2018年10月22日(月)



2018年10月22日(月)日本経済新聞
法令の英訳 1割どまり 10年目 遅れ 国際化の壁に ■海外企業から不満の声 ■法務省「要因確保で制約」
関係省庁会議で対象決定 翻訳の手引き、ネットで公開
(記事)





Japanese Law Translation
ttp://www.japaneselawtranslation.go.jp/

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Japanese Law Translation
ttp://www.japaneselawtranslation.go.jp/?re=01

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法令翻訳の手引き(平成30年6月改定版)
ttp://www.japaneselawtranslation.go.jp/rel_info/?re=01

 

 


【コメント】
法務省が「日本法令外国語訳データベースシステム」という法令の英訳ホームページを作成しています。
この法令翻訳は"not official texts"(公式な条文というわけではない。法的効力を有するのは日本語の法令自体である。)、
とホームページの注意書きに書かれてはいますが、英訳そのものは日本政府の「公式英訳」であると考えてよいのだと思います。
「日本法令外国語訳データベースシステム」のトップページ(ttp://www.japaneselawtranslation.go.jp/)にアクセスすると、
英語圏のホームページのように英語で記述されたページが表示されます。
この「日本法令外国語訳データベースシステム」は外国企業による利用を第一に日本政府は考えている、ということだと思います。
「日本で事業を営みたい→日本ではどのような定めとなっているのだろうか→関連する法令を洗い出す→その法令の英訳を読む」、
といった流れで外国企業がこの「日本法令外国語訳データベースシステム」を利用することを日本政府は想定しているのだと思います。
日本企業が日本国内で事業を否む限り、この「日本法令外国語訳データベースシステム」は実務上は必要ありませんので、
外国企業が利用することを念頭に置いている(英語が分かる人が利用することが前提となっている)、ということだと思います。
法的効力という意味では、法律・法令というのはどこまでいっても"domestic"(国内のみ)です。
法律・法令を"international"(国際的な)に利用するということは法律の概念として観念することができないわけです。
この「公式英訳」は、法的効力の点ではあくまで"reference materials"(参考資料)として利用することになるわけですが、
それでも外国企業等による日本国内のルールの理解や日本人による英語の学習には大いに資していると思います。

 



ところで、「日本法令外国語訳データベースシステム」では、
「商品取引所法」という法律の英訳を閲覧している利用者が非常に多い(アクセス数は第2位)、と記事には書かれています。
証券取引法(現・金融商品取引法)は元来は「取引所法」という名称だったなと思ったわけですが
「商品取引所法」について学ぼうと思い検索して調べてみました。
すると、証券取引法と同じように、現行の「商品先物取引法」のかつての名称が「商品取引所法」であることが分かりました。


商品先物取引法(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%95%86%E5%93%81%E5%85%88%E7%89%A9%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%B3%95

>商品先物取引法(しょうひんさきものとりひきほう、昭和25年8月5日法律第239号)は、
>先物取引の適正な運用のためと投資者の保護のための日本の法律である。
>当初は「商品取引所法」という名称であったが、2011年(平成23年)1月1日より、
>海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律(通称、海先法)を併合し、名称は「商品先物取引法」に変更された。


商品先物取引法について(経済産業省)
ttp://www.meti.go.jp/policy/commerce/a00/2010/1026.html

>「商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律(以下、改正法)」が施行され、
>「商品取引所法」の名称が「商品先物取引法」に変更されました。


