかと思います。
この論理立てが正しいとすれば、現地(香港もしくはケイマン諸島)に株式取得のための特別目的会社を設立することで、
香港の会社法もしくはケイマン諸島の会社法に従うことにより、
日本国内に存在する新華ホールディングス・リミテッドの普通株式の全部を取得していくことが可能、ということになります。
ただ、この論理立てには一つ見落としている点があると自分で思っています。
その見落としている点とは、いわゆる株式の全部取得手続きとは株主の所有権を否定することだ、という点です。
民法上、所有権は絶対的に強いものだ、とされています。
民法の観点から言えば、所有者はその所有物を何人からも奪われることはない、というのが所有権です。
しかしながら、一種の商行為の特則でも言いましょうか、会社法で定義される株式の全部取得手続きは、
民法の所有権を会社法により修正している、という側面があるわけです。
その是非についてはここでは度外視しますが、会社法が民法を修正している、という構図になっていることだけは否定できないわけです。

 



ここで、日本国内の話をしますと、日本国内の株式の全部取得手続きは日本の会社法が日本の民法を修正している、という構図です。
日本の会社法だからこそ日本の民法を修正できる、という法理のつながりがあると言っていいでしょう。
では、香港の会社法もしくはケイマン諸島の会社法は、日本の民法を修正できるでしょうか。
法における「属地主義」という言葉を広く捉えるならば、
特別法による一般法の修正も属地主義に準じた考え方をしなければならないのではないかと思います。
つまり、日本の一般法を修正できるのは日本の特別法だけだ、という考え方に行き着く気がするわけです。
日本の一般法も日本の特別法も、国外の法律は前提とはしていない、という言い方ができるのではないでしょうか。
逆から言えば、日本の一般法はある意味日本の特別法を前提としていますし、日本の特別法は日本の一般法を前提としている、
という関係にある(法の構成がそのようになっている)、と言えるのではないかと思います。
日本の一般法は日本の特別法により修正されることを許容している、と言えばいいでしょうか。
”この場合にはこの法律ではなくこの法律が適用される。”とはそういう意味ではないでしょうか。
修正される法律も修正する法律も、どちらも日本の法律であることが前提(属地主義とはそういう意味)であると言えるでしょう。
以上の考え方や論理立てに立脚しますと、国内の一般法は国外の特別法によっては修正されない、という結論になると思います。
このたびの事例で言えば、香港の会社法もしくはケイマン諸島の会社法は、日本の民法を修正できない、という結論になると思います。
以上の論理立てが正しいとすれば、現地(香港もしくはケイマン諸島)に株式取得のための特別目的会社を設立しても、
香港の会社法もしくはケイマン諸島の会社法は日本の民法(具体的には株式の所有権)を修正できないため、
日本国内に存在する新華ホールディングス・リミテッドの普通株式の全部を取得していくことは不可能、ということになります。

 



会社法で定義される株式の全部取得手続きについて、様々な角度や切り口から分析ができるように思います。
ある切り口から見れば手続きを行えるようにも思えますし、別の切り口から見れば手続きは行えないようにも思えます。
国外の法律は日本の民法を修正できないという点を鑑みますと、やはり手続きは行えないという結論に分があると思います。
究極的な結論を言えば、株式の所有者(株式の所在場所)も根拠法が適用される範囲内でなければならない、ということになると思います。
もしくは、根拠法は、会社の事業運営場所も株式の所在場所もあるいは債権者債務者の所在場所も、
全て自身(根拠法)と同じ適用範囲内にいる、ということをそもそもの前提としているのだと思います。
会社の(最も広義の)商行為の地理的範囲は根拠法の適用範囲内のみだ、という前提が根拠法(会社法)にはあるのだと思います。
たとえその趣旨の明文の規定はなくても、法理的に暗黙の前提があると理解するべきなのだと思います。
根拠法の適用範囲を超えて会社が商行為を行う(会社の事業運営場所・株式の所在場所・債権者債務者の所在場所が範囲外に存在する)から、
今日書きましたような法理上の矛盾や法手続きを進めていく上での障害が生じてしまうのだと思います。

 


Is a stock incorporated in a domestic registry able to be listed in the foreign stock exchange?

