2015年2月14日(土)


2015年2月11日(水)日本経済新聞
タイヨー 持ち株会社に 機動的経営へ 3事業会社に再編
(記事)



株式会社タイヨー 会社概要
ttp://www.taiyonet.com/company/index.html

 



【コメント】
株式会社タイヨーは、2013年の夏にMBOを実施し、
2013年11月27日付けで東京証券取引所市場第二部と福岡証券取引所を上場廃止になっています。
株式会社タイヨーは現在、非上場企業として経営を行っているわけです。
株式会社タイヨーは2013年の夏にMBOを実施したわけです。
株式会社タイヨーの全株式は現在、創業者がMBO実施の際に器として活用した特別目的会社(創業者の資産管理会社)が保有しています。
つまり、株式会社タイヨーはMBOが完了した時点で既に持株会社制となっていたとも言えるわけです。
特別目的会社から見ると、現在の体制では、株式会社タイヨーは直接保有の子会社、
他の事業会社は株式会社タイヨーが株式を保有する間接保有の子会社、という位置付けであるわけです。
このたびのグループ企業の再編では、株式会社タイヨーが保有している他の事業会社株式を特別目的会社へと譲渡し、
特別目的会社は「タイヨーホールディングス」へと社名変更を行うようです
(記事によると社名変更だけは昨年12月に実施済みのようです)。
持株会社が事業子会社の株式を直接保有することを持株会社制と呼ぶのでしょうから、
株式会社タイヨーはこれから持株会社制へと移行するという言い方でも間違いではないと思います。
しかし、現時点で株式会社タイヨーの全株式は既に特別目的会社が保有しているわけですから、
株式会社タイヨーが持株会社制へと移行するインパクトは経営上はあまり大きくないように思います。
持株会社化により、特別目的会社(持株会社)が株式会社タイヨー以外の事業子会社の株式も保有するようになりますから、
特別目的会社(持株会社)から見ると、連結の範囲に含まれる連結子会社が増加することにはなります。
その分、特別目的会社(持株会社)の連結財務諸表は変化(増加・拡大)することにはなります。
ただ、株式会社タイヨーは持株会社制へ移行しても株式の再上場は行わないでしょうから、
連結財務諸表を作成すること自体がないと思います。
株式会社タイヨーは、持株会社制へと移行するくらいなら、
むしろ株式会社タイヨーは他の全ての事業会社を吸収合併してしまった方が経営上は望ましいのではないだろうか、という気がします。

 

 



2015年1月14日(水)日本経済新聞
■佳兆業集団(広東省深川市の不動産開発会社) 社債の利払いできず
(記事)





2015年2月10日(火)日本経済新聞
ドル建て社債の債務不履行回避 佳兆業集団、利払い再開
(記事)



中国不動産の佳兆業集団、利払いせず 支払い猶予は30日間
 
[香港 9日 ロイター] - 経営難に陥っている中国の不動産デベロッパー、佳兆業集団 は
8日が期限となっていた2600万ドルの債券の利払いを行わなかった。
市場が低迷する中、中国の不動産会社への信用不安が一段と高まっている。
利払いを見送ったのは2020年償還の社債 で、支払い期限は香港時間の8日午前0時(日本時間午前1時)だった。
トレーダーによると、佳兆業集団には事態を収拾するために30日間の猶予が与えられている。
最終的に支払いができない場合は、中国の不動産デベロッパーによるドル建て債券の初めてのデフォルト(債務不履行)となる。
香港を拠点とするあるトレーダーは「(利払いが)遅れたことについては、既に債券市場で織り込まれているため重要ではない。
猶予期間内に支払いを行うかが焦点だ」と語った。
9日の金融市場では佳兆業集団の2020年償還債は額面1ドルに対し0.30ドル近辺で取引された。
佳兆業集団はコメントを控えた。同社は先週、HSBCに4億香港ドル(5100万ドル)の融資を
返済できなかったことを明らかにした上で、さらなるデフォルトの可能性があるとの見通しを示していた。
(ロイター 2015年 01月 9日 15:18 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPL3N0UO2CC20150109


 



【コメント】
社債だろうが借入金だろうが、利息を支払うことも債務者が負っている確定債務の1つなのですから、
利息を支払えなかったとなりますと、それは即債務不履行を意味します。
2015年2月10日(火)の日本経済新聞の記事には、利払いを再開したため債務不履行をかろうじて回避した、と書かれていますが、
当初の支払日に利息を支払えなかった時点で債務不履行だと言わねばなりません。
この点については、ロイターの記事には、佳兆業集団が当初の支払日に利息を支払えなかったことを受けて、

