2018年10月25日(木)
2018年10月25日(木)日本経済新聞
きょうのことば
デジタルマネー 電子情報のみで支払い
(記事)
2018年10月23日(火)日本経済新聞
地銀6割、現金送金停止 海外向け、マネロン対策強化 店舗絞り込みや上限設定 「甘い国」汚名返上
(記事)
2018年10月20日(土)日本経済新聞 広告
大和証券から円定期預金 秋の特別金利キャンペーンのご案内
銀行代理店 大和証券 Daiwa
Securities
所属銀行 大和ネクスト銀行 Daiwa Next Bank
大和証券株式会社
(記事)
2018年10月22日(月)日本経済新聞
相続分譲渡は贈与 最高裁初判断 遺留分請求認める
(記事)
2018年10月23日(火)日本経済新聞
LIXIL子会社 売却認めず 米中摩擦 影響か
(記事)
2018年10月24日(水)日本経済新聞
LIXILグ株急落 一時17%安 今期業績悪化を嫌気
(記事)
2018年10月24日(水)日本経済新聞
UKCHDに課徴金勧告 監視委、有報虚偽記載で
(記事)
2018年10月15日(月)日本経済新聞
旧経営陣、賠償求め提訴 日興アセット 現社長らに110億円
(記事)
2018年10月12日(金)日本経済新聞
虚偽記載で株価下落 企業賠償額 裁判所に裁量 最高裁判決
(記事)
【コメント】
まず最初に、コメントを書く題材となる記事を計11本まとめて紹介しました。
先週、民事と刑事の違いについて、概念図を計2回描きました。
2018年10月20日(土)のコメントでは、@景品表示法、A独占禁止法、B刑法について概念図を描き、
2018年10月21日(日)のコメントでは、C所得税法・法人税法、D相続税法、E金融商品取引法について概念図を描きました。
今日は、紹介している記事と関係のある法律ということで、F労働基準法とG銀行法について概念図を描きたいと思います。
F労働基準法は労働者保護を目的としており、また、G銀行法は預金者保護を目的としているわけです。
どちらの法律も取引上立場が弱い当事者の利益を保護するために行政が積極的に関与するべきという考え方に立っているわけですが、
労働者と雇用主との関係はあくまで民事(人対人)であり、預金者と銀行の関係もあくまで民事(人対人)なのです。
法律の枠組みとしては、F労働基準法もG銀行法も行政が民事に介入しているもの、と捉えることができます。
それから、「株主が取締役を訴えること」についても同様の観点から概念図を描いてみたいと思います。
現行の規定は調べていませんし、現行の規定を調べることはせずに理論的に考えてみました。
個人的な見解(理論上の考え方)になりますが、「株主が取締役を訴えること」は、
金融商品取引法上は認められますが会社法上は認められない、という結論になるように思いました。
その理由は、会社法上は、株式の譲渡は前提としていないため、「まさに株主自身が取締役を選任した」という関係にありますので、
民法上の「委任の法理」がそのまま株主と取締役との関係に当てはまる一方、
金融商品取引法上は、株式の譲渡を前提としているため、「株主が取締役を選任した」という関係が現実には極めて希薄ですので、
民法上の「委任の法理」が株主と取締役との関係には当てはらないと考えたからです。
会社法上は、会社の創立総会を頭に思い浮かべれば分かりますように、取締役の選任議案は株主自身が作成したと言える一方、
金融商品取引法上は、通常の株主総会を頭に思い浮かべれば分かりますように、取締役の選任議案は結局取締役が作成しており、
金融商品取引法上の株主は(すなわち、市場の投資家は)、会社作成の取締役の選任議案を不可避的に追認するに過ぎないのです。
他の言い方をすると、会社法上は、株主は取締役のこと(性格や経営能力や過去の実績等)を直接的に詳しく知っているのに対し、
金融商品取引法上は、株主は取締役のことをテレビや新聞や雑誌やインターネットや株主総会の会場等でしか知らないわけです。
さらに言葉を換えれば、会社法上の「株主と取締役」との関係はまさに信頼関係であると言えるのですが、
金融商品取引法上の「株主と取締役」との関係は相対的には信頼関係とは異なる側面があるわけです。