国内の法務局に登記されている株式は、外国の証券取引所に上場できるのですか?

 

You can't put the Companies Act to practical use, when it comes to a foreign company.

会社法じゃダメなんだよ、国外の場合はね。

 

 


新華ホールディングス・リミテッドはケイマン諸島に登記されているということで、
いわゆるファンドなどではケイマン諸島に登記されているということが多いのではないかと思いますが、
以前日本経済新聞に次のような広告が載っていました↓。

 

2015年2月25日(水)日本経済新聞 広告
Baring Private Equity Asia Group Limited
(記事)



24 February 2015
Baring Private Equity Asia
Baring Private Equity Asia Raises Record US$3.988 Billion Fund VI
ttp://www.bpeasia.com/wp-content/uploads/2015/02/Fund%20VI%20press%20release_English.pdf

 

広告には、冒頭に、

>This announcement appears as a matter of record only

と注意書きが書かれています。
「このお知らせは実績をお伝えするためだけのものです。」
といった訳になるでしょうか。
投資の勧誘ではない、という断り書きなのだと思います。
多額の資金を集めて運用してきた実績があるということで、
ファンドへの投資を検討なさる際には是非弊社へ、といったニュアンスなのだと思います。
また、プレスリリースの発信地が”Hong Kong”となっていますので、
Baring Private Equity Asia も香港が本社だという位置付けなのだと思います。


 



1つ面白い公告とプレスリリースを見かけました↓。

 

2015年2月27日(木)日本経済新聞 公告
資本金の額の減少公告
株式会社UKCエレクトロニクス
吸収分割公告
株式会社UKCホールディングス
株式会社UKCエレクトロニクス
(記事)


2015年2月6日
株式会社UKCホールディングス
連結子会社との吸収分割(簡易吸収分割)契約締結に関するお知らせ
ttp://www.ukcgroup.com/news/1404-1503/150206_kyushubunkatsu.pdf

 


持株会社である株式会社UKCホールディングスは、事業運営を手がける完全子会社である株式会社UKCエレクトロニクスから、
半導体及び電子部品事業を吸収分割の方法により承継することにした、という内容です。
半導体及び電子部品事業は今後、株式会社UKCエレクトロニクスではなく、
持株会社である株式会社UKCホールディングスにおいて運営される方針であるようです。

 


吸収分割に関する仕訳は以下のようになるでしょうか。


吸収分割日である2016年4月1日(予定)の吸収分割に関する株式会社UKCホールディングスの仕訳

(半導体及び電子部品事業諸流動資産) 55,888百万円 / (半導体及び電子部品事業諸流動負債) 22,914百万円
(半導体及び電子部品事業諸固定資産) 1,602百万円    (半導体及び電子部品事業諸固定負債) 4,468百万円
                                              (現金) 30,109百万円


プレスリリースには、「分割に係る割当ての内容」については、

>当社は、分割会社の全株式を保有しており、本件分割に際して株式の割り当てその他対価の交付は行いません。

と書かれていますが、これは間違いです。
完全親子会社間であっても、吸収分割の対価は発生します。
完全親会社が完全子会社に自社株式(完全親会社株式)を割り当て交付しても資本関係が崩れるだけですので、
この事例の場合の吸収分割の対価としては現金が一番自然であろうと思います。
また、親子会社間の会社分割において会社に利益や損失を発生させるのはグループ経営の観点から言っても意味はありませんから、
承継させる資産負債は帳簿価額に基づいた上で、損益が発生しないよう、貸借の差額に見合った金額を対価として支払う形になると思います。
ところで、会社分割を実施するのに合わせて、
株式会社UKCエレクトロニクスは商号を「株式会社UKCテクノソリューション」に変更する、と書かれています。
しかし、株式会社UKCホールディングスの方は、半導体及び電子部品事業を承継しても商号変更は行わない予定であるようです。
しかし、会社分割を実施するのに合わせて、株式会社UKCホールディングスも商号変更をするべきだと思います。
新社名は「株式会社UKCコンダクティング」(UKC Conducting Corporation)が望ましいでしょう。
なぜなら、株式会社UKCホールディングスはその後実際に「半導体及び電子部品事業」を運営することになるわけであり、
半導体は英語で「semiconductor」だからです。


The company will shift its principal operation from the hold of a stock to the conduct of a business.

