2018年12月7日(金)
2018年12月7日(金)日本経済新聞
スチュワードシップ・コード 行動指針 受け入れ拡大 企業基金、統治改革促す
(記事)
「『行動様式』は各指針、『書式』(記載事項)は金融商品取引法、という関係(開示制度の構造)に両者はある。」、
という点について書いた昨日のコメント↓。
2018年12月6日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181206.htm
【コメント】
昨日のコメントでは、企業統治の指針を示す「コーポレート・ガバナンス・コード」は企業が実際に行うべき行動を記している
だけであり「開示」の部分に関しては言及してはいない、という点についてコメントを書きました。
「行動様式」は各指針、「書式」(記載事項)は金融商品取引法、という関係(開示制度の構造)に両者はあるわけです。
この点について何かヒントはないだろうかと英文会計の辞書を見ていましたら、"code
of conduct"という用語が載っていました。
"code of
conduct"とは「行動規範」という意味です。
「コーポレート・ガバナンス・コード」は、上場企業の"code of
conduct"なのだと思います。
そして、金融商品取引法のことは、なぞらえて言うならば、"prescription of disclosure of
results"と表現できると思います。
私の造語になりますが、"prescription of disclosure of
results"とは「結果の開示の法規」という意味です。
証券制度における投資家保護の基礎的手段は「開示」である(金融商品取引法は「ディスクロージャーの法」です)わけですが、
金融商品取引法に基づき発行者に「結果」を開示させれば、発行者に対する実務上必要十分なけん制や抑止になるわけです。
「弊社はこのようなことを行っていきたいと考えております。」という表明は、公民館における単なる「青年の主張」に過ぎません。
「弊社はこのようなことを行いました(行っております)。」という表明こそが、「開示」であり発行者に対する動機付けです。
「結果の開示」は結果として発行者の「行動様式」そのものを変えるのです。
「書式」(記載事項)さえ金融商品取引法で定めれば、発行者はその開示規定を見て「行うべき行動」を自然と理解するのです。
「結果の開示」というのは、発行者にとって、望ましい行動を取るための地図であり磁石であり道路標識でありコーチなのです。
元来の意味合いとは異なりますが、金融商品取引法はこの場面でもまた「開示」によって投資家を保護しようとしているのです。
「コーポレート・ガバナンス・コード」は、金融商品取引法の開示に関する規定の背景を説明しているものだと言えるでしょう。
「スチュワードシップ・コード」もまた、「方針の公表」を機関投資家に第一に要請することで、
機関投資家に対し金融商品取引法と同様の作用をもたらそうとしているのだと思います。
「スチュワードシップ・コード」の7原則の1番目の原則が「方針の公表」であるのには、十分な理由があるのだと思います。
逆に、「コーポレート・ガバナンス・コード」には、「方針の公表」を要請するような記載や原則はないのだと思います。
なぜならば、「方針の公表」を要請するのは、「コーポレート・ガバナンス・コード」ではなく、金融商品取引法だからです。
「弊社は『スチュワードシップ・コード』を受け入れるつもりはありません。」とは今後は次第に言えなくなると思います。
「スチュワードシップ・コード」の本来の意味の要請とは異なるのですが、
「スチュワードシップ・コード」の受け入れが広まれば広まるほど、
「スチュワードシップ・コード」の遵守は実務上強制力を持つものに変わっていくでしょう。
金融商品取引法は本質的に強制力を持ちます。
「スチュワードシップ・コード」は本質的には強制力は持たないものなのだと思います。
「コーポレート・ガバナンス・コード」は、「コーポレート・ガバナンス・コード」そのものには強制力はありませんが、
金融商品取引法という強制力を持った手段を直接的に関連する手段として別途有している、という見方ができるのでしょう。
昨日と今日の議論を行う中で、金融商品取引法に開示すべき事柄として有価証券報告書の「書式」(記載事項)を定めることは、
「気づきを促し自発的な行動を支援する」という点において、比較的新しい言葉で言えば「コーチング」なのだと思いました。
The Financial Instruments and Exchange Act prescribes disclosure
patterns,
whereas the Codes prescribe conduct patterns.
金融商品取引法は開示様式を規定していますが、指針は行動様式を規定してるのです。