2013年6月25日(火)



2013年6月25日(火)日本経済新聞
英ボーダフォン、独社買収へ
(記事)




Monday, June 24, 2013
Vodafone Intends To Launch A Voluntary Public Tender Offer For Kabel Deutschland Holding AG
ttp://www.vodafone.com/content/index/media/group_press_releases/2013/kd.html

 

 

【コメント】
カベル・ドイチェランドへの株式公開買付は、英ボーダフォンのドイツ法人が行うようです。
かつて日本にボーダフォンという携帯電話会社があったように、ドイツにも既にボーダフォンの携帯電話会社があるのでしょう。
何が言いたいのかと言うと、ソフトバンクのスプリント株式取得とは異なり、
株式公開買付を行うのは特別目的会社ではない、ということです。
特別目的会社が株式を取得するのか、それとも、既に現地で実際に何らかの事業展開を行っている会社が株式を取得するのか、
の違いは結局のところ大きいのではないだろうか、と思いました。
上手く言えませんが、国をまたいだ株式取得の場合は、法的そして手続き面の理由から現地に設立した特別目的会社が
株式を取得していく形を取らざるを得ないわけですが、
特別目的会社が株式を取得すると聞くと、何か「株式を取得しただけで終わりがち」という印象を持ってしまうのに対し、
既に現地で実際に何らかの事業展開を行っている会社が株式を取得すると聞くと、その両社間で何か新しいことをやろうとしているのではないか、
という前向きな印象を持つわけです。
英ボーダフォンと英ボーダフォンドイツ法人との間にはあまりシナジーはないかもしれません。
しかし、英ボーダフォンドイツ法人と独カベル・ドイチェランドとの間には一定のシナジーがありそうな気がするわけです。
この感覚は株式の取得方法や株式取得の主体が原因ではなく、国をまたいでいるか否か自体が原因なのかもしれませんが、
「経営統合によるシナジーは株式取得のみによっては発生しない。事業と事業との間でシナジーは発生するのだ。」
というふうに思いました。

 

 


2013年6月25日(火)日本経済新聞 一目均衡
小さくなった日本企業
(記事)




2013年6月25日(火)日本経済新聞
三井造船、16年度目標 「非造船」の売上高倍増 海外プラントや海洋開発 統合白紙で構造改革
(記事)



 

【コメント】
>主要市場における主要企業の数は3社が上限


造船業は国家の政策として行わなくなったわけですから論外として、
それ以外の業界も、需要量としては減少し続けることは明らかなわけですから、
各業界にはいわゆる大手企業は最大でも3社が上限になってくると思います。
また、大きな視点て見た場合、そもそもなぜ業界内に競合他社がある方が望ましいのかと言うと、
画期的な新商品やよりよい製品作りや性能・品質改善などを促進する効果があるからなのですが、
何と言いますか、業界によっては「科学技術の観点からもはやこれ以上製品や技術が進歩することは望めないことが客観的に明らか」
という場合あると思います。
例えば、もう20年以上も30年以上も全く技術が進歩しなかった場合は、それが人類の技術力の限界、ということは現にあると思います。
その場合は業界内の大手企業数は2社、もしくは1社のみにした方が現実問題として効率的だということはあると思います。
業界内における企業間の競争が経営戦略の本質であると教科書には書かれてあり、それは一面では確かに正しいのですが、
今の日本のように市場縮小が現在進行形で急速に進んでいて今後もその流れは絶対に止まらないことが明らかな国の場合は、
完全に視点を変えて、企業間で競争をするのではなく、その正反対に、国家を挙げて業界ぐるみで企業同士で縮小均衡点を模索していく、
ということが現実問題として大切になってくるのではないかと思います。

 

 



2013年6月25日(火)日本経済新聞 公告
第38期決算短信
株式会社アレフ
第28期決算短信
三井住友アセットマネジメント株式会社
第54期決算短信
三井食品株式会社
第61期決算公告
新日鉄興和不動産株式会社
(記事)



 

2013年6月25日(火)日本経済新聞 公告
第53期決算短信
プラザアセットマネジメント株式会社
「アジア優良株オープン」、「アジアインフラ関連株オープン」、「アジア消費関連株オープン」の受益者の皆様へ
国際投信投資顧問株式会社
(記事)

 

 



【コメント】
プラザアセットマネジメント株式会社の当期純損失は170,269百万円とのことですが、一体どういう損失だったのでしょうか。
事業内容等から推測して、固定資産減損損失だったのかもしれませんが。
利益準備金も一定額あるとは言え、前期末の繰越利益剰余金(前期末までの毎期の利益の蓄積額)のほぼ8割が吹き飛んでしまっていますが。
仮に損失内容が固定資産減損損失だったのであれば、直接的な現金の流出はなかったわけですが、
過去に設備投資を行った固定資産からは今後資金の回収が不可能になった(だからこそ減損処理したわけです)ことには変わりありません。
内部留保を設備投資に振り向けたがその設備投資からは資金を回収できなかったというのでは経営になりません。
内部留保というと利払いもなく返済も必要なく何か安心して使えるお金と思ってしまいがちですが、
設備投資後の固定資産の稼働状況(生産活動や営業活動等)に関する損益は、何を原資に設備投資を行った場合でも結局同じなのです。
内部留保を原資にしている場合は赤字額が小さくなるというわけではありません。
同じ赤字額なら内部留保を原資にしている場合の方が財務状況全体の悪化具合は小さくて済む、というだけなのです。
負債による資金調達だろうが増資による資金調達だろうが内部留保を原資をする場合だろうが、資金の使途には十分気をつけたいものです。