>佳兆業集団には事態を収拾するために30日間の猶予が与えられている。

と書かれています。
これは、佳兆業集団は今後30日間の猶予期間内に利息の支払いを行えば債務不履行とはならない、というような意味なのだと思います。
しかし、この考え方は根本的におかしいわけです。
そもそも、佳兆業集団に対し30日間の猶予を与えるのは一体誰だというのでしょうか。
債権者でしょうか、それとも、証券取引所でしょうか、それとも、金融を監督する当局でしょうか。
社債の発行や引き受けは会社と引き受け手との間の取引です。
社債発行手続き等に問題があったのならともかく、私人間の関係に過ぎない発行後の債権債務の整理(利息や元本の決済)に関してまで
証券取引所や金融を監督する当局が口をさしはさむのはおかしいでしょう。
そもそも、証券取引所や金融を監督する当局が利息の支払いに関して債務者に対して猶予を与えるというのは全くおかしな話でしょう。
仮に、債務者に対して利息の支払いの猶予を与える関係者がいるとすれば、それは債権者(社債保有者)しかあり得ないわけです。
しかしたとえそう考えたとしても、そもそも利息の支払いの猶予とは何でしょうか。
予め定められた一定の日に利息を支払うことは、社債発行時点において確定した債権債務関係であるわけです。
支払えなければ支払わなくてよい確定債務などありません。
また、債権者が極めて寛大であり、債権者が「あと30日だけ待ってやる」、と言って条件変更に応じてくれる場合もあるかもしれません。
しかしたとえそう想定したたとしても、1つだけ問題があります。
それは、「社債の債権者は1人ではない」ということです。
ある1人の人物からお金を借りた場合であれば、その1人の人物が条件変更に応じてくれさえすれば、ある意味問題はありません。
しかし、社債という証券は、「1つの債務を小口に分割したもの」であるわけです。
つまり、ある1つの社債の債権者の法的地位は完全に同じであるわけです。
何が言いたいかと言うと、社債の利息の支払日を延期したいなら、その社債権者全員の同意が必要だ、ということです。

 



ある社債のうち、一部の社債権者には利息を支払うが一部の社債権者には利息を支払わないということは、法理的に認められないのです。
たとえ、一部の社債権者は利息の支払いの延期に応じてくれたとしても、
その寛大な社債権者だけには利息を支払わない、ということは法理上は認められないのです。
なぜなら、社債権者は全く同一の取り扱いを受けねばならないからです。
その理由をさらに言えば、社債はある1つの社債を小口に分割したものだからです。
この点については、2015年1月8日(木) に協調融資と社債(債券)とを対比させてコメントを書きました。

2015年1月8日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201501/20150108.html

一部の寛大な社債権者にのみ利息を支払わないことは、債権債務関係的に間違っている(法理に反している)のです。
他の言い方をすると、一部の社債権者との間で社債についての契約変更を行うことはできない、となります。
仮に債務者が社債について契約内容の変更を行おうとすれば、債務者は一度に全社債権者とそれも同一内容の変更を行わねばなりません。
社債とは、元本金額だけを小口に分割しただけのことであり、その小口化した社債の1証券1証券は全く独立していないのです。
Aさんから借りた借入金とBさんから借りた借入金とは独立しています。
ですから、Aさんとの間の金銭消費貸借契約は、Bさん(との間の金銭消費貸借契約)には全く関係がないわけです。
しかし、同一の社債を小口化して発行した場合、社債権者Cさんと社債権者Dさんとは法的地位は全く同じです。
この場合の「法的地位は全く同じ」とは、社債権者Cさんと社債権者Dさんは社債に関して全く同じ取り扱いを受けねばならない、
という意味です。
したがって、社債権者Cさんとだけ社債に関する契約を変更することはできないのです。
以上のこと踏まえますと、佳兆業集団で社債の利息の支払いを延期することは非常に難しかったのではないかと思います。

 


Being total two lenders of two pieces of borrowing is somewhat similar to being total two bondholders of one corporate bond,
but they are different from each other in nature, actually.

2つの借入金に貸付人が計2人いることは1つの社債に社債権者が計2人いることにやや似ていますが、
しかし実際には両者はお互いに本質的に異なっているのです。

 


As soon as a person goes into default, his assets don't belong to him any longer.

債務不履行を起こすと同時に、債務者の資産はもはや債務者に帰属しなくなるのです。

 


Are all creditors really equal?

債権者は本当にみな平等なのだろうか?