2014年5月27日(火)



2014年5月27日(火)日本経済新聞
■東海ゴム 住友理工に社名変更
■光通信 関西子会社、100%出資に
(記事)



 

2014年5月26日
東海ゴム工業株式会社
商号の変更に関するお知らせ
ttp://www.tokai.co.jp/pressrelease/2014/n51910112.pdf

 


2014年5月26日
株式会社光通信
株式会社光通信による株式交換を通じての株式会社パイオンの完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ
ttp://www.hikari.co.jp/ir/press_release/file/20140526.pdf

 



【コメント】
東海ゴム工業株式会社の株主は今後、定款の変更を承認するわけなのですが、
いつの株主が東海ゴム工業株式会社の定款変更を承認するのかと言えば、実は「2014年3月31日」時点の株主なのです。
「2014年3月31日」時点の株主が「2014年10月1日付けの定款変更」を承認するわけです。
配当支払いであれ役員選任であれ組織再編であれ定款変更であれ、「同じ株主が承認する」ということが極めて重要であるわけですから、
それらの効力発生日と基準日とはできる限り近くなければなりません。
概念上の理想論としては、基準日=株主総会決議日=効力発生日であるわけですが、実務上はそれは不可能かと思います。
それでも、法理的には「効力発生日は基準日から3カ月以内」でなければならないでしょう。
株主の出資比率や事業内容や会社財産には何らの変動も及ぼさない商号の変更ではありますが、
それでも株主の承認が必要な定款の一部変更には変わりありません。
仮に2014年10月1日付けで商号変更を行いたいのなら、
2014年6月30日以降の日を基準日とした臨時株主総会を招集する必要があるでしょう。
実務上、時々見かけるのですが、定款の一部変更だけを株主総会後先に行ってしまい、定款に、例えば、
「(付則)2014年10月1日を効力発生日として商号を何々に変更する。なお、この付則は2014年10月1日をもって削除する。」
といった但し書きのような付則が定款に記載されていることがあります。
確かに、この但し書き(付則)まで含めて株主総会で承認決議を取ったということだとは思いますが、
法理的にそのような承認決議を取れないのではないでしょうか。
このような将来の効力発生を定款に定めるというようなことはできないと言いますか、
変更や削除(付則)も含めた定款の一部変更自体が、基準日から3カ月以内でなければ法的効力を持ち得ないと考えなければならないと思います。
例えば、基準日を2014年6月30日とし、臨時株主総会を2014年7月14日に開催するとします。
この時、定款変更(商号の変更)の効力発生日は最も遅くて「2014年10月1日」であるわけです(2014年10月1日までは効力発生を遅らせてよい)。
株主総会日から効力発生日までは間が空いてもいいわけですが、とにかく、効力発生日は基準日から3ヵ月以内でなければならないわけです。
これは、「承認した株主と効力発生時の株主とは同じでなければならない」という法理から来る帰結であるわけです。
定款に但し書きのような付則をつけて効力発生日を延長させるような法理はないわけです。

 


このような効力発生日の延長が可能なら、次期以降の役員選任や配当金額を前もって定款に定めておくことも可能になるでしょう。
例えば2014年6月下旬の株主総会で、

2015年6月定時株主総会ではA氏とB氏とC氏を取締役として選任する。2015年3月期の配当金額は1株当たりxxx円とする。
2016年6月定時株主総会ではD氏とE氏とF氏を取締役として選任する。2016年3月期の配当金額は1株当たりyyy円とする。
2017年6月定時株主総会ではG氏とH氏とI氏を取締役として選任する。2015年3月期の配当金額は1株当たりzzz円とする。
付則 上記記載内容はそれぞれ、2015年6月、2016年6月、2017年6月の株主総会の時をもって効力を発生する。
   なお、この付則はそれぞれ、2015年6月、2016年6月、2017年6月の株主総会後の記載内容の効力発生の時をもって削除する。

というふうに定款を変更すればよいわけです。
この定款変更は株主総会で間違いなく株主の承認決議を取っています。
これで会社はむこう3年間、定時株主総会を招集する必要はありません。


