2014年12月13日(土)
2014年12月11日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201412/20141211.html
この時のように、「定率法」による減価償却手続きにおける減価償却期間が7年間の場合の償却率を計算してみたいと思うのですが、
この時は、固定資産に残存価額という考え方があることを所与のものとして計算したわけです。
この時は、固定資産の残存価額を取得価額の1割と設定して償却率を計算したわけです。
しかし、会計理論上は、実は残存価額という考え方自体がありません。
簿記の教科書などでは、減価償却手続きが終了しても資産としての価値はまだ残っているから、固定資産には残存価額というものがある、
といった具合に説明されているかと思います。
確かに、法定の減価償却期間終了後も、経営上・経済実態としてその有体物(固定資産)はまだまだ有益なものとして稼動させることができる
ということはあります。
法定の減価償却期間が終了したらその有体物(固定資産)は廃棄しなければならない、などということは一切ありません。
法定の減価償却期間終了後も、以前と変わらず稼動し続けている固定資産はいくらでもあると思います。
しかし、税法上の減価償却手続きというのは、経営上その固定資産は使用可能かどうかということよりも、
純粋に費用(損金)の期間配分のためだけに行うことであるわけです。
したがって、率直に言えば、固定資産の残存価額というものには実は会計理論上は説明は全く付けられない、と言っていいわけです。
残存価額という言葉を使うことすらおかしいわけですが、敢えて言うなら、会計理論上の固定資産の残存価額は「0円」です。
参考までに言いますと、現金主義会計で考えてみますと、
取得時に全額を費用処理するわけですから、固定資産の残存価額は当然「0円」になります。
しかし、現金主義会計では固定資産の残存価額は「0円」だから固定資産の残存価額は「0円」なのだ、という考え方は間違いです。
なぜなら、残存価額という考え方は発生主義会計においてこそ、生まれ得る考え方だからです。
発生主義会計においては、「その固定資産の価額は現在いくらである。」という考え方をするわけです。
通常は、減価償却手続き後の固定資産の価額を現在(当期末)時点の固定資産の価額、と呼ぶわけです。
その「固定資産の価額」の延長線上に、残存価額という考え方があるのだと思います。
しかるに、現金主義会計では、そもそも固定資産に価額などないわけです。
現金主義会計では、固定資産の価額は敢えて言うなら「0円」であり、
固定資産には当期末時点の価額もなければ、法律上はともかく会計上は取得価額すらないわけです。
現金主義会計では、会計上は取得価額という言葉すらないのです。
したがって、固定資産の残存価額について、現金主義会計の観点から説明を行うのは間違いであるわけです。
いずれにせよ、会計理論上の固定資産の残存価額は「0円」であるわけです。
>固定資産の取得原価をa円、固定資産の残存価額をここでは取得価額の1割、求める償却率をxとしますと、次の式が成り立ちます。
>
>a×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)=0.1a
ただし、残存価額が「0円」や「1円」の場合は、右辺を「0」や「1」として計算する形になるわけですが、
個別具体的に固定資産の取得価額を与えられれば(つまりaに実際の固定資産の取得価額を代入すれば)固有の償却率は求まるわけですが、
どの取得価額であろうと適用できる償却率というのは厳密には計算できません。
税務上(実務上)は、固定資産の残存価額を「1円」とする場合などは、各固定資産毎に固有の償却率を算出するしかないのだと思います。
固定資産の残存価額を取得価額の1割とする場合のような、減価償却期間により一意に決まる一般化された償却率というのはないわけです。
しかし、それで終わるのも何ですので、理解を深めるために、私としてはできる限り一般化された償却率を求めていきたいと思います。
ではどのように考えるのかと言いますと、少しだけ厳密性には欠けるのですが、
固定資産の残存価額を取得価額に比べ非常に小さな値と設定した上で償却率を計算し、
減価償却期間の最後の期間にはその小さな残存価額も一緒に減価償却を行う、という考え方をすればよいわけです。
要するに、減価償却期間の最後の期間の減価償却費の金額は、「通常の減価償却費+残存価額」となるわけです。
減価償却期間の最後の期間だけは償却率が少しだけ異なるわけですが、定率法の考え方を損ねない範囲には収まっていようかと思います。
例によって私の独自理論なのですが、名付けて「参謀版定率法」とでも言いましょうか。
では以上の考え方に従って償却率を計算していきましょう。
固定資産の残存価額をここでは取得価額の「1%」(0.1%でも0.01%でももっと小さくても構いません)だとします。
すると、2014年12月11日(木)
