2018年9月24日(月)

東証、10月から売買単位を100株に統一へ

 10月1日から、東京証券取引所で上場する全企業の株式が100株単位で取引できるようになる。
既に9割以上の企業が100株単位での売買が可能となっているが、残りの企業も同日までに変更する。
以前は1千株が主流だった売買単位が下がることで手頃な金額で投資を始められる銘柄が増え、
個人投資家の市場参加をより促す効果もあると期待される。
 東証によると、9月1日時点の全上場企業約3600社のうち、100株単位で取引されている企業は約96%。
現在は日立製作所や住友不動産など140社が1千株単位での売買を採用しているが、
10月1日までに上場廃止を予定している企業を除き、全社が100株単位に移行することを確認したという。
 一般的に株価は1株単位の価格で示される一方、実際の株取引では、まとまった株数で売買が行われる。
東証では上場企業株式の売買に必要最低限の金額について、「5万円以上、50万円未満」が望ましいとする水準を示しているが、
アベノミクスによる株価上昇もあり、株式取得に最低50万円以上かかる上場企業が、全体の7・3%に当たる264社もある。
 10月1日から100株単位の取引にする住友不動産はこれまでの売買単位が1千株。
21日の株価(4087円)を基準にすると、売買には最低408万7千円が必要となる計算だ。
10月からは40万8700円から売買できる。
同社は「これを機会に、より多くの個人投資家の方々も、当社のファンになっていただきたい」と期待する。
 売買単位が統一されることで利便性が高まれば、海外からも投資を呼び込みやすい。
主な海外取引所では売買単位のばらつきが少なく、東証も平成19年から取り組みを進めていた。
(産経新聞 2018.9.23 09:41)
ttps://www.sankei.com/economy/news/180923/ecn1809230004-n1.html


 


売買単位「100株統一」で企業はどう変わる? 個人株主を重視する方向へ

 全国の証券取引所に上場する企業の株式売買単位が、10月1日までに100株に統一される。
東京証券取引所(東証)によると、これまでに9割超の上場企業が100株へ変更した。
株式の売買単位が統一されることで証券会社や個人投資家による誤発注リスクが軽減される。
また、売買単位をそろえることにより株価の比較が容易になるなど利便性の向上が期待される。
 売買単位の統一は2007年から進められてきた。当初は1株や10株、50株など、8種類存在した売買単位は、
14年までに100株と1000株の2種類に集約。15年には上場企業の約70%が100株単位となるなど、移行が進んだ。
 大和総研金融調査部の横山淳主任研究員は「取り組みを始めた10年ほど前と比べると、非常に分かりやすくなった。
ミスの発生が起こりにくくなるなど、非常に意義がある」と指摘する。
 東証によると9月1日時点で単元株式数が100株の上場会社は14年4月から1176社増え、市場全体の96・1%となった。
上場廃止の場合を除き、「10月までにすべて100株単位に変更される見通し」(東証)という。
 売買単位が100株になると、最低投資額は単純に計算すると下がる。このため個人が株を買いやすくなることも期待される。
 堅調な企業業績もあって、個人株主数は増加傾向にある。東証などがまとめた17年度の「株式分布状況調査」によると、
17年度の全国4証券取引所上場企業の株主数合計(延べ人数)は、前年度比166万人増の5272万人。
全体の97%を占める個人株主数は同162万人増の5129万人で、4年連続で増えた。
 個人株主数の増減要因では、上場廃止会社の影響で29万人減ったものの新規上場会社で39万人増、
株式分割・売買単位引き下げ実施会社で74万人増、その他の会社で78万人増となった。
 株式の売買単位が統一されても企業業績が変わるわけではなく、むしろ個人株主の増加は管理コストが増えるなど
課題も出てくるが、「マーケットの混乱を防ぐことで市場への信頼性は高まる」と大和総研の横山主任研究員は話す。
(日刊工業新聞 2018年09月24日)
ttps://newswitch.jp/p/14553

「単元株式数別上場会社数」



The number of listed companies according to a Share Unit.

