2012年3月14日(水)



2012年のIPO市場は、3月15日に上場するライフネット生命がカギを握っている

 

 今月は久しぶりにIPO(新規株式公開)が続く月である。今週はティーライフ(3172)、アイスタイル(3660)、大阪工機(3173)、
来週はエムアップ (3661)、ライフネット生命(7157)、最終週にはベクトル(6058)、
そして4月第1週目にはエイチーム(3662)が予定されている。
 ちょうど先週、札幌証券取引所主催のIPOセミナーにパネリストとして参加させていただいた。2011年のIPO市場を振り返り、
今後の展望やIPO市場の活性化についてディスカッション、というものである。

■近年は質のいい企業しか上場できていない

 その席でも話題になったが、11年は37銘柄がIPOをしたが、うち赤字で上場をした企業はバイオや医療系などに限られている。
ほかの企業は全て黒字だ。かつて、マザーズをはじめ新興市場が開設された当時は赤字でも上場できる、がウリであった。
しかし、現在は医療系以外だと黒字でないと上場は厳しい状況だ。
 やや古いデータで恐縮だが、IPO企業が上場後に赤字になる確率、および売上がマイナス成長(減収)になる確率を計算し、
その毎年の平均値をとったものが以下のグラフである。

(IPO企業の赤字確率、減収確率)

 グラフの見方は、棒グラフ(左軸)がその年に上場した企業が上場後に赤字になる確率、売上がマイナス成長になる確率の平均値である。
折れ線グラフは上場した企業の公開価格でのPERの平均値(右軸)である。
(注:赤字確率、減収確率は、それぞれの企業の上場前3年間の利益率と成長率の平均値と標準偏差から簡易的に算出している。
詳細な内容については『ベンチャーキャピタルによる新産業創造』(中央経済社)11章ご参照のこと。)
 これを見ると、2005年までは赤字になる確率が10%を超えていたものが、2006年以降は低下してきているのが見てとれる。
同様に2005年までは減収確率が20%程度あったものが、2006年以降は低下し2008年には10%程度にまで下落してきている。
これは、近年になるほど赤字になりにくい、あるいはマイナス成長になりにくい企業が上場している状況と言え、
上場の窓口が狭くなっている。
 これは推論ではあるが、2006年1月のライブドア事件以降、証券取引所の上場審査が実質的に厳しくなり、
質のいい企業しか上場させていないのではないかと思われる。

 

 


 各グラフの上に書いてある数値は毎年の上場件数であるが、2008年はそれまでの半分以下であり、2009年、2010年、2011年の
IPO件数もそれぞれ19社、22社、37社と、近年はIPO件数が低迷している。
 これは、以前なら公開できたような企業も、最近は証券取引所や主幹事証券会社が企業の質に慎重になり
公開できない可能性をうかがわせる。実際、前述のように、昨年赤字でIPOができたのは医療系企業のみなのである。

■ライフネット生命のIPOに注目する理由

 そんな中、来週IPOをするライフネット生命は、久しぶりに医療系以外で赤字で上場する企業である。
 IPO市場の活性化は投資家、企業ともに望むところだと思うが、赤字でも上場する企業が医療系以外でも増えてくることになれば、
上場件数も増加するのではないかと思われる。
 ライフネット生命は、公開価格での時価総額こそ400億円強であるが、調達金額が約100億円とIPOの規模としては大きい。
公募価格は仮条件レンジの下限価格で決まったが、この赤字企業の大規模IPOが成功するかどうかは、
今年のIPO市場を占う上ではひとつの試金石になると思われる。
 ただ、ライフネット生命の業績は比較的読みやすい。いかに契約件数を伸ばして他社からシェアを奪うかという事業モデルなので、
流行り廃りがあるわけでもなければ、当たり外れも大きくない。安価な保険商品をネット経由で提供するというシンプル、かつ、
しばらくは存続するであろう事業モデルである。
 それゆえに赤字であっても上場が承認された可能性もある。したがって、ライフネット生命に続いて、
他の業界からも赤字企業がIPOを実現して初めてIPO市場の復活につながっていくと考えるべきだろう。
 近年はあまり芳しくなかったが、IPO銘柄への投資は公募価格での割り当てを受けることができれば、
利益を獲得できる可能性が高い投資戦略である。今年はIPO投資に再び注目してみるのもひとつの戦略である。
(ザイ・オンライン 2012年03月08日(木) 19:00)
ttp://zai.diamond.jp/articles/-/126962

 

 


【コメント】
別に私は関係者ではありませんが、規制産業中の規制産業と言っていい生保におけるネットベンチャーの上場ということで、
どのような値動きになるのかといった点でも注目しています(赤字続きの中での上場という意味でも)ので記事を紹介します。

 

 


2012年3月13日(火)日本経済新聞
苦境に立つ海運 上
運賃低迷、共同運航に活路 余剰解消 なお霧の中
(記事)



