2013年9月17日(火)
「三菱自動車のここ10年間の値動き」
参考
2013年8月1日
三菱自動車工業株式会社
優先株式の転換価額の調整に関するお知らせ
ttp://www.mitsubishi-motors.com/content/dam/com/ir_jp/pdf/irnews/2013/20130801-02.pdf
2013年9月12日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201309/20130912.html
ここで指摘したい点や疑問点がいくつかあります。
一つ目は、記事には増資で得た現金は設備投資に使うと書かれていますが、そのようなことはできません。
増資で得た現金は優先株式の償還に使うわけですから、当然設備投資その他には使えません。
普通株式による増資と優先株式の償還をトータルで考えれば貸借対照表の借方は全く変化しません(現金預金も全く増加しません)。
このたびの公募増資に資金調達の意味合いは全くないわけです(優先株式の償還のための資金というだけなら確かに資金調達ですが)。
二つ目は、普通株式にて増資を行うとのことですが、優先株式には転換条項が付いているのだから、
それならはじめからただ単に優先株式を普通株式に転換すればそれで済む話ではないだろうか、という点です。
最近のプレスリリースで言えば例えばこれになります↓。
2013年6月28日
三菱自動車工業株式会社
自己株式(優先株式)の消却に関するお知らせ
ttp://www.mitsubishi-motors.com/content/dam/com/ir_jp/pdf/irnews/2013/20130628-01.pdf
このプレスリリースの文言をそのまま使えば、三菱自動車は発行している全優先株式に関して、
>普通株式の交付と引き換えに取得した優先株式の消却を行う
ということをすればそれで済むわけです。
これならわざわざ公募増資をする必要はないわけです。
既存の優先株主は市場で普通株式を売却すれば出資した現金は返ってきます。
長い時間をかけてゆっくり売却すれば株価も下がりづらいでしょう。
記事には、
>優先株は全部転換すると大株主3社の保有比率は6割を超える
と書いてありますが、それも致し方ないということになります。
それもまた(優先株式発行前の)株主責任を取る、ということだと思います。
大まかかに言えば、10年前グループ3社に普通株式で第三者割当増資を実施していたらそうなっていた、ということなのでしょうから、
株式の希薄化(利益面と議決権割合両方)のディメリットはグループ3社以外の株主で引き受けるのが筋でしょう。
ここで問題になるのが、転換価額です。
簡単に言えば、普通株式の発行価額と転換価額が同じなら、増加する普通株式数は全く同じになります。
三菱自動車の普通株式の株価は今日の終値で「1,006円」でして、ここ数ヶ月間は1000円から1500円の間を推移しているようです。
3800億円分の増資及び優先株式の償還を考える際、例えば公募増資時の普通株式の発行価額=転換価額=1000円だとしますと、
増加する普通株式数はどちらも3億8000万株で同じになるわけです。
ただ三菱自動車は何種類も優先株式を発行していまして、その種類毎に転換価額が異なっているようなのです。
各優先株式毎に「上限転換価額」と「下限転換価額」が付いています。
個人的には、理屈の上では株式の転換価額に幅がある(=発行されることになる株式数に幅がある)のはおかしいという気がします。
これは新株予約権の権利行使価額や新株予約権1個当たり発行する株式数が随時変更になる、と言っていることと同じなのです。
新株予約権とうだけでも十分おかしいわけですが、権利行使価額や新株予約権1個当たり発行する株式数が随時変更になるという条件は
既存株主の保護の観点上問題があるわけです。
それと同じで、優先株式の転換価額が変更になるというのは既存株主の保護の観点上問題があるわけです。
新株予約権付社債を例に出して、株価が権利行使価額を下回った時は社債部分は現金で償還べきだと以前書いたことがありますが、
考え方はこれと同じだと思います。
債権者保護に重点を置けば、優先株式は(どんなに株式数が増えようとも)普通株式へ転換すべきだ、となりますが、
株主保護に重点を置けば、優先株式は(手許現金と株主資本は減少するが)現金で償還すべきだ、となると思います。
さもなくば(=債権者保護と株主保護を両立させたいなら)、優先株式など発行せず、会社は普通株式のみを発行すべき、
という結論になろうかと思います。
優先株式は普通株式に転換した方が何となくよさそうに思えてしまうのは、結局(上場企業なので)各一般株主の議決権割合が極めて小さいため、
他の株主にとっては今更グループ企業が大株主になってもほとんど影響がないからに過ぎないのであって、
本来であるならば株主にとって自分の議決権割合が減少するというのは極めて大きな問題であるわけです。
それも、発行される株式数が不確定であるため自分の議決権割合の減少もどれくらいか不確定であるなど、
将来の議決権行使のことを考えれば、転換価額の修正など株主にはとても容認できない条件と言えるでしょう。
まあその点は置いておいて、皮肉なことに柔軟な転換条項のおかげで、平成25
年8月1日付調整の表を見ると、
第1回A種優先株式、第1回G種優先株式、第2回G種優先株式、第3回G種優先株式、第4回G種優先株式、全てにおいて、
転換価額は例えば本日終値である1,006円とすることは可能なようです。
要するに、1株1,006円で(約)3億8000万株公募増資をすることと、1株1,006円で既存の全優先株式を普通株式へと転換することとは全く同じ
ということになります。
また、自社株買いの是非に関してなのですが、自社株買いにより株主に報いるべきだという意見もありますが、
古典的な資本会計上の結論を言えば、
出資者は現金が欲しいのならそのまま市場で保有している株式を売ればよいだけであって、
会社自身に株式を買ってもらう話ではない、となります。