 

 

 



2013年6月25日(火)日本経済新聞
サントリー食品 公募価格3100円 海外M&Aに2000億円 時価総額1兆円規模
想定価格 18%下回る
(記事)





2013年6月25日(火)日本経済新聞
ビール券
都内金券店 中元需要で2%高
(記事)

 

 



【コメント】
サントリー食品インターナショナルでは、アルコール類は手がけていないそうですが、
株主優待券の一つとして、ビール券を株主に付与するということも一つの株主への利益還元策だと思います。
アルコール類を手がけている法人と清涼飲料類を手がけている法人とは別ですが、
グループ経営戦略の観点からはそういった株主や消費者の囲い込みのようなマーケティング戦略もよいのではないかと思います。

ただ、サントリー食品インターナショナルの株主優待券がビール券だとすると、一つ法概念上の問題が生じます。
それは、株主優待券を発行するのは「サントリー食品インターナショナル株式会社」であるのに対し、
実際に優待の対象となっているビールを製造販売しているのは「サントリー酒類株式会社」である、という点です。
この問題点は、ソフトバンクが付与している「基本使用料6ヶ月無料」という株主優待制度における、
「ソフトバンク株式会社」と「ソフトバンクモバイル株式会社」の関係と同じなのです。
ソフトバンクの株主優待を受ける権利があるのは、上場している純粋持株会社の株主である「ソフトバンク株式会社」の株主であるのに対し、
実際にこのたびの株主優待を受けるのは、法人として完全に無関係である「ソフトバンクモバイル株式会社」のサービスに加入している人、
という関係になっている点が法概念上問題があるのではないか、書いたことがあります。
詳しくは2013年4月18日(木)に書いています。

2013年4月18日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201304/20130418.html

2013年4月18日(木)に書いた「ソフトバンク株式会社」と「ソフトバンクモバイル株式会社」の間の言わば法的なねじれが、
サントリー食品インターナショナル発行のビール券(株主優待券)にもそのまま当てはまるわけです。
さらに言えば、ソフトバンクの株主優待制度の場合は「ソフトバンクモバイル株式会社」が「ソフトバンク株式会社」の完全子会社
であるため、法的な意思決定の整合性を踏まえれば結局問題はないと言えるのに対し、
サントリー食品インターナショナル発行のビール券(株主優待券)の場合は、実は問題がさらに非常に大きく、それは、
「サントリー酒類株式会社」は「サントリー食品インターナショナル株式会社」の子会社でも何でもない、という点なのです。
「サントリー酒類株式会社」と「サントリー食品インターナショナル株式会社」は法的な意思決定の点でも何ら関係がないわけです。
「サントリー食品インターナショナル株式会社」が発行したビール券(株主優待券)を
「サントリー酒類株式会社」が認めない、ということは法概念上はあり得る話でしょう。
なぜなら、「サントリー酒類株式会社」と「サントリー食品インターナショナル株式会社」は資本関係も何もない、全く別の法人だからです。
もちろん、両者はサントリーホールディングス株式会社の下、同じ方向を向いて、グループ企業間でシナジーを発揮すべく、
総合的なマーケティング戦略の立案・実行を行っていこうとしているわけですから、実際にはこの株主優待には何ら問題は生じません。
ただ、法概念上の話になりますが、サントリーのビール愛好家(サントリーのビール券目的で株主になった人)からすると、
自分が株式を保有してもいない会社から株主優待のサービスを受けることになる、という法の主体のズレはあるのではないかと思いました。

 


 


2013年6月25日(火)日本経済新聞
■キリン堂 3〜5月経常益55%増
(記事)





株式会社キリン堂
平成26年2月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://kirindo.irbridge.com/ja/PressRelease/PressRelease-5756385097927491569/TopLink/RedirectFile/130624-1Q.pdf

 



【コメント】
決算短信の2ページ目の注記事項に、

>(3) 会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示
>@ 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 有
>A @以外の会計方針の変更 : 有
>B 会計上の見積りの変更 : 有
>C 修正再表示 : 無

と書いてありましたので、「(3)会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示」を見ておきましょう。

 

(3)会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示
(5/11ページ)

 

 


ここでは「低価法」が一つの論点になるのだと思います。
まず、先入先出法や総平均法や個別法に基づいて棚卸資産の価額を計算します。
そしてそれに加えて、各棚卸資産毎に個別に回収可能な価額を評価・算出します。
この両者を比較して、回収可能な価額の方が小さい場合は、簿価を切り下げていくことになるわけです。
正確ではない言い方かもしれませんが、「原価法に対して低価法を適用する」という言い方をすればいいでしょうか。