 

 

2012年3月14日(水)日本経済新聞
苦境に立つ海運 下
物流の幅広げ成長取り込み 新興国・資源分野を開拓
(記事)

 

 

 


2012年3月14日(水)日本経済新聞 データ分析
国内TOBに勢い 1〜2月、5割増の18件 内需型企業の実施目立つ
(記事)



 

 

2012年3月14日(水)日本経済新聞 公告
発行価格等の決定に関するお知らせ
株式会社ワキタ
発行価格等の決定に関するお知らせ
株式会社サンヨーハウジング名古屋
資本金及び準備金の額の減少の公告
マニュライフ・インベストメンツ・ジャパン株式会社
(記事)

 

 

 


2012年3月14日(水)日本経済新聞
成長融資を2兆円拡大 日銀、追加緩和は見送り
(記事)





2012年3月14日(水)日本経済新聞
日銀 政策決定会合 成長支援へ苦心の一手 政府に取り組み迫る 追加金融緩和は「温存」
円相場、「緩和」憶測で乱高下 一時10ヵ月半ぶり安値
日銀総裁会見の要旨
(記事)



 

2012年3月14日(水)日本経済新聞 社説
日銀頼みの産業支援に疑問
(記事)



 


【コメント】
直接的に融資をするという形で民間企業を支援することが中央銀行の役割ではないと思います。

 

 

 


2012年3月14日(水)日本経済新聞
日航への出資検討 英BA、関係強化狙う
(記事)


 

 


【コメント】
だからまだ日本航空は何もしていないんですよ。
何回言えば分かるのでしょうか。


と誰に言っているんだという話ですが。

 

 

日本航空の株式の再上場など先のまだ先です。

 

 

 



ところで、キャビンアテンダントと言えば、
機内でお茶やジュースを配ったりおしぼりを配って歩いたりして乗客が多いと大変です。
天候が悪く機体が揺れる時など、おしぼりを配る時間の短いですので、手際よく配らないといけません。
「おしぼりでございます、おしぼりでございます」と素早く配っていると、舌が回らずに言い間違えることがあります。
そんな時の乗客の冷静な反応のジョークです(最後だけ私が考えました)。

 

 

CA「おしぼりでございますな」
客「さようでござる」

 


CA「おしぼりでござる」
客「かたじけない」

 


CA「おしぼりでござんす」
客「堪忍したろう」

 

 

 


2012年3月14日(水)日本経済新聞 大機小機
金融規制強化と受託者責任
(記事)



 


【コメント】
米国や欧州の国々の金融規制に関する記事です。
日本のメガバンクで働いている人達(国際業務担当者)にとってはその動向から目が話せない話題かもしれませんが、
私は国際金融規制には関心がなくなりました。
なぜなら、今議論されている各種金融規制は極めて「可変的」だからです。
何か状況が変わるとすぐ金融規制の方が変更になります。
長い目で見ると、結局始めからその規制は守らなくても良かった、といった状態になっています。
一体何のための金融規制なのだろうかと思います。
都合が悪くなると随時変更になる規制、そんなものは規制ではありません。

 


 


2012年3月13日(火)日本経済新聞
旭化成、米医療機器を買収 1800億円、アジア開拓 化学・住宅の継ぐ柱に 救命救急分野 大手
成長期待、異業種参入続く
(記事)



 


2012年3月14日(水)日本経済新聞
旭化成株、一時6%安 米医療機器買収を懸念
(記事)


 

 

2012年3月12日
旭化成株式会社
米国ZOLL Medical Corporationの買収について
ttp://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2011/ze120312.html

 


説明補足資料
ttp://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/ir/library/events/business/120312.pdf

 

 

 


【コメント】
>(1)   本公開買付け実施者
>当社米国子会社の下に設立された買収目的子会社(以下「SPC」)
>本買収のため、当社は、SPCを米国マサチューセッツ州に設立しました。
>本公開買付け終了後、SPCはゾール・メディカル社に吸収合併され、ゾール・メディカル社は当社の連結子会社となります。 


本公開買付け終了後、ゾール・メディカル社はSPCに吸収合併され、ゾール・メディカル社は当社の連結子会社となります。 


の間違いだと思います。

 


買収総額が1812億円に対し連結調整勘定が1500億円程度、というとやはり非常に高く買ってしまった、という印象を受けます。
プレゼンテーション資料によりますと、公開買付価格は、

