2014年6月4日(水)



2014年5月28日(水)日本経済新聞
単元株100株に 大和ハウス変更 8月から
(記事)



 

2014年5月27日
大和ハウス工業株式会社
単元株式数の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ
ttp://www.daiwahouse.com/release/house/pdf/release_20140527.pdf

2. 定款の一部変更
(1/2ページ)




株主優待制度
ttp://www.daiwahouse.com/ir/yutai/

 


(関連コメント)

2014年5月27日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201405/20140527.html

 



【コメント】
定款変更の内容がおかしいと思いました。
プレスリリース記載の手法でも実務上は問題ないのだとは思いますが、法理的には正しくは次のようにすべきではないでしょうか。


「『変更後の定款第8条』の修正第8条」



大和ハウス工業株式会社は2014年8月1日(金)に改めて取締役会を開催し、
会社法第195条第1項の規定に基づき、当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」について決議を取って下さい。
この場合、会社法第195条第1項の規定に基づくことで、
取締役会の決議により当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」は法的効力を発生します。
したがって、大和ハウス工業株式会社は、2014年8月1日(金)に取締役会を開催し、
「本日(2014年8月1日(金))をもって当該『単元株式数の変更及び定款の一部変更』を実施する。両変更の効力発生日は本日である。」
という内容について、取締役会決議を取ればそれで事足りるのです。
何も「附則」など設ける必要などないのです。
なぜわざわざ、2014年5月27日(火)に取締役会決議など取っているのでしょうか。
単元株式数の変更については事前に東京証券取引所に申請する必要があろうかと思います。
その申請の際、「単元株式数の変更及び定款の一部変更」について会社で取締役会決議を取っていることが条件なのかもしれません。
ただそうなのだとしても、2014年8月1日(金)に改めて取締役会を開催し、
会社法第195条第1項の規定に基づき、当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」について決議を取る旨、
東京証券取引所に申し出ればそれでよいのではないでしょうか(証券取引所における詳しい規定・手続きは知りませんが)。
もしくは、2014年5月27日(火)に、
「2014年8月1日(金)に改めて取締役会を開催し、
会社法第195条第1項の規定に基づき、当該『単元株式数の変更及び定款の一部変更』について決議を取る」、
という内容について取締役会決議を取る、ということでもよいかもしれません。

 


2014年5月27日(火)の取締役会決議では、
2014年8月1日(金)に「単元株式数の変更及び定款の一部変更」を実施することについて正式決定を行い、
2014年8月1日(金)の取締役会決議では、
当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」に法的効力を発生させる、
と考えるわけです。
2014年5月27日(火)の取締役会決議は正式意思決定、2014年8月1日(金)の取締役会決議は法的効力発生決議、
と考えるわけです。
同じ法行為については取締役会決議は一度しか取ってはならない、などという法はないでしょう。
このように、意思決定と効力発生を分けてもよいはずです。
要するに、
「何月何日をもって効力を効力を生じるものとする。なお、この附則は効力発生後削除する。」
などという附則を付けるよりは、
改めて決議を取った方がよっぽど法理(法的効力発生までの流れ、決議と効力発生の関係)がすっきりする、ということを言いたいわけです。
率直に言えば、定款にはこの種の附則は決して付けるべきではありません。
定款に附則を付けるという考え方自体がそもそもないのではないかと思います。
削除も含め、定款の変更が必要ならその都度必要な決議を取っていく、という考え方が大切なのだと思います。

 


追加して書きます。
もしくはもっと単純に、2014年5月27日(火)の取締役会決議で、
「2014年8月1日(金)を効力発生日として当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」を実施する。」
と決議を取っても、
その取締役会決議及び「単元株式数の変更及び定款の一部変更」は正しく法的に効力を持つのではないかとも思いました。
何も、取締役会決議を取った2014年5月27日(火)に
「単元株式数の変更及び定款の一部変更」を実施しなくてもよい(変更に法的効力を持たせなくてよい)、のではないかと思いました。
この種の「単元株式数の変更及び定款の一部変更」は、変更のための取締役会決議を取った当日に効力を発生さねなければならない、
などということはないのではないかと思います。