その会社は本業を株式の保有から事業の運営へと変更する計画だ。


 


資本金及び準備金の額の減少に関しては、以下のような公告とプレスリリースがありました。
参考資料として、2015年3月期中間決算も紹介します。

 

2015年2月25日(水)日本経済新聞 公告
資本金及び準備金の額の減少公告
森ビル株式会社
(記事)


2015年2月24日
森ビル株式会社
第三種優先株式の一部取得・消却及び第三者割当増資による新株式発行に関するお知らせ
ttp://www.mori.co.jp/company/press/release/2015/02/20150224140000002922.html

 


2014年11月18日
森ビル株式会社
森ビル株式会社 2015年3月期中間決算のお知らせ
ttp://www.mori.co.jp/company/press/release/2014/11/20141118150000002882.html

中間決算報告
ttp://www.mori.co.jp/img/article/141118_1.pdf

 


公告には、

>当社は、資本金の額を五十億一二万六千円、資本準備金の額を五十億一二万六千円減少することにいたしました。
>ただし、同時に株式の発行により増額いたしますので、効力発生日後の資本金の額及び資本準備金の額は
>いずれも同日前を下回ることはありません。
>そのため、株主総会の決議を経ずに決定しております。

と書かれています。
会社法上の論点はいくつかあろうか(減資の是非や自己株式の取得の是非等)と思いますが、
ここでは「株式と資本金とのつながり」に関してだけ書きます。
プレスリリースによりますと、第三種優先株式の一部取得・消却に関しては、

>取得、消却価額の総額  20,260,221,400円

と書かれてあり、第三者割当増資による新株式発行に関しては、

>発行価額の総額  10,000,252,000円

と書かれています。

 


新株式発行で得た資金は、第三種優先株式の取得に充当する予定とのことですが、
第三種優先株式の取得のための原資が不足しているのではないかと思ってしまいます。
しかし、これは、獲得済み(既に計上済み)の利益剰余金を第三種優先株式の取得のための原資とする予定となっているようです。
つまり、このたびの第三種優先株式の取得のための原資は、
@資本金及び資本準備金の減少による資本の取り崩しと、A獲得済み(既に計上済み)の利益剰余金、の2つを予定しているようです。
本来は単体ベースで見ていかねばなりませんが、森ビル株式会社の2015年3月期中間決算の連結貸借対照表を見ますと、
実は既に十分なだけの利益剰余金が計上されています。
森ビル株式会社は資本金及び資本準備金の減少は全く行わなくても、実は十分にこのたびの第三種優先株式の取得は可能なのです。
減資及び増資後の森ビル株式会社の純資産の部(減資及び増資の効力発生日である2015年3月27日(金)現在)は以下のようになります。


「減資及び増資後の純資産」


The balance sheet after the decrease and increse of capital.
(減資かつ増資後の貸借対照表)

 


私がここで思うのは、やはり「株式と資本金とのつながり」です。
このたびの減資及び増資の前後で、森ビル株式会社の株式や資本はどのように変動したのかと言えば、
株式面は、第三種優先株式は200株減少し、そして、普通株式は4,388株増加した、となっているわけです。
一方、資本面は、 資本金は五十億一二万六千円減少し、資本準備金も五十億一二万六千円減少し、利益剰余金は20,260,221,400円減少し、
そして、資本金は五十億一二万六千円増加し、資本準備金も五十億一二万六千円増加した、
となっているわけです。
一言で言えば、「株式と資本金とのつながり」は全くないわけです。
株式と資本金が増加する分(増資の場面)にはまだ両者にはつながりがあると言えるわけですが、
やはり、株式と資本金を減少させるということに関しては、会計上そして法理上説明がつかない点が非常に多いように思います。
昨日2015年3月5日(木) に、債券を例に出して、銘柄Aの債券と銘柄Bの債券は独立している(銘柄Aと銘柄Bは別個に償還できる)が、
銘柄Aの債券を小口に分割した各債券は独立していない(銘柄Aの一部分だけを償還することはできない)、と書きました。