>※2012年3月9日までの30営業日終値の取引高加重平均株価に対して29.6%のプレミアム

とのことですので、プレミアムだけを考えれば極めて標準的な上乗せ価格だとは思います。
上場している企業を買収しようと思えば30パーセント前後のプレミアムは標準的なのですが、
ゾール社の株価がそもそも非常に高い状態で推移しているということでしょう。
これはゾール社の将来性を株式市場は高く評価しているということなのですが、
逆に言えば、その将来の期待は既に株価に織り込まれている、ということです。
短期売買の場合も長期保有の場合も全く同じなのですが、株式は価格が安い時に買うのが常道です。
ゾール社の将来性は抜群なのかもしれませんが、ゾール社を買収するとなると、
その将来の成長を打ち消してしまうほど株価は高い、という見方ができるのかもしれません。
会計で言えば、ゾール社の個別財務諸表は今後も成長し続けるのですが、
旭化成の連結財務諸表はゾール社の個別財務諸表ほどは成長せず、
連結調整勘定の償却を考えれば連結利益の減少を招きかねない、ということです。

 

 

 



シャープ奥田常務が社長昇格、片山社長は会長に

[東京 14日 ロイター] シャープは14日、奥田隆司常務執行役員(58)が新社長に昇格する役員人事を発表した。
片山幹雄社長(54)は代表権のない会長に、町田勝彦会長(68)は相談役に退く。4月1日付。
2012年3月期に過去最大の2900億円の最終赤字を計上することになり、経営トップの刷新で回復を目指す。
奥田氏は現在、常務執行役員として海外事業を統括している。1978年にシャープに入社し、
03年に取締役AVシステム事業本部長、06年に取締役調達本部長、08年に執行役員海外生産企画本部長を経て、
昨年10月から常務執行役員海外事業統轄兼海外事業本部長。
6月開催の株主総会を経て、奥田氏は代表取締役社長に就任する。町田会長は同総会で取締役を退任する。
(ロイター 2012年 03月 14日 16:39 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPTYE82D04S20120314

 

 

 

2012年3月14日
シャープ株式会社
代表取締役の異動、社長人事に関するお知らせ
ttp://www.sharp.co.jp/corporate/news/120314-a.html

 

 

 


【コメント】
シャープの社長が交代するとのことです。
シャープはお家芸のテレビ事業で大きな赤字を計上する見込みです。
シャープもまた過去の過剰設備投資に苦しんでいます。
キャパシティ過剰になる原因について、以前も紹介しました名著「競争の戦略」(M.E.ポーター)の記述を引用したいと思います。

 


2012年1月7日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201201/20120107.html


>業界全体の生産能力が需要量に満たない場合は、一時的に不つごうはあっても、まず問題にならない。
>その場合は、たいてい新規投資が行われるからである。

 


企業はなぜ設備投資を過剰に行いがちなのか。
その理由は、「以前は仮に設備投資を過剰に行っても結果として過剰設備とはならなかった」、という経験があるからではないでしょうか。
ポーター氏の記述を敷衍すればこうなるでしょう。

 


高度経済成長期においては、業界全体の生産能力が需要量を上回っても、
一時的な在庫増加や商品価格の下落はあっても、まず問題にならなかった。
その場合は、たいてい需要量が自然と増加したからである。

 

 



高度経済成長期であれば、少々設備過剰であってもすぐに需要の方が追いついてくれましたが、
衰退期に入ると、需要が増加するどころか減少してきますから、
わずかな過剰設備であっても重荷になりがちなのです。


マクロ経済で言いますと、インフレは怖いのですがデフレは全く怖くありません。
経営戦略で言えば、過剰設備は怖いのですが過少設備は全く怖くありません。

 

資本集約的か労働集約的か、固定費と変動費の割合はどうか、といった業種業態の違いや生産形態の違いなどから
具体的な数値は全てケース・バイ・ケースですので以下の数値は一つの例えとして理解してもらいたいのですが、例えば、
工場稼働率が70パーセントで売上高が200の企業よりも、工場稼働率が100パーセントで売上高が100の企業の方が利益額は大きい、
といったことは言えるのではないかと思います。
市場の縮小が明らかな日本国内においては、設備はやや過少なくらいがちょうどいいのかもしれません。

 

 



話は変わりますが、経営と会計の関係について考えていましたら、
会計と大学における数学とは何となく類似性があるな、と思いましたので絵に描いてみました。


「数学と会計は類似性がある」



大学でも理系では当然数学の講義はあるのですが、数学科かそれ以外かでは重点の置き方が違います。
数学科の数学の講義は「理論の厳密性」に重点を置いています。
それに対し、数学科以外での数学の講義は応用に重点を置いています。
数学は道具としてしか見ませんので厳密性は重要ではないのです。

会計で言いますと、監査では「会計処理方法や計算規則や各種基準等の厳密性」に重点を置いています。
それに対し、経理部や経営幹部やコンサルタントやファンド等にとっては会計は経営を行うための道具です。
後者にとっては厳密性よりも経営への応用が何より大切なのです。

 

私見ですが、厳密性と応用を一人の人間の頭の中で両立させることは、
人間の能力的に(人間の頭の使い方的に)不可能である気がします。