2014年7月18日(金)



2014年7月18日(金)日本経済新聞 
■大和証券オフィス 分配金143円増の7621円
(記事)





2014年7月17日(木)日本経済新聞 
■阪急リート投資法人 分配金523円減1万2462円
■平和不動産リート投資法人 分配金16円増の1670円
(記事)

 



【コメント】
大和証券オフィス投資法人では8月下旬に投資主総会が開催されるようですが、正式な投資主総会招集通知の発送に先立ち、
投資主総会の招集に関する議案内容(「第8回投資主総会招集のご通知」)が既に適時開示されています。
この「第8回投資主総会招集のご通知」を読んでいてふと思ったことがありますので一言だけコメントします。


2014年7月17日
大和証券オフィス投資法人
規約変更及び役員等の選任に関するお知らせ
ttp://www.daiwa-office.co.jp/site/file/tmp-3PsGX.pdf

第1号議案 規約変更の件
第8条
(8/20ページ)


>第8条 (投資主の請求による投資口の払戻し及び合意による自己の投資口の取得)
>1. 本投資法人は、投資主の請求による投資口の払戻しを行わない。
>2. 本投資法人は、投資主との合意により本投資法人の投資口を有償で取得することができる。

 


「第8回投資主総会招集のご通知」にも書かれていますが、

>@ 投資主との合意により本投資法人の投資口を有償で取得することができる旨の規定を新設するものです(第8条第2項)。

というふうに、規約を変更するようです。
気になったのは、ほとんど規約の文言そのままなのですが、
投資主の請求による投資口の払戻しは行わないが、投資主との合意により投資口を有償で取得することはできる、という点です。
事の本質は全く同じですので投資法人ではんなくここでは株式会社のことを例に書いてみます。
言葉の定義の話でありあまり本質的な指摘ではありませんが、一言だけ書きます。
会社が株式を有償で取得する場合は全て合意によると決まっているのではないでしょうか。
会社は合意していないのに、会社が株式を有償で取得することはあり得ない(不可能)のではないでしょうか。
株式を有償で取得することは会社が望むことではなかったのだとしても、
株主からの請求に応じたということは、それは合意した、ということになると思います。
一般化して言えば、「相手方からの請求に応じるというのは、それは合意(mutual agreement)を意味する」ということになるわけです。
感情論や腹の中のことは分かりませんが、少なくとも法律上は請求に応じることは合意(mutual agreement)です。
合意とは、相互にそのことに同意した、という意味です。
無償であったり、一方から他方へ一方的に何かをするという場面であれば、
合意も何もなく一方的に約束が破棄されるということはあるかもしれませんが、
少なくとも対価が生じる約束事に関しては、相互にそのことに同意する(合意する)必要があることになると思います。
このたびの例で言えば、会社が合意していないのに、どうやって株主は株式の対価を受け取る(会社は対価を支払う)というのでしょうか。
対価の支払いのことを考えれば、(感情論や腹の中のことは別として)概念的には合意があったと考えるしかないともいます。
合意がなかったら対価を支払わなかったはずだ、という考え方になると思います。
大和証券オフィス投資法人の規約で言えば、投資口の払戻しが行われる際は当然にお互いの合意があるわけです。
ですから、規約の変更で言えば、第8条の第1項 (本投資法人は、投資主の請求による投資口の払戻しを行わない。)が不要なのだと思います。
そして、第8条を「本投資法人は投資口を有償で取得することができる。」と定めるだけでよいのだと思います。
投資口の払戻しを今後行う場合があると決めたのですから、投資口の払戻しを行わないなどと定める必要は全くなく、
また、投資主から投資法人に対する請求の場合にせよ投資法人から投資主に対する請求の場合にせよ、
投資口の払戻しが行われる際は当然にお互いの合意があるわけですから、お互いの合意については特段定める必要はない、となると思います。

 



お互いの合意がある株式取得か否かについては、2014年7月15日(火) に「全部取得条項」を例に書きました。

2014年7月15日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201407/20140715.html

