2015年3月1日(日)


まず昨日の訂正から行います。
昨日の株式会社丹青社の土地の譲渡に関するコメントで、

>以上の話をまとめますと、土地の譲渡価額は、元々の取得価額よりも大きく減損処理後の簿価よりも大きい、ということになると思います。

と書きましたが、これは間違いです。
正しくは、

以上の話をまとめますと、土地の譲渡価額は、元々の取得価額よりも小さく減損処理後の簿価よりも大きい、ということになると思います。

となります。
「土地の譲渡価額は、元々の取得価額よりも小さい」が正しい考え方です。
お詫びして訂正いたします。

 

 



2015年2月27日(木)日本経済新聞 公告
合併公告
横浜丸魚株式会社
(記事)



 

2014年12月24日
横浜丸魚株式会社
連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ
ttp://www.yokohama-maruuo.co.jp/investor/img/info/ir261224.pdf

 



【コメント】
横浜丸魚株式会社とその100%子会社である川崎丸魚株式会社とが合併するとのことです。
完全親子会社間の合併に関しては、2015年2月26日(木)に、
株式会社メディセオとエーアイエムジャパン株式会社の合併を題材にしてコメントしました。

2015年2月26日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201502/20150226.html

この時のコメントで、「抱合せ株式消却損」について書きました。
横浜丸魚株式会社からのプレスリリースの「5.今後の見通し」にも、
本合併により単体決算において特別利益(抱合せ株式消滅差益)の発生が見込まれます、と書かれています(3/3ページ)。
今日はもう少しだけ「抱合せ株式消却損」について考えてみたいと思います。
まず、2015年2月26日(木)に書きました、”現行の会計基準に従った会計処理方法”と
”私が考える正しい会計処理方法”を引用したいと思います。

 

>合併の効力発生日である2015年4月1日の株式会社メディセオの合併受入仕訳(現行の会計基準に従った会計処理方法)
>
>(エーアイエムジャパン株式会社諸流動資産) 62,850千円 / (エーアイエムジャパン株式会社諸流動負債) 96,418千円 
>(エーアイエムジャパン株式会社諸固定資産) 1,900千円    (エーアイエムジャパン株式会社諸固定負債) 3,024千円 
>(抱合せ株式消却損) 104,692千円                     (エーアイエムジャパン株式) 70,000千円

 

>合併の効力発生日である2015年4月1日の株式会社メディセオの合併受入仕訳(私が考える正しい会計処理方法)
>
>(エーアイエムジャパン株式会社諸流動資産) 62,850千円 / (エーアイエムジャパン株式会社諸流動負債) 96,418千円 
>(エーアイエムジャパン株式会社諸固定資産) 1,900千円    (エーアイエムジャパン株式会社諸固定負債) 3,024千円 
>(営業権) 34,692千円
>(自己株式) 70,000千円                              (エーアイエムジャパン株式) 70,000千円

 



2015年2月26日(木)のコメントでは、上記のように”私が考える正しい会計処理方法”を書いたわけですが、
存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式の取り扱い方法について改めて考えてみますと、
”現行の会計基準に従った会計処理方法”のように、消滅会社株式は合併に伴い消却してしまう方が正しいと思いました。
なぜなら、存続会社は自身が合併前から所有していた消滅会社株式に対しては存続会社株式(自社株式)を割り当て交付はしないからです。
そうしますと、存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式は合併に伴い文字通りそのまま消滅してしまうわけですから、
”株式消却損失”に類する損失が存続会社において計上されるべきだと思いました。
存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式は合併に伴い「自己株式」に振り替えられるのはおかしい、ということになります。
2015年2月26日(木)のコメントで書きました”私が考える正しい会計処理方法”は、
会社法が施行される前の旧商法下における考え方になろうかと思います。
その意味では、会社法や企業結合会計基準の会計処理方法の方が理論上は幾分かは正しいように思えます。
ただ、この点についてもう少し考えを深めてみますと、
のれんも含めて”抱合せ株式消却損”という捉え方をするのは間違いだと思います。
のれんはのれんであり、”株式消却損失”は”株式消却損失”というふうに、勘定科目自体を分ける必要があると思います。
のれんが発生したのにはのれん固有の原因があり、”株式消却損失”が発生したのには”株式消却損失”固有の原因があります。
費用の発生原因が異なるわけですから、費用の名称(勘定科目)も分けて考えるべきであろうと思います。
のれんが発生した原因は、合併交付対価と消滅会社の純資産の価額との間に差額があったことそのことであるわけです。
のれんが発生した原因は他にないのです。
一方、”株式消却損失”が発生した原因は、
存続会社は自身が合併前から所有していた消滅会社株式に対しては存続会社株式(自社株式)を割り当て交付はしなかったことそのこと
であるわけです(自社株式を自社に割当交付をしなかったと考えること自体は正しいわけですが)。
”株式消却損失”が発生した原因は他にないのです。
つまり、両費用の発生原因は完全に異なるわけです。
費用の発生原因は完全に異なるのに、”抱合せ株式消却損”といった具合に一括りにするのは間違いであるわけです。
どの取引・会計処理においても同じですが、勘定科目はその発生原因毎に分けて各々名称を付し、
財務諸表に計上・表示しなければなりません。
”抱合せ株式消却損”というだけでは、異なる発生原因に基づいた費用が合算された形で計上されてしまっていることになるわけです。