単元株式数別上場会社数

 

 


「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第1章 コーポレート・ガバナンス
2. 直接的モニタリング
(1) 議決権行使の仕組
一株一議決権原則の変容
会社法と上場規則の関係
グーグルの多議決権株式
「30〜31ページ」 

「32〜33ページ」 

 



有価証券上場規程(東京証券取引所)
ttp://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070007001.html

>(株式分割等)
>第433条
> 上場会社は、流通市場に混乱をもたらすおそれ又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある株式分割、株式無償割当て、
>新株予約権無償割当て、株式併合又は単元株式数の変更を行わないものとする。
>この場合において、単元株式数の変更と同時に行うことにより、株主総会における議決権を失う株主が生じない株式併合は、
>流通市場に混乱をもたらすおそれ又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある株式併合には含まないものとする。
> 一部改正〔平成20年7月7日、平成21年8月24日、平成26年7月1日〕


 


売買単位の統一(日本取引所グループ)
ttps://www.jpx.co.jp/equities/improvements/unit/04.html

「PDF出力したファイル」



>2013年4月1日以降を効力発生日とし、単元株式数(売買単位)の変更を行った全上場会社にかかる情報は、
>以下の一覧よりご確認いただけます。

単元株式数(売買単位)の変更会社一覧(2018年9月21日現在)
ttps://www.jpx.co.jp/equities/improvements/unit/nlsgeu000001nwxu-att/nlsgeu000001nx7a.xls

(ウェブサイト上と同じExcelファイル)



>2014年3月末〜2018年3月末の年度別状況及び2018年3月末の市場別状況を以下に掲載しています。

単元株式数別上場会社数(年度別状況/市場別状況)
ttps://www.jpx.co.jp/equities/improvements/unit/nlsgeu000001nwxu-att/nlsgeu000001nx05.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



【旧大証単独上場銘柄】単元株式数別上場会社数(年度別状況/市場別状況)
ttps://www.jpx.co.jp/equities/improvements/unit/nlsgeu000001nwxu-att/ose_archives.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 

 


【コメント】
日本経済新聞には同じ趣旨・内容の記事は見当たらなかったのですが、目に止まった記事を2本紹介しています。
2018年10月1日(月)から、全国の証券取引所に上場する企業の株式売買単位が「100株」に統一される、とのことです。
株式売買単位が統一されますので、今後は「この銘柄の株式売買単位は何株なのか?」を購入の都度調べる必要がなくなりますから、
投資家にとっては投資の利便性が高まる(「表示されている株価×100」で株式を買うことができる、とすぐに分かるようになる)
と言えるわけです。
当初は株式売買単位が8種類も存在しましたので、購入予定の銘柄毎に、投資家は都度調べないといけなかったのです。
かつては、「表示されている株価が結構低いな。」と思ったら実は株式売買単位が1,000株だった(とても買えない金額だった)、
ということもありましたし、また逆に、「随分株価が高いな。」と思ったら実は株式売買単位は1株だった
(これで買う人いるのかなと思ったら個人投資家でも買えない金額ではなかった)、ということもあったわけです。
従来は投資家は購入予定の銘柄毎に株式売買単位を調べないといけなかったので、
その点では株式投資は実務上は面倒な部分もあったのではないかと思います。
株式売買単位にまつわる発注ミス等(株式売買単位は100株だと思っていたら実は1,000株だった
(株式の購入金額が自分が思っていた金額の10倍になってしまった)等)
も今後はなくなっていくのではないかと思います。
株式売買単位が銘柄毎に異なっているのは、投資家にとって株式投資の利便性を損ねるだけだと言えるでしょう。
株式売買単位は統一するに越したことはないわけです。
さらに言えば、購入の対価という「金額」の面から考えると(投資家は現金を投じて株式を購入するわけですから)、
掲示板(パソコンのディスプレイ等)に表示されている「株価」というのは実は何も表していない、と言えるのです。
投資家は、実際の株式投資のためには、購入金額を自分で都度再計算しなければならないのです。
すなわち、究極的には、株式売買単位は「1株」でなければならない、という結論になると思います。
ただ、今日私がふと思ったのは、「株式売買単位」(株式数)ではなく、「投資単位」(金額)の変動についてです。
紹介している産経新聞の記事には、次のように書かれています。

