2014年10月5日(日)



2014年10月3日(金)のコメントで、2014年3月29日(土)付けの株式会社不二越の記事を紹介しました。


2014年10月3日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201410/20141003.html


この記事で、2013年12月〜2014年2月期の連結経常利益が前年比約9割増となる理由について、


>海外子会社の決算期を9月から11月に変更したことに伴い、海外の収益を5か月分計上したことも経常利益を5億円程度押し上げたとみられる。

>海外子会社の決算期変更に伴う連結売上高の押し上げ効果は100億円程度あった


と書かれています。
今日は決算期の変更について一言だけ書きたいと思います。

 


2014年4月3日
株式会社不二越
平成26年11月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://www.nachi-fujikoshi.co.jp/ir/earnings/pdf/1404.pdf

経営成績に関する説明
(4/10ページ)


(四半期連結損益計算書)
(第1四半期連結累計期間)
(8/10ページ)



決算短信には、

>在外子会社については、従来9月30日現在の財務諸表を使用しておりましたが、
>当連結会計年度より11月30日現在の財務諸表を使用することに変更しております。
この変更により、在外子会社については、当第1四半期連結累計期間は5ヶ月となっております。

と書かれています。
「在外子会社については、当第1四半期連結累計期間は5ヶ月」という部分は正しいと思いますが、
「在外子会社については、当第1四半期連結累計期間は5ヶ月」というのは、すなわち、海外子会社だけは、当第1四半期連結累計期間が
自 平成25年10月1日 至 平成26年2月28日
となっている、ということでしょう。
すると、この連結財務諸表で使用している海外子会社の財務諸表は正しくは「2014年2月28日現在の財務諸表」ということではないでしょうか。
ただ、期首日が2013年10月1日である5ヶ月間の財務諸表をこの連結財務諸表では使用している、ということだと思います。
仮にこのたびの決算期の変更がなければ、海外子会社の財務諸表は、
「期首日が2013年10月1日、期末日が2013年12月31日の財務諸表」を連結財務諸表で使用していた、ということになると思います。
「従来9月30日現在の財務諸表を使用」という決算短信の文言自体もおかしいと思います。
四半期の財務諸表では、毎四半期末日の財務諸表を使用するのだと思います。

 



いずれにせよ、連結財務諸表を作成するときは、親会社と子会社とで(期首日ももちろんですが)貸借対照表日(決算日)を合わせないと、
連結財務諸表そのものを作成できません。
貸借対照表日がずれていますと、例えば子会社から親会社へ支払った配当金を連結上相殺消去できないことになるでしょう。
子会社の貸借対照表日の方が早い場合、
子会社の財務諸表では配当金は支払っていないが親会社の財務諸表では配当金を受け取っていることになります。
親子会社間の配当金の支払い・受け取りが連結上相殺消去できません。
親会社と子会社で貸借対照表日がずれている場合は、この問題は全ての親子会社間の内部取引について当てはまります。
連結財務諸表を作成するときは、親会社と子会社とで貸借対照表日(決算日)を必ず同じ日付にしないといけないわけです。
ちなみに逆に、子会社の貸借対照表日の方が遅い場合は、
子会社の財務諸表では配当金は支払っているが親会社の財務諸表では配当金を受け取っていない、ということになりますが、
過去の収益や費用ならまだしも、親会社から見て将来の日付の収益や費用を連結財務諸表に計上してしまっているというのは、
財務諸表の作成目的を考えると何か根底からおかしいように感じます。
子会社の方で確かに実現した収益ですし確かに発生した費用ではありますが、
それらは親会社の決算日以降に実現した収益であり発生した費用であるわけですから、
そのような収益や費用が連結財務諸表に計上されているというのは根本的におかしいと思います。
以上のように、会計理論的にも常識的にもおかしな話が出てきてしまいますので、
連結財務諸表を作成するときは、親会社と子会社とで貸借対照表日(決算日)を必ず同じ日付にしないといけないわけです。
親会社と子会社とで貸借対照表日(決算日)が異なるだけでもおかしいわけですが、
連結財務諸表に合算される会計期間の長さまでもが異なるとなりますと、
前期と当期とで全ての収益・費用項目が比較できないことになります。
連結財務諸表に合算される会計期間の長さまでもが異なるというのは、確かに決算期の変更を行った期のみに影響があることだとは思います。
しかし、連結財務諸表は、個別財務諸表とは異なり、債権者のために作成するという趣旨は全くと言っていいくらいないわけです。
なぜなら、子会社の債務や資産は親会社の債権者には法律的には全く関係ないからです。
親会社の債権者に関係があるのは、法律的には親会社の債務と資産だけなのです。
親会社が子会社の意思決定機関を支配していると言っても、
親会社の債権者が子会社の財産を親会社の債務の弁済の引き当てとできるわけでは決してないのです。
法律的には、親会社と子会社は全く異なる会社なのです。
また、税務上も連結財務諸表は全く議論の対象とはならない計算書類です。
究極的なことを言えば、税務上重要なのは、各法人の当事業年度の益金額と損金額のみなのです。
その意味では、連結財務諸表は純粋に投資家の投資判断に資するためだけに作成すればよいとも言えるわけです。
したがって、子会社の方では親会社の決算期に合わせた仮決算を行い、その擬似的な財務諸表を連結財務諸表に合算する、
という作成方法で何の問題もないのではないかと思います。