 


以上の論点を踏まえ、会計理論上の正しい合併受入仕訳を書くと以下のようになります。

 

改良版:合併の効力発生日である2015年4月1日の株式会社メディセオの合併受入仕訳(私が考える正しい会計処理方法)

(エーアイエムジャパン株式会社諸流動資産) 62,850千円 / (エーアイエムジャパン株式会社諸流動負債) 96,418千円 
(エーアイエムジャパン株式会社諸固定資産) 1,900千円    (エーアイエムジャパン株式会社諸固定負債) 3,024千円 
(合併差損) 34,692千円
(消滅会社株式消却損) 70,000千円                     (エーアイエムジャパン株式) 70,000千円

 

2015年2月26日(木)に書きました仕訳とは異なる点が2点ありますが、その点ついて書きます。
まず、「合併差損」というのは、合併に伴い発生したいわゆる営業権を発生時に全額費用処理した、という会計処理を表します。
いわゆる営業権は、合併交付対価と消滅会社の純資産の価額との間に差額があった場合に生じるわけですが、
その差額は超過収益力を表すと考えるのではなく、ただ単に高く買ってしまった結果に過ぎない、と考えるわけです。
営業権というのは過大な合併対価を支払ってしまった結果に過ぎません。
また、営業権というのは、有体物としても無体物としてもこの世に存在しない(会社が何らかの形で所有しているものではない)わけです。
したがって、営業権を貸借対照表に計上するのは間違いであるわけです。
営業権は発生時に全額費用処理するという考え方が会計理論上は正しいわけです。
そして、「消滅会社株式消却損」というのは、
存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式は合併に伴い文字通りそのまま消滅してしまったということの結果を表します。
存続会社は自身が合併前から所有していた消滅会社株式に対しては存続会社株式(自社株式)を割り当て交付はしなかったわけです。
そうしますと、存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式は存続会社株式へとは変わらなかったと考えるべきでしょう。
つまり、存続会社が合併前から所有していた消滅会社株式は合併後も自己株式とはならず、
文字通りそのまま消滅してしまった、ということになりますから、結果「消滅会社株式消却損」が計上される、ということになります。
「合併差損」の発生原因と「消滅会社株式消却損」の発生原因は完全に異なります。
したがって、発生した費用を”抱合せ株式消却損”といった具合に一括りにするのではなく、
「合併差損」そして「消滅会社株式消却損」というふうに、勘定科目名を明確に分けて計上・表示しなければならないのです。

 



また、「合併差損」と「消滅会社株式消却損」との間には本質的な違いがあります。
それは、法人税法上(これは現行の定めという意味ではなく税務理論上という意味ですが)、
「合併差損」は損金算入されない費用であるのに対し、「消滅会社株式消却損」は損金算入される費用だ、という違いです。
「合併差損」が法人税法上損金算入されない費用である理由は、
合併交付対価と消滅会社の純資産の価額との間の差額は、相手方への寄附に過ぎないからです。
承継した資産の価額と負債の価額を考えれば、支払うべき合併の対価は100円であるべきだったのが、
合併の対価は120円も支払ってしまった、ということを「合併差損」は表しているわけです。
差額の20円は寄附に過ぎない、だから、「合併差損」は損金算入できない、と税務理論上は考えるべきでしょう。
会社法が施行される前の旧商法において(2006年5月以前)は、営業権は旧商法にも定義されていたと思いますし、
また、旧商法の規定に合わせたということだと思いますが、当時(同時期)の法人税法にも同じ趣旨の営業権が定義されていたと思います。
そのころの法人税法では、営業権の償却額は損金算入が認められていたのではないかと思います。
仮に、法人税法では営業権の償却額は損金算入を認めないということですと、
法人税法において特段に営業権に関して定義する必要はないのだろうと思うのですが、
企業会計上の会計処理は旧商法において定義し、税務会計上の会計処理は法人税法において旧商法と同じ趣旨の定義をすることで、
「営業権の償却」に関する整合性を旧商法と法人税法で図っていたのだろうと思います。

 


