2018年11月10日(土)
OECDのウェブサイトを見てみましたが、記事で言及されているリポートは見当たりませんでした↓。
Newsroom (OECD)
ttp://www.oecd.org/newsroom/
By Date (OECD -
Newsroom)
ttp://www.oecd.org/newsroom/publicationsdocuments/bydate/
Financial markets
(OECD)
ttp://www.oecd.org/finance/financial-markets/
参考資料
経済の統合と資本市場の変容〜アジア資本市場の今後を考える〜
(大和総研調査季報 2015年 秋季号
Vol.20)
ttps://www.dir.co.jp/report/research/economics/emg/20151201_010342.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
【コメント】
紹介している記事は、経済協力開発機構(OECD)が地域別の資金調達額の統計を取ったリポートを公表した、という内容になります。
記事には、アジア諸国で新規株式公開が旺盛だったとのことですが、この点について次のように書かれています。
>アジア企業の市場での存在感の高まりや、投資家の関心の高さが浮き彫りになっている。
しかし、上記の記述は、資金調達には@発行者とA取引所とB投資家という3種類の当事者がいることを度外視してしまっています。
結論を先に一言で言えば、経済がグローバル化した今日では、「国別の金額に意味はない。」となります。
「統計上、国別や国籍別の資金調達額に意味があるのは会社が域内(自国内)の株式市場で資金調達をする場合のみである。」
という結論になると思いました。
上記の結論には、自国の株式市場には自国の投資家しか参加できない、という条件も付きます。
つまり、@会社の所在地(会社の国籍)、A上場株式市場の場所(取引が行われる国)、B市場参加者の国籍(投資家の住所)
の3つが全て同じである(同じ国・国籍である)場合にしか、この種の統計には意味がない、という結論になると思いました。
「外国市場への上場」だ「外国株」だ「預託証券」だ「株式の国際取引(国境を超えた株式投資)」だという現在の状況下では、
株式市場の国別や会社の国籍別の統計にはあまり意味がないと思いました。
なぜならば、統計上のそれらの数値はその国固有の数値ではない(つまり、結局複数の国の金額が混在している状態になっている)
と言わねばならないからです。
例えば、キャプチャーしているグラフ「図表1
企業等の発行地別資金調達額(株式と債券発行額合計)」で言えば、
それ以前と比較して2010〜2014年の間に中国市場で資金調達をした企業が非常に多く調達金額も非常に多い、
というのは確かですが(統計上の数値自体は正確なのですが)、
経済が国際化すれば国際化するほど、この統計の意味がなくなっていく(統計がどんどん有意ではなくなっていく)わけです。
中国市場で資金調達をした企業は米国企業であり、中国市場で有価証券を引き受けた投資家は豪州の投資家である、
という場合、「中国で多額の資金調達が行われた」という事実やそこでの金額に特段の意味はないわけです。
どんなに多額の資金調達が中国市場で行われようとも、
中国は発展途上国のままかもしれませんし中国人は貧しいままかもしれないわけです。
「中国で多額の資金調達が行われた」という事実(統計)は、中国の経済発展を意味しませんし中国人の国民所得を意味しません。
逆に、「中国企業は中国市場にしか上場できず外国企業は中国市場に上場できず中国市場には中国人投資家しか参加できない。」、
というような会社制度や証券規制や外貨規制がある場合は、この統計には意味があると言うことになります。
現在では、中国企業が米国市場や香港市場に上場したりしていますし、
中国市場に外国人投資家が参加することも可能になってきているわけです。
経済の国際化とこの種の国別の統計の有意性は完全に反比例するのです。
一般論として、統計が有意であるためには非常に厳しい様々な関連する条件を満たさなければならないわけです。
ただ単に正確に足し算すれば統計として有意だというわけでは全くないのです。
理解のヒントにするために、極端な状況を想定し、図を書いてみましたので参考にして下さい。
「仮に日本で1893年に公共交通手段(飛行機や新幹線等)が完備していた場合」
仮に世界中であらゆる規制やあらゆる障壁が一切ないとしますと、
ある国のある株式市場は日本における1893年の取引所のようになります。
What if the location of a company is Hokkaido,
the stock exchage where the
company is listed is the Tokyo Stock Exchange,
and the address of an investor
who trades it there is Okinawa.
会社の所在地は北海道であり、会社が上場をしている株式取引所は東京株式取引所であり、
取引所で株式の取引を行う投資家の住所は沖縄だとしたらどうでしょうか。
These statistics are significant only when all transactions (all parties) are completed inside a single country.
全ての取引が(全ての当事者が)一国内で完結している場合のみ、この統計は有意なのです。
The extraterritorial listing by an issuer and the international stock
investment by investors
deteriorate the significance of statistics.
発行者による域外上場と投資家による国際株式投資が行われると、統計が有意ではなくなってしまうのです。