2011年7月18日(月)
[浜松 18日 ロイター] スズキの原山保人副社長(事業開発本部長)は18日、資本・業務提携している
独フォルクスワーゲン(VW)について「共同開発で具体的に動いているものはない」ことを明らかにした。
原山副社長は、VWが直近の年次報告書でスズキを財務的、経営方針に重大な影響を与えることのできる関連会社として
説明している、と指摘。提携は当初からイコールパートナーの関係であったにもかかわらず、スズキを支配下に置いているような
認識を示すVWに不快感を示した。
スズキとVWは2009年12月に資本・業務提携を発表し、VWはスズキの株式を19.9%を保有することになった。
提携から数カ月間は商品や技術などで密度の濃い話し合いが行われていたものの、10年末ころから現地雑誌で
VWがスズキへの出資比率の引き上げを検討しているとの報道がなされるようになり、イコールパートナーであるという、
もともとの合意事項にも「陰りがでてきた」(原山副社長)としている。
原山副社長は、インドや東南アジアなど新興国で競争が激化している中、「われわれがVWの重大な影響を受けながら、
こうしたマーケットで生き残っていけるとは思っていない」と説明。VW側が両社はイコールパートナーであるとの認識に
改めない限り、具体的な協業は前に進められないとの考えを示した。その考えについては「明確にVWにも伝わっている」と語った。
原山副社長は、社内にも重要市場でやっていくだけの技術開発は進めてきており、必要ならば「まったくの
イコールパートナーとして協力しようという企業は存在している」と述べ、その一例として、伊フィアットから
新型ディーゼルエンジンを調達し、スズキが欧州で販売する新型車に搭載する事例を紹介した。
<4副社長による合議制の経営がスタート>
同社は同日、浜松市で4人の新任副社長の合同インタビューを開いた。原山副社長のほか、国内営業本部長の田村実副社長、
四輪技術本部長の本田治副社長、経営企画室長の鈴木俊宏副社長が出席した。スズキは4月1日付で4副社長が
「経営企画委員会」を組織し、合議制で経営するスタイルに移行した。
鈴木副社長は、経営企画室は東日本大震災の被害を教訓に社内の災害対策を見直すことが最初の仕事だったが、
「危機管理だけでなくスズキが進むべき方向について各部門に横串をさし、議論を活性化させる役割を担っている」と説明。
議論した後の最終決定は4人で行い、「鈴木修会長からは『それでやれ』と言われるだけくらいの形にするのが理想だ」と述べた。
原山副社長は、規模が小さかった頃のスズキは鈴木修会長に集中して情報を集め、迅速に決断していくことが強みだったが、
現在は会長一人で決断していくには企業が大きくなり、事業も多岐にわたっている、と述べた。その上で
「4人が協力して迅速な意思決定を進めていくことが求められている」と語った。
(ロイター 2011年
07月 18日 15:01
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22242120110718
(参考記事)
2011年7月2日(土)日本経済新聞 会社研究
スズキ
『インドの雄』収益踊り場 アジア展開で成長力回復へ
(記事)
【コメント】
>伊フィアットから新型ディーゼルエンジンを調達し、スズキが欧州で販売する新型車に搭載する事例を紹介した。
以前も指摘しましたが、スズキが欧州向けにフィアットからエンジンを調達するということはあり得ないかと思います。
何と言えばいいか、そんなことはする必要がないのです。
お互いにとって何のメリットもないでしょう。
仮にフィアットとスズキが本当に深く業務提携を行っていくとするなら、欧州地区はフィアットが販売を行い、
アジア地区はスズキが販売を行う、といった分業体制になると思います。
わざわざスズキが欧州で自動車を販売する必要はありませんし、フィアットがアジアで自動車を販売する必要もありません。
同じ地区で販売を行うと、シェアを奪い合う結果になるだけでしょう。
スズキが欧州に進出するとしたら、基本的には自社製のエンジンを搭載してスズキの自動車として販売することになるでしょう。
意外に思うかもしれませんが、欧州ではフィアットとは業務提携はできないでしょう。
例えばスズキが日本やインドで新型ディーゼルエンジンを搭載した自動車を販売しようと思ったら、
フィアットから日本やインド向けに新型ディーゼルエンジンの供給を受ける、ということは理屈の上ではあり得るでしょうが。
これはエンジンについても言える事です。
シャーシをどのような形状にし、エンジンをどの場所にどのように搭載するかは車種によって全て異なるのです。
シャーシの設計の段階でエンジンの形状や寸法や重量まで決まってくるのです。
エンジンも車種によって全て異なるのです。
ある車種のエンジンはそのまま他の車種には使えないのです。
エンジンを変えるなら、シャーシからアクセル・ブレーキのメカニズムまで全て作り直しです。
どう例えればよいか分かりませんが、
自動車にとってエンジンは、心臓であるともいえますし脳みそであるとも言えるかと思います。
とにかく自動車にとって一番大切な部分はエンジンなのです。
自動車メーカーは何を製造しているのか、
極端に言えば、自動車メーカーはエンジンを製造しているのです。
そう考えますと、他社からエンジンの供給を受けるというのは多くの意味で非常に難しいのです。
エンジンは車種一種一種毎に細かくカスタマイズしていきます。
それを逐一エンジン供給元に諸元を伝えていくというのは非常に煩雑な作業になってくるのです。
伝達ミスがあってエンジンの仕様が間違っていたらそれこそ事故に直結します。
エンジンとシャーシとは一体不可分と言えば言い過ぎですが、
自動車の乗り心地や加速性能等を一番に決定付けるのはやはりエンジンなのです。
エンジンの開発や製造だけは他社に委ねたくない、というくらい、自動車とはエンジンなのです。
そのエンジンを他社から供給を受けるというのは、自動車の製造販売を他社に任せる、と言っているのと同じようなものです。
率直に言えば、たとえ海外市場であろうとも、エンジンの供給を他社から受けるというのは、
自動車メーカーとして何もしていないのと同じことだと思います。
エンジンの場合も完全に同じです。
シャーシの設計がまず先にできあがり、それからエンジンの細かな仕様を決めていくのです
(もちろん搭載するエンジンを想定しながらシャーシの設計を行うわけですが)。
車種によってエンジンの仕様は全て異なります。
エンジンの共通化(他社からのエンジンの供給)は細かな諸元の伝達が難しいためビジネス的に不可能であるのみならず、
物理的にも、そして自動車メーカーとしてのプライド的にも不可能なのです。
例えば、トヨタがホンダにエンジンを供給することは、車種開発の機動性や柔軟性を考慮すると「できません」し、
たとえそれが自社にとってどんなに有利な条件であっても技術者魂を考慮すると「絶対にしない」と言えます。
自動車メーカーにとって、エンジンを他社から供給してもらうというのは、屈辱とも言えるかもしれません。
世界中のどの自動車メーカーでもそうではないでしょうか。
スズキがフィアットからエンジンの供給を受けるというのは、
スズキの自動車メーカーとしてプライドに反すると思います。
まあですから、何が言いたいかと言えば、
○部品の共通化は不可能
○エンジンを他社から供給してもらうのも不可能
ということです。