 



こちらは、親会社自身が決算期の変更を行った、という記事です↓。

 

2014年2月15日(土)日本経済新聞
■SUMCO 前期純利益7億1500万円
■ケンコーコム 前期純利益2000万円に
(記事)


2013年3月26日
株式会社SUMCO
2013年3月26日決算期(事業年度の末日)の変更及び業績予想の修正、定款の一部変更に関するお知らせ
ttp://www.sumcosi.com/press/2013/pdf/20130326_352.pdf

 

2013年5月13日
ケンコーコム株式会社
決算期(事業年度の末日)の変更及び定款一部変更に関するお知らせ
ttp://blog.kenko.com/company_ir/files/130513_kessanki.pdf

 



こちらは、株式会社不二越同様、連結子会社が決算期の変更を行った、という記事です↓。

 

2014年6月13日(金)日本経済新聞
■オハラ 11〜4月経常益78%増
(記事)


2014年6月12日
株式会社オハラ
平成26年10月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1158598

四半期連結財務諸表に関する注記事項
(セグメント情報等)
U 当第2四半期連結累計期間(自平成25年11月1日 至平成26年4月30日)
2.報告セグメントの変更等に関する事項
(連結子会社の事業年度等に関する事項の変更)
(13/13ページ)


株式会社オハラは、株式会社不二越に比べれば、決算短信の説明が丁寧な気がします。
決算期末日だけではなく、会計期間を見る時は期首日も大切です。
期首日と期末日により、会計期間の長さが決まるわけですから。
理論上の話をすれば、決算期の変更というのは、企業会計上も税務上もありません。
決算期というのはただの便宜上の区切りの日に過ぎません。
ただの区切りに過ぎない日付を変更する必要性など、理論上は全く考えられないことであると言わねばならないでしょう。
特に税務上は、「12ヶ月間で1単位」として課税を行っていく必要があります。
税務理論上はなおさら決算期の変更など認められないでしょう。

 



決算期の変更とは関係ありませんが、ケンコーコム株式会社のプレスリリースについて一言だけコメントします。


「決算期(事業年度の末日)の変更及び定款一部変更に関するお知らせ」
3.定款の一部変更
(2/2ページ)



ケンコーコム株式会社では、期末配当金や中間配当金を、
期末日の最終の株主名簿に記載または記録された株主もしくは登録株式質権者に対して支払う、と書かれています。
しかし、配当金を登録株式質権者に対して支払うのは、法理的には間違いです。
配当金は、「期末日の最終の株主名簿に記載または記録された株主」のみに対して支払わなければなりません。


Those who have the right to earn a dividend are those who own a stock itself.
(株式そのものを所有している人に配当金を受け取る権利があります。)


質権とは、債権者がその債権の担保として債務者から提供を受けた物を占有し、かつその物につき他の債権者に先立って
自己債権の弁済を受けることができる権利です。
質権はあくまで担保物権に過ぎません。
質権では、例えば、物を担保に渡して金銭を借り、返済できなければ物の所有権を失う、というだけなのです。
質権を設定しただけではその物の所有権は失わないのです。
配当金を受け取ることができるのは、端的に言えば株主です。
株主とは、株式を所有している人のことです。
しかし、質権者は株式を所有してはいません。
株式を所有しているのはあくまで株式の所有権を有している人です。
したがって、質権者には配当金を受け取る権利はないのです。

 



民法の教科書には、不動産質という質権が載っています。
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、使用収益権が認められる、と書かれています。
この考え方を踏まえれば、株式を使用し収益をすることも認められそうです(ただし、株式は「動産」ですが)。
ただ、法理的に言えば、本質的には目的物は依然所有権者に帰属していますし目的物からの収益も所有権者に帰属している、
と考えるべきでしょう。
当事者間の特約により、目的物からの収益は質権者のものとする、と定めることは全く自由(契約自由の原則の範囲内のこと)でしょうが、
原則的な考え方としては、やはり目的物からの収益は所有権者のものである、という考え方になると思います。
商法(会社法、特別法)には配当金は登録株式質権者に支払うと定められているのだとすれば、
それは民法の原則規定の間違った修正である、と言わねばならないと思います。