一言で書きますと、
「商品先物取引法」=「商品取引所法」+「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」
という関係にあるようです。
「商品取引所法」という法律が妙に気になりますので、今日は有価証券の取引に焦点を絞りたいと思います。
証券取引法(現・金融商品取引法)はなぜ昔は「取引所法」という名称だったのだろうかと改めて考えました。
「投資家は証券取引所で株式の取引を行っていたからである。」というのが私が最初に思いつく理由なのですが、
この点について改めて考えてみますと、
「発行者は証券取引所で情報の開示を行っていたからである。」というもう1つの理由に今日は辿り着きました。
「取引所法」も本質的には「ディスクロージャーの法」であると言えると思います。
発行者の観点(発行者に対する規制、情報開示という観点)も証券取引や取引所の役割として本質的に重要だと思いました。
「取引所法」の条文は調べていませんが、昔は証券取引所は財務局の付属施設という位置付けだったのではないでしょうか。
財務局の敷地内・建物内に証券取引所(立会場)が昔はあった、ということではないでしょうか。
財務局と証券取引所は一体的な公的機関であり情報開示も証券取引所内で行なわれていた、
と考えてみますと、証券取引法は昔は「取引所法」という名称だった理由が分かるのではないでしょうか。
@投資家による株式の取引もA発行者による情報の開示も、昔はどちらも証券取引所内で行われていたことであった、
だから、証券取引法は昔は「取引所法」という名称だったのだと思います。
いわゆる「市場集中原則」は、株式の取引だけではなく、情報の開示にも当てはまるものと考えなければならないのでしょう。

 



ウィキペディアの「金融商品取引法」の解説ページには次のように書かれています。

金融商品取引法(ウィキペディア)
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%95%86%E5%93%81%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%B3%95

>1948年に、証券取引法を改正する法律(昭和23年法律第25号)によって、証券取引法(昭和22年法律第22号)を
>全部改正する形で制定された。 株式、公社債、信託受益権などの有価証券の発行や売買、デリバティブ取引に関して、
>開示規制、業規制、不公正取引規制、関連するエンフォースメントなどを規定する。

金融商品取引法の条文(章立て)は、次のように整理ができると思います。

@開示規制→発行者に対する規制
A業規制→証券取引に関連する業務を営む業者に対する規制
B不公正取引規制→投資家に対する規制
C関連するエンフォースメント→規制の実効性確保のための規程

現実的なことを鑑みれば、以上4つのどれもが重要であるわけですが、
元来的・理論的には、最も重要なのは「@開示規制→発行者に対する規制」であるわけです。
なぜならば、市場の投資家は発行者による情報開示に基づいて投資判断を行うからです。
上記のAからCは、付随的・周辺的な位置付けに過ぎません。
金融商品取引法の本質は、やはり「@開示規制→発行者に対する規制」なのです。
そして、「@開示規制→発行者に対する規制」を概念的に「市場法」と呼ぶわけです。
「市場法」には、株式市場の開設だけではなく、発行者による情報開示が本質的に含まれるのです。
以上の考察を踏まえて、証券の取引と証券取引所の関係について、概念図を描いてみました。
この概念図を見ますと、証券取引法は昔は「取引所法」という名称だった理由が分かると思います。
「取引所法」は証券取引所内の活動のみに対して規制を課していたわけなのですが、理論的にはそれで必要十分だったのです。
現実的なことを鑑みますと、証券取引所外の事柄・活動に関しても規制を課すことが投資家保護に資すると考えられますので、
また、証券会社という市場の仲介者も新たに誕生しましたので、
現代の証券取引法(現・金融商品取引法)には証券取引所の周辺にある事柄・活動に対する規制が盛り込まれているのです。
証券取引法が昔は「取引所法」という名称だった理由は、
「投資家は証券取引所で株式の取引を行っていたから」ではなく、「ディスクロージャーにより投資家を保護する。」
という観点・原理から言えば、より本質的には「発行者は証券取引所で情報の開示を行っていたから」なのだと思います。
証券の取引と証券取引所の関係についての概念図の後に、「取引所法」に関するメモを書きましたので、
参考にしていただければと思います。

 

All activities concerning an exchange of securities are completed inside a securities exchange.

