2012年9月5日(水)



2012年9月5日(水)日本経済新聞
有価証券評価損134億円特損に 新日鉄4〜9月に
(記事) 

 



 


平成24 年9 月4 日
新日本製鐵株式會社
投資有価証券売却損の計上及び投資有価証券評価損の戻入に関するお知らせ
ttp://www.nsc.co.jp/news/data/20120904102911_1.pdf

 



 



【コメント】
住友金属は新日鉄から住友金属株式を750億円分購入したわけです(750億円の現金が住友金属から新日鉄へ支払われた)。
その結果、投資有価証券売却損が914億円出たということは、このたび売却した新日鉄保有の住友金属株式の簿価は1664億円だった、
ということになります。
新日鉄、住友金属の仕訳で書けばこうです↓。


新日鉄の仕訳

(現金預金) 750億円           / (住友金属株式) 1664億円
(投資有価証券売却損) 914億円


住友金属の仕訳

(自己株式) 750億円 / (現金預金) 750億円


これらの仕訳は、2012年8月30日(木)に書きました仕訳(の住友金属株式の売買の部分)とは著しく異なるものです↓。


2012年8月30日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201208/20120830.html


新日鉄保有の住友金属株式は一回通期(3月末)の投資有価証券評価損(投資有価証券の減損処理)を経ているかと思いますので、
その後極端に住友金属株価が下落しない限り、売却しても投資有価証券売却損はわずかな額に留まるわけです。
投資有価証券売却損が914億円になったということなどまずあり得ません。
2012年8月30日(木)に書きました仕訳(の住友金属株式の売買の部分)が正しいかと思います
(つまり、住友金属株式売却損は50億円のみ)。
このたびの新日鉄の会計処理について個人的見解を書けば、「固定資産減損損失への税効果会計適用→(適用できるが)適用すべきではない」、
「投資有価証券評価損への税効果会計適用→ある意味永久差異なので適用してはならない(会計基準上適用できない)」、となります。

 


 



また、記事には書かれていませんが、プレスリリースには「平成25 年3月期第2四半期における投資有価証券評価損戻入」
についても書かれています。
これは正確に言うと、新日鉄は四半期会計期間における投資有価証券の減損処理にあたっては、四半期洗替え法を採用していますので、
保有株式の株価の変動や売却とは全く関係なく必ず第2四半期首に第1四半期末に計上した投資有価証券評価損の戻し入れを行います。
第2四半期首には「投資有価証券評価損戻入益」が必ず計上されるのです。
ここで、第2四半期末までに当該株式の株価が十分に上昇したもしくは四半期中に売却したということがありますと、
今度は第2四半期末に投資有価証券評価損が計上されなくなります。
そうしますと、第2四半期の「3ヶ月間」の会計期間で見ますと、四半期損益計算書に「投資有価証券評価損戻入益」が計上されることになります。
ただ、第2四半期の「6ヶ月間」の累計期間で見ますと、第1四半期末の投資有価証券評価損と
第2四半期首の投資有価証券評価損戻入益がそのまま相殺されますので、四半期損益計算書に「投資有価証券評価損戻入益」は計上されません。
日本の制度会計では、第2四半期、第3四半期、第4四半期というと、それぞれ、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間(つまり通期)という
「四半期累計期間」を指す(「四半期」が必ずしも3ヶ月間を意味しない)ことが多いかと思います。
また、四半期決算特有の(会計理論的には間違っている)「四半期洗替法」という会計処理方法が認められていることを考え合わせますと、
このたびの住友金属株式売却に伴い、

>平成25 年3月期第2四半期において、投資有価証券評価損の戻入れが生じました

という言い方をするのはおかしいわけです。
投資有価証券評価損の戻入れは「四半期洗替法」を採用している場合は必ず計上されます。


投資有価証券評価損戻入を翌四半期首に計上する(例えば経理部ではそのような会計処理を会社内部でする)という意味では
「投資有価証券評価損戻入が生じた」と言ってよいと思いますが、
上場企業に義務付けられた決算開示の上では「投資有価証券評価損戻入が生じた」と言うのは間違いです。
制度会計上の四半期損益計算書には「投資有価証券評価損戻入」は出てこないわけですから。


 

 


平成24年9月5日
新日本製鐵株式会社
住友金属工業株式会社
日鐵物流株式会社
住友金属物流株式会社
日鐵物流株式会社と住友金属物流株式会社との統合再編に関する基本合意について
ttp://www.nsc.co.jp/news/data/20120905132644_1.pdf

 

 

 

 

【コメント】
特にコメントはありません。
新日鉄と住友金属合併後、新日鉄住金には物流を専門に手がけている完全子会社が2社あることになりますので
その2社を合併させる、という内容です。
プレスリリースに統合再編方法に関する分かりやすい図が載っています。
物流専門完全子会社2社が合併して「日鉄住金物流株式会社」が誕生しますが、「日鉄住金物流株式会社」は中間持株会社になります
(厳密に言えば中間事業持株会社になるでしょうか)。

 

 

 


平成24年9月5日
新日本製鐵株式会社
住友金属工業株式会社
株式交換に際して交付する株式の内訳について
ttp://www.nsc.co.jp/news/data/20120905132414_1.pdf

 

 

 

 


【コメント】
ていうか、本当に会社法でいう厳密な意味での「株式交換」を行うのでしょうか。
これはいきなり「吸収合併」を行うべきケースだと今でも思っていますが。
「合併に際しても住本金属株式と新日鉄株式を交換する形になるからこれも株式の交換だ」という言葉遊びであって欲しいな、
と今でも思っていますが。
株主総会決議では会社法でいう厳密な意味での「株式交換」を行うことを決議したのに
実際には会社法でいう厳密な意味での「株式交換」は行わず「吸収合併」のみを行った場合(これでも”株式の交換”は行われます)は、
それは法的にはどうなるのでしょうか。
その吸収合併は株主総会決議を経ていないので無効だ、となるのでしょうか(そういえば、吸収合併についても決議を取っていたような・・・)。
いろいろ考えてみますと、結局会社法でいう厳密な意味での「株式交換」は行わずいきなり吸収合併を行うのかな、という気もしますが、
仮に吸収合併が法的に無効となりますと、実務的にはまた二社に戻さないといけないということになるのでしょうか。
もう旧住友金属株主はこの世に一人もいないわけですが。
実際には二社に戻しようがないと思います。
実験してみるわけにはいきませんが、企業法務の実務的には吸収合併が実は法的には無効だった、
という場合どうなるのかは興味があるところです。