明治三十二年当時であれば、商法の方が所得税法の規定に合わせた、ということが多かったのではないだろうかと思うのですが、
現代では逆に、法人税法の方が会社法(もしくは旧商法)の規定に合わせている、ということが多い(多かった)のではないかと思います。
現代では、税務理論の観点から言えばとても考えられないような行為・取引を会社が行うようになりました。
少なくとも、会社法において複雑な組織再編行為が定義されています。
法人税法の観点から言えば、そのような複雑な組織再編行為は到底想定できないわけです。
そのような複雑な組織再編行為のことは税の概念・課税体系・租税法の体系にない、と言いますか、
そのような複雑な組織再編行為に関する課税関係を定義し明確にしようと思えば、
「そもそもその行為とは何なのか?というところから話を始めないといけないわけです。
課税も何も、その行為が何なのか、法人税法には分からないわけです。
法人税法がその行為を理解するためには、商法から読まないといけないわけです。
他の言い方をすれば、会社の種々の行為は、そもそも商法によって初めて定義・明らかにされるものであって、
法人税法によって発案・定義されるものではない、ということです。
したがって、法の整備の順番としては、法人税法の方が商法の規定に合わせる、という流れにならざるを得ないわけです。
商法で先に定義しないと課税関係を明らかにしようがない、ということになるわけです。
行為を商法で定義しないと、そのような行為自体が概念的にない、という状態であるわけですから。
法人税法の定義に合わせて商法で組織再編行為が定義される、などということは絶対にないわけです。

 



例えば、会社法上定義される合併という組織再編行為は債権の譲渡も含むわけですが、
明治三十一年民法では債権の譲渡自体が認められていなかったわけです。
そのような状況下において、債権の譲渡に関する課税関係はどうなりますか、などと言われても、
所得税法にも法人税法にも定義があるわけがないわけです。
民法で債権の譲渡が認められて初めて、所得税法そして法人税法で債権の譲渡に関する課税関係が明らかにされる、
という順序であるわけです。
また、会社法上定義される合併という組織再編行為は債務の譲渡も含むわけですが、
現行の民法では債務の譲渡は実は認められていないわけです。
会社が行う債務の譲渡は会社法により結果的に認められているというだけだ、という状態であるわけです。
そのような状況下において、債務の譲渡に関する課税関係について、法人税法に定義があるわけがないわけです。
会社法で債務の譲渡が認められて初めて、法人税法で債務の譲渡に関する課税関係が明らかにされる、という順序であるわけです。
おそらく、現行の所得税法には、自然人が行う債務の譲渡に関する定めは一切ないでしょう。
なぜなら、現行の民法では(自然人が行う)債務の譲渡は認められていないからです。
そのような行為自体がないのだから課税関係を明らかにしようがないわけです。
思考実験ということで、「仮に民法が改正されて債務の譲渡が認められることになったとしたら、その課税関係はどうあるべきだろうか?」
というふうに、頭の中で論理を組み立てることはできますし、また、
法というのは全て、そうやって立案・制定されるものであろうと思います。
ただ少なくとも、何らかの形で行為の方を先に定義しないと、思考実験も何もないわけです。
その意味において、会社が行う組織再編行為は、会社法が先、法人税法が後、という順番になるわけです。

 


話が少しわき道にそれたのですが、話を元に戻します。
営業権が発生した原因(「合併差損」を計上する原因)は支払った合併の対価が本来の金額よりも多かったことにある、
という点に着目しますと、やはり合併交付対価と消滅会社の純資産の価額との間の差額は相手方への寄附に過ぎない、
という解釈に行き着くわけです。
そうであるならば、「合併差損」は法人税法上損金算入は認められない費用である、という結論に行き着くわけです。
次に、「消滅会社株式消却損」についてですが、株式の部分だけに着目すれば、
以前から株式を所有していた会社が消滅した、というだけであるわけです。
確かに、その会社が消滅したのは自身が実施した合併が原因ではありますが、
合併の対価を受け取ったわけでもありませんから、株式の部分だけに着目すれば、ただ単にその会社が消滅したというだけであるわけです。
以前から株式を所有していた会社が消滅した、ということであれば、株式自体が消滅したわけですから、
その株式の消却損は法人税法上損金算入を認めてよいであろう、という解釈になろうかと思います。
元祖会計理論上は、会社が倒産して株式を全額消却することになっても、その株式消却額は税法上損金算入はされません。
その理由は、会社を通じた(会社を隠れ蓑にした・迂回した)寄附が行われるのを避けるためだと思います。
ただ、「現代会計における会計理論上」は、会社が倒産した場合の株式消却額は税法上損金算入はされます。
その是非についてともかく、合併という現代ならではの会社の行為に関する話をしていますから、
ここでは「現代会計における会計理論上」の解釈をしてみました。
少なくとも、消却することになる株式の価額はただ単に合併前から所有していた株式の価額で決まるというだけであり、
また、発生する合併交付対価と消滅会社の純資産の価額との間の差額は合併対価の支払いという場面でのみ決まるというだけですから、
この両者は、取引・行為としても金額としても、明確に区分するべきであるわけです。
合併前から所有していた株式の価額と合併の対価の価額とは全く関係ないわけです。
したがって、この両者を一括りにすることは、取引・行為としても金額としても間違いであるわけです。
以上の話をまとめますと、
「合併差損」は損金算入されない費用であるのに対し、「消滅会社株式消却損」は損金算入される費用である、
したがって、企業会計上も税務会計上も、この2つの費用は明確に区分して計上・表示しなければならない、
ということになります。


 

The Companies Act first, and then the Corporation Tax Act.

会社法が先、法人税法は後なのです。