・・・と聞いて納得する株主は一人もいないでしょう。
私が今書きました定款変更がおかしいと分かるなら、実務上行われている但し書き付きの定款変更もおかしいはずです。
何事でもそうですが、効力発生は「1回のみ」です。
このような但し書き付きの定款変更は、
@「定款の一部変更」自体の効力発生(通常は株主総会直後)
A定款に定めた内容の効力発生(10月1日など”何月何日をもって〜”と定めた日に効力発生(と見なす))
B付則の削除という一種の定款変更の効力発生(定款に定めた内容の効力発生の直後に効力発生)
という、合計3段階の効力発生を生じせしめているわけです。
定款の変更はその都度株主総会で承認決議が必要なはずですが、
このような但し書き付きの定款変更は結局のところ、承認決議なしで定款変更をさらに2回行っていることになるわけですわけです。
効力発生日は基準日から3ヵ月以内という法理上の問題の他に、そういった問題点も但し書き付きの定款変更にはあろうかと思います。
そもそも本来の目的である定款変更を基準日から3カ月以内に行いさえすれば、但し書きのような付則を付ける必要は全くないはずです。

 



そういうわけで、基本的考え方としては、効力発生日を別途定めるような定款変更を行うのではなく、
効力発生日を経営上の理由により先に決めたいのなら、基準日を効力発生日の3ヵ月以内に設定するということが大切なのです。
定時株主総会であれば基準日は動かしようがありませんが、
臨時株主総会の場合は、目的としている効力発生日と株主総会日との兼ね合いで一定度任意に決めることができる、と言えると思います。
恣意性をなくすために、任意に決めるというようなことは基本的にはできる限り避けたほうがよいわけですが、例えば、
10月1日が目的の効力発生日なら、6月30日を基準日と設定することは自然なことだろうと思います。
臨時株主総会の場合は、招集日(召集通知の発送日)が基準日という考え方が一番よいと思います。
逆から言って、基準日に招集すると表現してもよいと思いますが。
この場合、株主総会日は基準日から3ヵ月以内に任意に決めることになるでしょう。
何事でも恣意性をなくすというのは大切なことなのですが、この場合は任意に決める他ないと思います。

 


さて、私が上に記述しました「向こう3年間定時株主総会を招集しない方法」を考え付いたのは、
20年ほど前、世の中利己的な人間ばかりだなと世の中がつくづく嫌になっていた時のことでした。
というのは冗談です。
冗談ついでに、本でも出版しようと思います。
一冊は今日のコメント内容を踏まえた本であり、もう一冊は昨日のコメント内容を踏まえた本です。
もちろん各回避の仕方はネタですので、まねはしないようにして下さい。

 



「自己株式の潜脱的な買いかた 発見的教授法による会社法シリーズG 水道橋レクチャー叢書」
昔人生参謀今経営参謀 著 マジョルカ大学法学部商法研究室 共著
(マクグロウ・ヨル・ラーニング書房)

 

【推薦の言葉】
自己株式取得の財源規制を回避することによる利点は、本来利益計上により配当財源たる繰越利益剰余金を確保せねばならないにも関わらず、
財源規制を回避することで潜脱的に特定の株主から自社の株式を買い受けることにある。
この本を読むことにより、上場企業法務部の諸君は、論理や経験に裏打ちされた自己株式取得の財源規制潜脱技術の修得が可能である。

―伊東塾 英語科主任講師 船井悟

 

 

「定時株主総会回避のしかた 発見的教授法による会社法シリーズH 水道橋レクチャー叢書」
昔人生参謀今経営参謀 著 マジョルカ大学法学部商法研究室 共著
(マクグロウ・ヨル・ラーニング書房)

 

【推薦の言葉】
定時株主総会を回避することによる利点は、毎年開催しなければならない複雑な株主対応を一生懸命やって不愉快な思いをするよりは、
定時株主総会を回避することで毎年の役員選任や配当支払いの決議をスキップすることにある。
この本を読むことにより、上場企業法務部の諸君は、論理や経験に裏打ちされた定時株主総会回避技術の修得が可能である。

―伊東塾 英語科主任講師 船井悟