ではこの議論に関連して思い浮かぶのは、

「取締役会決議は何ヶ月間有効か?」

という疑問でしょう。
株主総会決議は基準日から3カ月が有効期間です(法理的にはですが)。
では、取締役会決議はと言いますと、取締役会決議の方は話は簡単ではないと思います。
というのは、取締役会決議というのは、非常に広範かつ会社全体に渡る包括的な意思決定を含むからです。
取締役会決議は、必ずしも、厳密な意味での法的効力を持たせるための決議とは限らないのです。
ここでいう「厳密な意味での法的効力」とは、会社法に定められた事項に関する決議・効力、という意味です。
株主総会決議は、全てが会社法に定められた事項に関する決議・効力、と言っていいでしょう。
逆から言えば、会社法の定めに従って、各事項について株主総会決議を取るわけです。
そして、その株主総会決議は法的効力を持つわけです。
ところが、取締役会決議はどちらかというと、内輪の事と言いますか、会社内部に関する決定事という意味合いが強いわけです。
取締役会決議は、法的効力云々というより、会社でそのように決めました、という位置付けであるわけです。
もちろん別の文脈(例えば仕入先との商取引上の契約について取締役会で決議したなど)では、それも確かに法的効力と呼ぶのでしょうが、
会社法や株主総会決議との対比で言えば、あくまで会社内部における業務上の意思決定である、という位置付けに過ぎないわけです。
敢えて乱暴に言えば、その意味で、取締役会決議は法的効力を持たないわけです。
このたびの「単元株式数の変更及び定款の一部変更」のように、取締役会決議のみで正式に法的効力を持つ事項も例外的にあります。
ただそれも例外的に会社法に定めがあるというに過ぎません。
基本的には、定款の変更をはじめとする会社の基本事項(根本事項)(会社機関選任や配当決定や株式についての決定など)に関する決定は、
株主総会決議のみが法的効力を持つわけです。

 



ですので、「取締役会決議は何ヶ月間有効か?」という問いは、質問自体に非常にあいまいな部分があると言えるわけです。
決議する内容による、という言い方になるかもしれません。
このたびのような「単元株式数の変更及び定款の一部変更」という会社の根本事項に関する決議(本来は株主総会決議が要されるべき決議)
であれば、法理的に言えば、やはり変更の効力発生日は取締役会決議日から3ヵ月以内ということになると思います。
株主総会決議であれば、決議する内容の如何を問わず、基準日から3カ月が有効期間ですが。
その理由は、議決権を行使した株主と効力発生日の株主は(できる限り)同じでなければならないからです。
取締役会決議の場合は基準日に相当するものがありません。
取締役会において決議を行う権利がある者は全取締役です。
取締役会のメンバーはその任期に渡り同じであるわけです。
敢えて言うなら、基準日=取締役会決議日、となるでしょうか。
また、会社の遠い将来のことまで考えて、業務上長期的視野に立った経営計画を取締役会で立案・決定するというようなこともあるでしょう。
そこに法的効力というような考え方があるのかいうと、法律云々とはやはり違うでしょう。
取締役には任期がありますから、経営計画を立案した時の取締役と経営計画を実行する時の取締役は異なるかもしれません。
しかし、それでもその時の取締役会における決定は正式なものだったと誰もが考えるでしょう。
取締役会決議日はいつだったのか、などと、そこに法律論を持ち込む人は誰もいないでしょう。
要するに、取締役会決議には、取締役会決議日から3ヵ月以内が有効期間だ、などというような考え方はないわけです。
その理由は、敢えて乱暴に言えば、取締役会決議は法的効力を持たないからだ、と表現してもよいのではないかと思います。

 



株主総会決議と取締役会決議には、水準の違いがあるのです。
それも、絶対的な、明らかな水準の違いが、です。
その違いは、法的効力を持つか否かの違いであり、会社法に裏打ちされているか否かの違いである、と言ってもいいでしょう。
もちろん、株主は取締役に経営全般について包括的に委任を行っているわけですから、日々の商取引のことを鑑みれば、
この違いは、取締役会決議は株主総会決議よりも業務上程度が低いものである、ということを意味するわけではありません。
要するに、両者には会社の日々の実務上(場合によっては便宜上)役割の違いがあるというに過ぎないわけです。
法律論を持ち込み、法的効力を持たないから取締役会決議は株主総会決議よりも法的に位が下だ、という解釈は経営上は間違いなのです。
株主が日々の商取引についてまで毎日決定するというのなら、会社は株式会社である必要はない(誰かに委任する必要はない)わけですから。
まあ、株主総会決議は法的に厳格・固い(英語で言えば、rigid)、
それに比べれば取締役会決議は相対的には rigid ではない(融通が利きやすく柔らかい(loose と言うと言い過ぎかもしれませんが))、
と表現してもよいのではないかとは思いますが。


最後にこのたびの「単元株式数の変更及び定款の一部変更」に関してまとめます。
一番流れが法的に整然としたと言いますか、一番法理に沿った手続きというのはやはり、
大和ハウス工業株式会社が2014年8月1日(金)に改めて取締役会を開催し、変更の効力発生のため別途取締役会決議を取ることだと思います。
しかし、2014年5月27日(火)の取締役会決議で、
「2014年8月1日(金)を効力発生日として当該「単元株式数の変更及び定款の一部変更」を実施する。」
と決議を取っても、
効力発生日は取締役会決議日から3カ月以内であるため、その決議は法的に有効である(期日に正式に法的効力を生ずる)、
ということになると思います。
少なくとも、定款に「附則」を付けることだけは法理上避けるべきことであろうと思います。