2015年3月5日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201503/20150305.html

資本の場合はどうでしょうか。
資本金には”銘柄”などありません。
会社の資本金には1種類しかないのなら、株式の種類も1種類しかないのではないでしょうか。
何年か前、優先株式を発行する際はどうせ償還を前提としているのだから、資本金を「資本金(普通株式)」と「資本金(優先株式)」
というふうに2つに分けたらどうか(これには法改正等が必要だと思いますが)、と書いたことがあるかと思いますが、考え方は全く同じです。
「株式と資本金とのつながり」を鑑みれば、資本金を混ぜたくない、と思ったのです。
債券が銘柄別に銘柄A、銘柄B、と分かれるように、資本金も発行する株式毎に「資本金(普通株式)」と「資本金(優先株式)」
といった具合に言わば銘柄を分けるべきだと思ったのです。
現に株式の方は、普通株式、優先株式というふうに、”銘柄”が分かれているわけですから。
債券も資本も”銘柄”を分ける方が、「株式と資本金の整合性が取れる」と思ったのです(もちろん今でも思っています)。
債券の場合も資本の場合も、証券とは何か、証券を小口に分割するとは何か、という論理から演繹的に導き出した(当然同じ)結論です。

 



優先株式を償還するに当たっては、「資本金(優先株式)」のみをその原資とするべきであり、
「資本金(普通株式)」を原資とするのは会計理論上そして法理上間違いである、という考え方もあると思います。
また、これは現行の定めや考え方とはある意味正反対ですが、利益剰余金を優先株式の償還の原資とするのは間違いだ、
という考え方もあると思います。
これは、株式と利益のつながりから導き出した自分なりの結論です。
普通株式のみ場合は、会社が計上した当期純利益の全額が当然に普通株式に帰属しています。
しかし、優先株式がありますと、普通株式に帰属している利益額と優先株式に帰属している利益額とが明確ではなくなると感じるのです。
利益剰余金は優先株式への配当金にも使うし普通株式への配当金にも使うし優先株式の償還にも使う、では、
利益がどのように株式に帰属しているのか、全く不明であるわけです。
先ほど、資本金も発行する株式毎に「資本金(普通株式)」と「資本金(優先株式)」といった具合に言わば銘柄を分けるべきだ
と書きましたが、資本金であればそのような手段で区別できますが、帰属する利益額だけはどうやっても区別できないわけです。
会社には利益は1種類しかないのですから。
それならいっそのこと、優先株式を発行している状況下では普通株式への配当は一切支払えない、
優先株式を発行している状況下では利益剰余金は全額が優先株式に帰属している、
と解釈する方が、株式と利益の関係がすっきりするように思うのです。
「株式と資本金とのつながり」そして「株式と利益とのつながり」をつぶさに鑑みれば、
やはり「会社の資本は1つだけだ」という結論に行き着くのだと思います。
すなわち、会社の資本金は1種類のみであり、会社が発行する株式の種類も1種類のみだ、という結論に行き着くのだと思います。
そうでなければ、資本金、利益、株式の関係のどこかに必ず説明がつかない部分が出てきてしまうのだと思います。
会社の資本金が1種類であることと、会社が計上する利益が1種類であることと、会社が発行する株式が1種類であることとは、
会計理論や法理の背景では概念的につながっていることなのだと思います。
それなのに、会社が発行する株式を2種類にするなどと言い出すから、どこかに論理のひずみが生じるのだと思います。
概念的に言えば、資本金とは株式であり株式とは資本金です。
そして、資本金を活用して稼いだ利益の帰属先が株式なのです。
結論を端的に書けば、株式会社の原理上、資本金は1つであり利益は1つであり株式は1つなのです。