証券の取引に関する全ての活動は、証券取引所内で完結しているものなのです。

 


「証券の取引に関する全ての活動は、証券取引所内で完結している。」


【前提】
発行者も投資家も証券取引所内にのみ存在する。
「発行者は開示する。投資家は売買する。」

○証券取引所が株式市場を開設する。
○投資家は株式市場内でのみ株式の取引ができる。
○発行者は証券取引所内でのみ情報を開示する。
○発行者が証券取引所内で開示した情報のみが
 真正の情報である。
○発行者が証券取引所外で発信した情報や
 投資家が証券取引所外で発信した情報は、
 真正であるという保証はない。
○株式の取引を行うためには投資家が証券取引所まで
 実際に赴いて行うというだけであるので、
 元来的には証券取引に証券会社は存在しない。

証券会社は証券取引所外の存在であり、元来的には証券取引の前提ではない。
したがって、「取引所法」には、業法・業規制の規程・側面は全くない。

風説の流布は、証券取引所外で行なわれることなので、「取引所法」の対象外の行為。
相場操縦、仮装取引、なれ合い取引等は、株式の本源的価値に影響は全く与えないので、「取引所法」で禁止される類の行為ではない。

×報道
×教科書
×投資雑誌
×証券投資セミナー
×ツイッター
×噂話
↑上記全て「取引所法」の対象外。
全て証券取引所外での活動に過ぎない。

×発行者の経営陣
×発行者の取引先
×証券取引所外での種々の情報発信
↑上記に関連する事柄も「取引所法」の対象外。
全て証券取引所外での活動に過ぎない。

 



【「取引所法」に関するメモ】


証券取引にある法律は、元来的には「取引所法」のみ(証券取引のインフラストラクチャーは「市場法」のみで構築される)。
その後、市場の仲介者として証券会社が誕生した。
したがって、証券業を営む者に対する規制が必要になったので、市場法に加え業法が制定されることになった。
市場法と業法を統合した新たな法律が「証券取引法」だったのではないだろうか。

「証券取引法」=「取引所法」(市場法)+証券業に対する法律(業法)

その後、証券取引に関連する業務を営む種々の業者が誕生した。
したがって、それらの業務を営む業者に対する規制が必要になったので、証券取引法に加え、
投資顧問業者を規制する証券投資顧問業法や商品ファンド業者を規制する商品ファンド法(商品投資に係る事業の規制に関する法律)
など、さまざまな法令が制定されることになった。
そうした中、2006年になって、証券取引に関連する幅広い業を包含する金融商品取引業の概念が設けられた。
これら複数の法令を統合した新たな法律が「金融商品取引法」ということだ。

「金融商品取引法」=「証券取引法」+「証券投資顧問業法」+「商品ファンド法」+・・・
               =「取引所法」(市場法)+元来の証券業に対する法律(旧証券取引法の業法の部分)
                +「証券投資顧問業法」+「商品ファンド法」+・・・
               =「取引所法」(市場法)+証券業に関連する幅広い諸法律(業法)

「証券取引法」同様、「金融商品取引法」も「市場法+業法」という構成・枠組みになっていることに変わりはない。
「市場というインフラストラクチャーを構築する法律+証券の取引に関連する業者に対する法律」という構成になっている。
ただ、最近では、現実的な観点から、投資家に対する規制も盛り込まれるようになった。
それが「不公正取引の規制」である。
「不公正取引の規制」も広く言えば「市場法」に含まれるとも解釈できるであろう。
ただ、元来的・理論的には、「投資家は不公正取引を行いたくても行えない。」と言える。
なぜならば、投資家による株式の取引は証券取引所内で完結しているからだ。
発行者による情報開示は証券取引所内で完結している以上、投資家による投資判断もまた証券取引所内で完結する。
証券取引所には全ての投資家が参加できるわけなので、他の投資家を欺いたり出し抜いたりすることは原理的に不可能なのだ。
「元来的・理論的・原理的には、証券の取引は取引所内に尽きる。」、
これが証券取引法は昔は「取引所法」という名称だった理由なのだ。