英語で表現すれば、会社法上の「株主と取締役」との関係は
"intimate"(親密な、懇意な、個人的な、詳細な、親しい仲、阿吽の呼吸)と表現できるのに対し、
金融商品取引法上の「株主と取締役」との関係は現実には"expectant"(株主は取締役に期待をしている)に過ぎないわけです。
会社法の文脈では、株主は取締役のことを"I
know him."(株主は取締役と個人的に知り合いである。)と言えるのですが、
金融商品取引法の文脈では、株主は取締役のことを
"I know
of
him."(株主には取締役のことを直接ではないが間接的に知っている。)としか言えないわけです。
同じ「株主と取締役との関係」でも、会社法上のそれと金融商品取引法上のそれとは根本的に異なると考えるべきでしょう。
以上のような会社法と金融商品取引法の相違点(「民法上の『委任の法理』は両者の関係に当てはまるか否か?」)に着目して、
H金融商品取引法(訴訟関係)とI会社法(訴訟関係)についても概念図を描いてみました。
概念図を描いていて改めて思ったのですが、「刑事と民事は根本的に異なる。」ということを理解することが大切だと思います。
刑事(行政)は民事には介入しないことが法概念上の原理原則なのですが、現実的な観点から、
取引上立場が弱い当事者を支援する法制度が現実には様々に用意されている(行政が民事に介入している)わけです。
雇用主は労働者に給与を通貨で支払うよう労働基準法で義務付けることもその1つですし、
当事者が訴訟を提起しやすいように「民事上の救済制度」を用意することもその1つです。
行政が所管法律に基づく「民事上の救済制度」を用意するとは、行政が裁判や救済のための根拠条文を用意する、という意味です。
「民事(人対人)と刑事(人対当局)は関係性が根本的に異なる。」
(「労働基準法版」と「銀行法版」と「金融商品取引法版(訴訟関係)」と「会社法版(訴訟関係)」)
注:
労働者は、労働基準法違反を理由に雇用主に対して訴訟を提起することができる旨の規定が労働基準法にあるようです。
これが行政による「民事上の救済制度」です。
注:
銀行法は、預金者保護のために、銀行に対する直接的な行政指導や金融検査を行うことを主眼としており、
預金者を後方支援する趣旨は基本的にはない。
つまり、銀行法に則って預金者が銀行を訴えるという「民事上の救済制度」は銀行法には用意されていない。
他の取引関係とは異なり、通常は、銀行と預金者との間にトラブルが生じることはないと想定されるからであろう。
注:
投資家は、金融商品取引法違反を理由に取締役に対して訴訟を提起することができる旨の規定が金融商品取引法にあるようです。
これが行政による「民事上の救済制度」です。
注:
あくまで理論上の話になりますが、
株主は、会社法違反を理由に取締役に対して訴訟を提起することができる旨の規定は会社法にはありません。
株主と取締役との信頼関係を鑑みれば、委任関係に関連する行政による「民事上の救済制度」は当然に不要である、
との考えがその理由です。
理論的には、雇用主は労働者に給与を通貨で支払わなければならないと厚生労働省が定めることは、民事なのです。
The scope of the nonintervention in civil affairs by the Administration is vague in practice.
行政による民事不介入の範囲には実務上はあいまいなところがあります。
The deterrence of a larceny is criminal affairs, whereas the suspencion of a remittance is civil affairs.
窃盗の抑止は刑事ですが、送金の停止は民事なのです。
An inheritee in life is not able to make a donation nor make a presentation to a potential inheritor.
被相続人は生前に将来の相続人に寄付や贈与はできないのです。
A court is, as it were, a legislative organ in practice.
裁判所というのは、言わば実務上の立法機関なのです。