2014年11月17日(月)
【コメント】
パナソニック プロダクション エンジニアリング株式会社は資本金の額の減少を行うようですが、会社情報によりますと、
パナソニック
プロダクション
エンジニアリング株式会社の会社設立日は何と「2014年4月1日」のようです。
ただ、沿革を見ますと、「2014年4月1日」はただの社名変更日のようでもあります。
会社情報
ttp://panasonic.co.jp/ppe/kigyo/info.html
>設立 2014年4月1日
沿革
ttp://panasonic.co.jp/ppe/kigyo/history.html
>2014年4月1日 パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社に社名を変更
「2014年4月1日」に会社を設立したばかりなのに、1年も経たないうちに資本金の額の減少を行うというのは、極端な話だなと思いました。
パナソニック株式会社本社の「モノづくり本部生産技術開発センター内」に、
パナソニック
プロダクション
エンジニアリング株式会社の本社はあるようです。
どちらの拠点も門真市内にあり、両社のアクセスマップを見ますと、両社本社は徒歩約20分圏内にあるようです。
パナソニック株式会社とパナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社は事業上のつながりが深いのでしょう。
では、パナソニック株式会社が増資を引き受ければいいではないか、と思われるかもしれませんが、
それならはじめから減資は必要なかった、ということになるわけです。
なぜなら、減資は実施せずに増資のみを実施しても、
パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社の資本は増強されますし、手許現金も増加するからです。
もちろん、パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社の株主は相変わらずパナソニック株式会社1人のみです。
減資をしなければ累積損が残ったままなのではないか、と思われるかもしれませんが、
経営上はパナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社に累積損が残ったまま経営を続けても全く構いません。
なぜなら、パナソニック株式会社の出資目的は受取配当金ではなく、事業子会社における高度生産システム開発の遂行だからです。
パナソニック株式会社はこれまでもそして今後も、パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社からは配当金を受け取ることなく、
グループ経営を続けていけばよいわけです。
仮に、パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社の手許現金が不足してくるようであれば、
パナソニック株式会社はパナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社に対し増資を行えばいいわけです。
そこに、より多くの配当金を受け取りたいという意思は全くないわけです。
仮に、増資前に減資を行っていれば、パナソニック株式会社は、
パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社から配当金を受け取れる場面も出てくるとは思います。
しかし、グループ経営上、その受取配当金に何の意味があるというのでしょうか。
このたび減資を余儀なくされたくらいです、事業子会社は今後に備え、常に内部留保を厚く保っておくべきでしょう。
以上のことからわかるように、結論を端的に言えば、株主が常に同一人物である場合は、会社は減資を実施する必要や意味は全くないのです。
裏を返せば、減資を実施する場面があるとすれば、会社が別の出資者から新たな出資を受ける場合のみ、ということになると思います。
仮に、パナソニック
プロダクションエンジニアリング株式会社が別の出資者から新たに出資を受けるという場面であれば、
パナソニック株式会社が株主として作ってしまった会社の累積損は一掃してしまうべきだ、という考え方はあろうかと思います。
会社の累積損は現在の株主(の皆さん)で責任を持って処理して下さい、その上で、私が出資します、というのが減資であるわけです。
そうでなければ、その新たな出資者は、会社の業績が回復しても(利益計上をしても)、過去の累積損のために配当を受け取れないわけです。
また、もう1つの見方として、減資をしないままに、つまり、株式の数を減少させないままに、会社が出資を受けて会社が利益を計上しても、
その利益は累積損を作った既存の株主の方にも減資前と同じだけ帰属してしまいます。
既存の株主の方に帰属する利益額を減らすためにも、減資を行い既存株主の株式数を減少させる必要があるわけです。
@資本面では累積損を失くすこと、A出資面では既存株主の株式数を減らすこと、この両方が減資(資本金の額の減少)の意味になります。
累積損が失くなり、なおかつ、既存株主の株式数が減少して、はじめてその新たな出資者は会社に出資ができるのです。
ちなみに、以上の議論では、債権者保護の観点は完全に無視しています。
債権者保護の観点から言えば、資本金の額の減少は債権者が絶対に認めない、の一言になります。
なぜなら、「資本金の額の減少」はイコール「会社財産の社外流出可能額の増加」だからです。
今日は、「資本金の額の減少」を所与のものとして書きました。
2014年11月14日
株式会社ルネサンス
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.s-renaissance.co.jp/corp/IR/newsrelease/pdf/141114-01.pdf
2014年11月14日
DIC株式会社
株式会社ルネサンスによる自己株式の公開買付けへの応募に関するお知らせ
ttp://www.dic-global.com/ja/release/pdf/20141114_01.pdf
>譲渡前の所有株式数 10,200千株(当社所有割合47.71%)
>譲渡予定株式数
6,458千株(当社所有割合30.21%)
>譲渡後の予定所有株式数 3,742千株(当社所有割合17.50%)
と書かれており、
>本件実施後も、同社は継続して当社の持分法適用関連会社となり、従来どおりの関係を維持する予定です。
と書かれています。
つまり、DIC株式会社からすると、株式会社ルネサンスには連結上、持分法を適用し続けることになります。
したがって、DIC株式会社の連結財務諸表には、持分法適用上、このたびの自社株買いの影響が反映されることになります。
そうするとどうなるのかと言えば、持分法適用上の損益が極めておかしなことになるのです。
その点について資料を作成しました。
持分法は勘定を集約し過ぎる。
An equity method
summarizes accounts too much.