で書きました計算式を応用すれば、
a×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)×(1-x)=0.01a
が成り立ちます。
この式をxについて解くと、x=0.482052532、となります。
つまり、減価償却期間が7年間の場合の償却率は0.482052532です。
この償却率を用いて、減価償却期間の最後の期間である7年目まで減価償却手続きを進めていきますと、
減価償却手続きが終了した時には、取得価額の1%の価額が帳簿に残っているわけです。
したがって、減価償却期間の最後の期間には、通常の減価償却費と取得価額の1%(残存価額)との合計額を減価償却費として
計上することになります。
また、固定資産の残存価額を「1円」とする場合は、帳簿に1円残さないといけませんので、
「通常の減価償却費と取得価額の1%(残存価額)との合計額−1円」を減価償却費として計上すればよいわけです。
この「参謀版定率法」に従った場合の減価償却手続きについて表を作成してみました。
参考にしていただければと思います。
【設例】
固定資産の取得価額は1,000,000円、減価償却期間は7年間、残存価額は0円、減価償却の方法は「参謀版定率法」(償却率は0.482052532)。
「残存価額が「0円」の場合の「参謀版定率法」による減価償却手続き」
(PDFファイル)
(キャプチャー画像)
減価償却期間の最後の期間の減価償却が問題になろうかと思います。
参謀版償却率を計算する際、”残存価額を取得価額の1%”と設定したため、減価償却期間の最後の期間には一定度の差異が生じています。
7期末に計上する減価償却費の金額は、6期末の減価償却費の金額よりも大きくなってしまっています。
また、6期末の未償却残高に対する7期末の減価償却費の金額は「100%(すなわち償却率=1.000000)」となっています。
これは、減価償却期間の最後の期間には、その前の期末の未償却残高は全て減価償却することになるわけですから、
ある意味当たり前と言えば当たり前です。
しかし、定率法というのは償却率が一定だという意味であろうと思いますので、
その点ではやはり少しおかしな部分があることになると言えると思います。
定率法は英語で「declining
balance method」もしくは「fixed percentage method」と言うようです。
decline
は衰える、傾く、下り坂、という意味です。
balance
は基本的には残高という意味だと思いますが、ここでは未償却残高を指すのではなく、減価償却費の金額を指しているのでしょう。
減価償却費の金額が減価償却期間が進む毎に減少していく様子を表したものだと思います。
fixed
percentage
の方は、文字通り償却率が固定されている(一定だ)という意味だと思います。
どちらで考えるにしても、減価償却期間の最後の期間だけは、減価償却費の金額も償却率も定率法とは呼べない部分があるのは確かでしょう。
ただ、私としましては、減価償却手続き全体に対するインパクトを考えれば、減価償却期間の最後の期間の差異は非常に小さいと感じます。
厳密にはやはり各固定資産毎に固有の償却率を算出するべきだとは思いますが、「参謀版定率法」も1つの考え方であろうと思います。
例えば、上記の設例において、残存価額を「1円」として通常の定率法で減価償却を行うと、償却率は「0.861050451」にもなります。
残存価額を「1円」とする場合、取得価額が大きければ大きいほど、償却率はどんどん大きくなります。
それは、取得価額が大きければ大きいほど、固定資産を取得した初期に大きな金額減価償却を行うという意味になるわけですが、
それはやはりおかしいのではないでしょうか。
なぜなら、取得価額が大きければ大きいほど、固定資産を稼動させることにより獲得できる収益は初期に大きい、
ということを意味することになってしまうからです。
そんなはずはないでしょう。
業種業態・業界特性・製造製品により、収益は後期よりも初期の方が大きいということはあり得るでしょうが、
そこに取得価額の大小は関係ないはずです。
取得価額は、設備投資の規模により決まるというだけであり、収益の獲得が初期だから高額になる、などということは一切ないわけです。
そういったことを考えますと、「償却率は減価償却期間により一意に決まる」ということが大切であろうと私は思うわけです。
償却率は取得価額ではなく減価償却期間により決まるべきであるわけです。
そういった部分の理論的整合性において、各固定資産毎に固有の償却率を算出するよりも、
今日書きました「参謀版定率法」の方が優れていると思います。
残存価額は「1円」と聞いて、直感的に、「償却率を一般化しなければならない」と感じたわけですが、
その直感は結果的に正しかったのだろうと自分では思っています。
「一般化されている」ということは、透明性があり公平性があり客観性がある、ということではないでしょうか。