2014年7月15日(火) のコメントでは、
会社法に規定のある「全部取得条項」(ひいては、株式の取得に関する法手続きは結局全てが該当してしまうかもしれませんが)は、
民法の大原則である「所有権絶対の原則」を鑑みればおかしな法手続きである、と書きました。
今日書いたことは2014年7月15日(火) のコメントと矛盾しているのではないかと思われるかもしれません。
しかし、矛盾はしていません。
なぜなら、今日指摘しました「お互いの合意」は商法上は存在するからです。
会社法に規定のある「全部取得条項」(ひいては、株式の取得に関する法手続きは結局全てが該当してしまうかもしれませんが)は、
会社法上は会社と株主の双方がお互いに合意をしています。
なぜなら、株主総会決議を取っているからです。
買付者の株式取得にあくまで反対である株主(ローランド創業者など)も、会社法上は全部取得に同意していることになります。
買付者の株式取得にあくまで反対である株主は全部取得に同意した、だから、会社はその反対株主からも株式を取得できるのです。
変な日本語ですが、「株式の強制取得に同意した」と言えばいいでしょうか。
もちろん、反対株主は株主総会では全部取得の議案に反対票を投じたことでしょう。
しかし、集計の結果、全部取得の議案が可決・承認されたならば、反対株主も株主の総意として同意したものと取り扱われるわけです。
(いい悪いは完全に別として)これが多数決の原則の考え方になります。
そういうわけで、(いい悪いは完全に別として)会社法上はあくまで全株主が株式の全部取得に合意しているわけです。

 



ただ、私としましては、会社法ではなく一段基礎・基盤の方へ下りていきまして、根源の部分から物事を考えてみましたところ、
全部取得手続きは所有権を強制的に奪っている側面があるな、と思ったわけです。
それで、株主総会で株主は株式の全部取得に賛成したけれども、そもそも民法上そのこと自体認められることなのだろうかと思ったのです。
それで、これは商行為の特則ということで割り切っていいことなのか、それとも、
あくまで「所有権絶対の原則」を犯すものであると考えなければならないのか、自分の中で絶対的な答えを出せそうになかったので、

>株式の強制取得というのは、所有権絶対の原則の修正なのか、それとも、その否定なのか。

と書いたわけです。
最後は、民法の大原則である「所有権絶対の原則」は修正が認められるのか、そして、
修正が認められるとしたら何を根拠(法源)に認められるのか、という議論に行き着くと思います。
法の根源にまで遡る話になりますが、「所有権絶対の原則」はどこまで絶対なのか、と言えばいいでしょうか。
公共の利益のためであれば「所有権絶対の原則」は修正が認められるとされていますが、
では、商行為における株式の取得はその公共の利益に匹敵するほどの重要性を持つものなのかどうか。
また、株主総会で株主の承認を得ている点はここでは度外視しますが、
公正な対価を支払えばそれで反対株主の利益を害したことには全くならない、という考えも間違いだと思います。
なぜなら、その株主は現金ではなく株式を所有することを望んでいるからだ、という理屈もまた成り立つような気がします。

商法と民法のそもそもの関係について書きます。
商法はそもそも民法に書かれていないこと(会社運営や債権者保護等)について定めていたり、
民法の定めのままでは商行為上十分ではないので追加的に定めを変えていたり、ということをしているわけです。
つまり、商法は民法が完全にベースになっているわけで、民法とは別に商法があるわけでは決してないのです。
商法は民法の補遺、とすら言っていいくらいです。
そのことを鑑みますと、民法の基本的考え方に反した商法の定めは法理上・法体系上あってはならない、ということになると思います。
特別法は一般法に優先すると言いますが、それは商行為に関しては民法の原則規定ではなく商法の補遺が適用されるという意味であって、
民法の基本的考え方に反した規定を商法で定めて運用してよい、という意味では決してないわけです。
限定的なミクロな部分だけで言えば商法が民法に優先しますが、法体系全体を踏まえたマクロな観点からは民法が商法に優先するわけです。
そういったことを考えますと、商法には民法の所有権絶対の原則を修正する効力はない、と言っていいのかもしれません。
株式の全部取得手続きは会社法上何ら問題はないものの、その会社法の規定に全く根拠がない、
民法の観点からはそう見えるように思えます。