2014年10月26日(日)
【コメント】
この公告は、「1株を3株に分割する株式分割」についての公告ですが、2014年10月24日(金)
に、
「2株につき1株だけ新株式を取得できる新株予約権(ライツ・イッシュー)」についての記事を紹介したかと思います。
2014年10月24日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201410/20141024.html
この時のコメントで言いたかったのは、単に「新株式を発行するというだけでは、特段どの価格にも市場株価はさや寄せしない」
ということに過ぎなかったわけですが、この時には、新株予約権の価額のみについて書いただけであり、
そのライツ・イッシューによる総発行株式数については全く書かなかったかと思います。
「2株につき1株だけ新株式を取得できる新株予約権(ライツ・イッシュー)」となりますと、
割り当てた全新株予約権が行使されますと発行済株式総数は、ライツ・イッシュー実施前の1.5倍になります。
ここで、実務上は、「新株予約権1個につき1株新株式を取得できる新株予約権を、株式2株につき1個だけ無償割当する。」
ということを行うことになるのだと思います。
「新株予約権1個につき0.5株新株式を取得できる新株予約権を、株式1株につき1個だけ新株予約権を無償割当する。」
ということは実務上は行えないということではないかと思います。
マクロな視点で見るとどちらも同じであるわけですが、「実際に株式を割り当てる」となりますと、その最小単位はやはり1株だと思います。
端株そのものの問題点にも通じる問題点なのですが、「端株をどうやって割り当てる(もしくは発行する)のか」という問題が生じます。
では、新株予約権の方は、「株式2株につき1個だけ無償割当する(もしくは、株式1株につき0.5個だけ無償割当する)」
ということができるのかと言えば、株式同様、やはり法理的にはできないように思います。
新株予約権の最小単位もやはり1個だと思います。
例えば、1株しか株式を所有していない株主に対して、どうやって新株予約権を0.5個割り当てればよいのか、という問題が生じます。
結局のところ、株式が端数になろうが、新株予約権が端数になろうが、実際には端数部分は割り当てることはできないという点では
問題点は全く同じである(私が上に書いた割当方法は煎じ詰めればどちらも問題がある)わけですが、
「新株予約権1個につき1株新株式を取得できる新株予約権を、株式2株につき1個だけ無償割当する。」
ということを行うと法理的には解釈すべきであろうと思います。
その理由はあまり論理的ではなく非常に感覚的なものに過ぎないわけですが、
新株予約権の方は無償で割り当てる分、株主間の不公平が相対的に小さいのではないかと思いました。
新株予約権は持っているが新株式は取得できないという場合と、新株予約権そのものを無償で割り当てられなかったという場合、
どちらの方が株主の権利は侵害されていると感じるかと言えば、私個人は前者であるように感じます。
株式というのは会社に対する権利を直接的に表象するものであるわけです。
それに対し、新株予約権の方は、確かに会社に対する権利でもあるわけですが、株式に対する権利であると思うわけです。
会社に対しては間接的な権利を表象するものに過ぎない、と私は思うわけです。
ここでいう直接的や間接的という言葉の意味は、
会社に対して議決権が現にあるのか否かという意味であり、配当金を受け取る権利が現にあるのか否か、という意味です。
株式には現に両方の権利があるでしょう。
しかし、新株予約権の方は現に両方の権利がないでしょう。
ですので、「株式を割り当てられなかった」と聞くと、非常に不平等であると感じるわけです。
それに比べ、「新株予約権を割り当てられなかった」と聞くと、相対的に不平等感が小さいと感じるわけです。
所有している株式数が奇数の場合は、結局、株式を取得したくても端数部分に関しては取得できないという点ではどちらも同じなのですが、
法理的にどちらの方が割り当てないことが認められるかと言えば、新株予約権の方が割り当てないことが認められる、と感じるわけです。
これは、株式は権利そのものを表象しているのに対し、新株予約権は権利に対する権利(権利を取得できる権利)を表象している、
という意味において、無償による割当という点も含め、
端数部分は切り捨てるという考え方が認められるのは新株予約権の方であるように感じました。
あまり論理的ではなく非常に感覚的な説明に過ぎないわけですが、何となくそう感じました。
特にこのたびのように、とにかく2株に1株新株式を取得できるように新株予約権を割り当てないといけないという場面では、
どのような手法(割当方法)であると解釈すべきなのか、その論理立てや解釈の建て付けが大切だと思いました。
端的に言えば、「株式が端数になることだけは避けるべきだ」と思いました。
法理的に言えば、全株式に新株予約権を無償割当するというライツ・イッシューにおいては、
「新株予約権1個につき1株新株式を取得できる新株予約権を、株式1株につき1個だけ無償割当する。」
という割当方法が発行する株式数が最小になるパターンということになると思います。
ついでに書きますと、2014年10月24日(金)
のような形でライツ・イッシューを実施するとなりますと、
市場株価を証券取引所の方で機械的に変えなくてよいのか、という問題はあろうかと思います。
ただ、新株予約権の行使タイミングは株主より差異があるでしょうから、
株式分割の時みたいに市場株価を機械的に切り下げるのは実務上は難しいと思います。
仮定の話として、全株主が必ず新株式を引き受ける株主割当増資を実施するという場面であれば、
つまり、新株式発行のタイミングが全株主で同じという場面であれば、
発行株式数と増加株式時価総額を考慮した上で、市場株価を再計算して機械的に修正する、ということは理論上は可能だとは思います。
2014年10月24日(金)
の記事に即して考えてみましょう。
2株につき1株ずつ、市場株価の6割の価格で新株式を発行します。
株主割当増資を行うとすると、株主割当増資により、発行済株式総数は従来の0.5倍分増加する一方、
株式時価総額は「0.6×0.5」だけ増加することになります。
すると、PBRは一定だとしますと、株主割当増資直後の市場株価は、株主割当増資直前の市場株価の
(1+0.6×0.5)÷(1+0.5) = 0.8666...
に機械的に切り下げればよいのではないでしょうか。
例えば、株主割当増資直前の市場株価(前日終値など)が1万円だったとしますと、
株主割当増資実施の瞬間(株主割当増資実施直後)、市場株価を「8,666円」に機械的に(システム上)切り下げればよいわけです。
株主割当増資に合わせ市場株価を機械的に切り下げない場合、株式時価総額は1.5倍になるわけです。
しかし、株式時価総額の増加額は実際には0.3倍分に過ぎないわけです。
つまり、株主割当増資後の株式時価総額は、株主理割当増資前の1.3倍でなければ本来おかしいはずです。
したがって、株主割当増資直後の株式時価総額を株主割当増資直前の1.3倍にすべく、
株主割当増資に合わせ市場株価を「0.8666...」倍に修正するわけです。
株式分割の場合は株式時価総額は一切増加しないでしょう。
その代わり、株式分割の規模に応じて、市場株価が機械的に修正されるわけです。
その応用ということで考えてみたわけですが、株式時価総額の増加分を市場株価に織り込むべく、
株主割当増資に合わせた以上のような市場株価の修正は理論上は可能なのではないかと思います。