上手くまとめ切れませんでしたが、上のキャプチャー画像中の図や下に書いた解説を読んでいただければ、
棚卸資産評価損や低価法とは何か分かるのではないかと思います。
キリン堂の決算短信の文言について一言言えば、従来から低価法を適用してきた場合は、
最終仕入原価法から総平均法へ変更しても、どちらにせよ毎期回収可能な価額まで切り下げている場合は、
この変更による影響額というのは全くなかった、ということも考えられると思います。
影響が生じるとしたら、最終仕入原価法での評価額と総平均法での評価額との間に回収可能な価額が入る場合になると思います。
この点についても、下の方に解説を書いていますので読んでいただければと思います。
また、回収可能な価額が十分に大きい場合も、どちらの方法でも価額を切り下げませんから、この変更による影響はあることになります。

 

 


棚卸資産の評価額に関してですが、貸借対照表価額は収益性の低下に基づき簿価を切り下げ
ているということであれば、それは「低価法」という言い方になるように思います。
ただ、回収可能な価額というのは「個別法」で評価していくことになります。
個別法といっても二種類あると言うと語弊がありますが、回収可能な価額は当然個別に評価・算出
していく他ないわけです(総平均的な回収可能額などありません)。
棚卸資産の評価方法については、本来は仕入値と販売価格とを個別に紐付けて商品を管理し、
損益計算をしていかないといけないわけですが、実務上煩雑になることがありますから、
棚卸資産の価額については総平均法や先入先出法といった簡便な方法が認められている
というだけなのです。

評価額Aと評価額Dを比較する(簿価を切り下げる)ことが棚卸資産評価減です。
評価額Bと評価額Dを比較する(簿価を切り下げる)ことが棚卸資産評価減です。
評価額Cと評価額Dを比較する(簿価を切り下げる)ことが棚卸資産評価減です。
評価額Aと評価額B、評価額Aと評価額C、評価額Bと評価額C、を比較することは棚卸資産評価減ではありません。

 

 


以前は十分採算が取れていたのに、短期間のうちに商品の仕入れ価格が急激に高くなり、
今では採算が全く取れないほど仕入れ価格が上昇してしまったとします。
この時、棚卸資産の評価額は、
評価額A>評価額D>評価額B
となり得るわけです。
評価額Cは、商品をどのように倉庫に収納しどのように販売していったかによって価額は変わります。
個別法による棚卸資産評価額というのは一意に決まるわけですが、
どのような販売方法であったかによって個別法の意味が変わってきますので、個別法というだけでは棚卸資産の評価額は一意に決まらず、
個別法による棚卸資産の評価額は販売方法次第でケースバイケースということになるでしょう。
ここでは販売方法が後入先出法という販売方法にたまたば合致していたとしましょう。
すると、棚卸資産の評価額は、
評価額A>評価額D>評価額B>評価額C
となるわけです。
ここで、棚卸資産に低価法を適用する場合、貸借対照表上の棚卸資産の評価額を評価額Dまで切り下げないといけないわけです。
するとどうなるか。
棚卸資産の評価方法として、先入先出法を適用していた場合は大きな金額の棚卸資産評価減を計上することになり、
棚卸資産の評価方法として、総平均法や後入先出法を適用していた場合は棚卸資産評価減が全く計上されないということになるわけです。
棚卸資産に低価法を適用するといっても、棚卸資産の中身は全く同じなのに、それまでどのような棚卸資産の評価方法を採用していたかによって、
棚卸資産評価減が計上される場合もあれば計上されない場合もある、ということになるわけです。
棚卸資産の中身は全く同じ、そして、棚卸資産の回収可能な金額というのも全く同じなのに、
以前から適用していた棚卸資産の評価方法次第で棚卸資産評価減の金額は大きく異なることになるわけです。
この点について、何か整合性が取れないかのような違和感のようなものを覚える人もいるかもしれませんが、
企業会計は保守主義の原則に重きを置いた会計処理を行っていきますから、
ある評価方法では棚卸資産評価減が計上され、別の評価方法では棚卸資産評価減が計上されない、ということは何らおかしなことではありません。
ここでいう評価額B(総平均法)と評価額C(後入先出法)の棚卸資産価額は、含み益を抱えていると考えればよいかと思います。
企業会計では、含み損は早期に損失計上していかねばならないが、含み益がある分には構わない、と考えるわけです。


棚卸資産の低価法というのは、保守的な会計処理を行っていくことに主眼があります。
回収可能な価額が小さい場合は回収可能な価額まで簿価を切り下げる、回収可能な価額が十分大きい場合は元々の評価額のままでよし、
と考えて会計処理を行っていきます。
棚卸資産の低価法は、棚卸資産の価額に関して言わば二段階の評価を行っている、と思えばよいと思います。