(持分法による投資損失) 270 / (A社株式) 270
となる。
しかし、持分法適用関連会社の業績を親会社に反映させる、という観点から言えば、
持分法適用上の親会社における、X2期の持分法上の会計処理は、
(A社株式) 30 / (持分法による投資利益) 30
である方が正しいように感じる。
現に、持分法適用関連会社では、利益を計上しているのだから。
持分法では、損益項目のみならず、
資本項目をも「持分法による投資損益」勘定に集約してしまっている。
このことが、持分法を適用した場合の”損益”が正しくないと感じる原因なのだろう。
「持分法による資本出資変動」といった勘定などを新たに設けるのはどうだろうか?
この場合、持分法上の仕訳は以下のようになる。
(A社株式) 30 / (持分法による投資利益) 30
(持分法による資本出資変動) 300 / (A社株式) 300
ただ、この場合でも、結局、持分法適用上の「A社株式」勘定の価額は、
持分法適用関連会社の損益項目と資本項目の両方の影響を反映させた
価額となっていることには変わりはない。
さずがに、「A社株式」勘定は分けれらないことを考えると、
これが持分法と呼ばれる会計処理方法の限界と見るべきだろう。
持分法適用上の親会社が持分法適用関連会社株式を他者へ売却した事例としては、
2014年11月10日(月)
に紹介した住友電気工業株式会社の記事とプレスリリースがあります。
2014年11月10日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201411/20141110.html
2014年7月16日付けの住友電気工業株式会社からのプレスリリースには、
>4.今後の見通し
>本件に関し、平成27年3月期第2四半期の個別決算において、投資有価証券売却益約870億円を特別利益に計上する予定です。
>また、平成27年3月期第2四半期の連結決算において、投資有価証券売却益約440億円を特別利益に計上する予定です。
と書かれていますが、これは間違いです。
「投資有価証券売却益」の金額は、個別上と連結上(持分法適用上)で同じとなります。
ただ、このプレスリリースの記載が間違っている理由は推測できないわけではありません。
それは、住友スリーエム株式の持分法適用上の価額は、個別上の価額よりも約430億円大きいからだ、
と考えてしまったのではないか、ということです。
つまり、株式の売却原価が個別上と持分法適用上とで異なる、というような考え方をしてしまった、ということは考えられます。
しかし、そのような考え方は間違いです。
全ての商取引は、あくまで個別上で行われます。
連結上で行われる商取引など1つもありません。
連結財務諸表は、個別上で行われた商取引を合算しているだけなのです。
また、住友スリーエムの自己株式取得実施日(当社保有の全株式を売却する日)
は、2014年9月1日とのことです。
これは「平成27年3月期第2四半期」中のことです。
プレスリリースの最初にも書かれていますが、本株式売却に伴い、
住友スリーエムは住友電気工業株式会社の持分法適用会社から除外されることになります。
ですから、住友スリーエム株式に関しては、連結上(持分法適用上)は全く影響を与えない(個別上と全く同じ売却益を計上するのみ)、
ということになります。
持分法の適用が継続されるとしても投資有価証券売却益の金額にはどちらにせよ影響は与えないのですが、
住友スリーエムが持分法適用会社から除外されるとなると、いよいよ概念的にはさらに関連がなくなるわけです。
仮に、持分法適用が継続される場合は、先ほど書きました株式会社ルネサンスとDIC株式会社の事例のように、
株式売却後の「持分法適用関連会社に対する株式所有割合」を再計算し、親会社の持分法適用関連会社の出資持分を再計算し、
投資とこれに対応する持分法適用関連会社の資本との間の差額は持分法適用上発生した新たなのれんとして処理していく形になります。
親会社は全く株式の売買など行っていなくても、持分法適用関連会社が他の株主から自社株式を買い取っただけでも、
持分法適用上は新たにのれんが発生することになります。
そののれんもまた、「持分法による投資損益」という形で、連結上(持分法適用上)、親会社の連結財務諸表に反映されることになります。
これもまた、持分法という会計処理方法の限界の表れだと思います。