>以前は1千株が主流だった売買単位が下がることで手頃な金額で投資を始められる銘柄が増え、
>個人投資家の市場参加をより促す効果もあると期待される。

確かに、上記の引用文に書かれていますような効果は現実にあると期待できると私も思います。
しかし、私は、局所的には逆の効果を「投資単位」(金額)の引き下げは生じさせるとふと思いました。
すなわち、「投資単位」(金額)が下がることで手頃な金額で投資を始められる銘柄が増えた結果、
逆に市場から退出する(特定の銘柄を売却し、少なくともその銘柄の売買を今後一切止める)投資家が現れる、
という市場退出効果も局所的には(一部の銘柄には)あるとふと思いました。
どういうことかと言いますと、簡単に言えば、「ステータス」です。
理論的な話では全くなく極めて世俗的な話になりますが、「投資単位」(金額)が大きな銘柄の方が、
そうでない銘柄と比較すると売買の敷居が高い(誰もが気軽に売買できるというわけではない)ので、
株式市場における「ステータス」が高い、というようなことが言えないだろうかとふと思ったわけです。
マーケティング理論ではありませんが、ブランド品やクレジットカードの年会費等も、グレードが高い方が価格が高い、
というようなことが言えると思います。
また、スーパーやコンビニでも、100円のおかしはあまり考えずにカゴに入れますが、
数千円以上する商品は買うか止めるか誰もが迷う(結果、その商品の購入頻度は下がる)わけです。
「投資単位」(金額)が大きな銘柄の方が株式市場における「ステータス」が高い、というようなことが言えるとふと思いました。


 


紹介している産経新聞には次のようなことが書かれています。

> 10月1日から100株単位の取引にする住友不動産はこれまでの売買単位が1千株。
>21日の株価(4087円)を基準にすると、売買には最低408万7千円が必要となる計算だ。
>10月からは40万8700円から売買できる。
>同社は「これを機会に、より多くの個人投資家の方々も、当社のファンになっていただきたい」と期待する。

確かに、これを機会に、より多くの個人投資家が住友不動産株式を気軽に買うようになるでしょう。
しかし、「株式を購入するためには数百万円以上の現金が必要となる。」ということに株式購入者としての「ステータス」を
感じていた投資家は、逆に住友不動産株式を売却することでしょう。
「一部の限られた投資家のみが住友不動産株式のような『投資単位』(金額)が大きな銘柄を取引することができる。」、
ということが一種の「ステータス」であったわけです。
「投資単位」(金額)が大きいことを理由として売買頻度が低く毎日の出来高(取引成立株式数)が低い銘柄は、
その保有者にとって「ステータス」であるわけです。
他の投資家は、「投資単位」(金額)が大きいために、その銘柄を買いたくても買えないわけですから。
全く理論的な話ではなく、極めて世俗的な話ではあるのですが、以上のようなことを思いました。
それから、紹介している教科書の32ページには、「株式売買単位」の変更について、次のような脚注が記載されています。

>東証の上場規則では、株主の利益を侵害するおそれのある単元株式数の変更が禁じられています(上場規定433条)。

最初に引用し紹介していますが、東京証券取引所の有価証券上場規程の第433条を単元株式数の変更に即して簡単に要約しますと、
「上場会社は、流通市場に混乱をもたらす又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある単元株式数の変更を行ってはならない。」、
となります。
「投資単位」(金額)の引き下げに伴う「ステータス」の消失は株主の利益の侵害とはやはり言えないのだろうと思います。
証券投資の理論上は、「投資単位」(金額)の大きさを根拠とする「ステータス」は存在しないと言わねばならないでしょう。
ただ、同じく紹介している教科書の32ページには、「グーグルの多議決権株式」について書かれてあり、
”IPO直後の企業のカリスマ的経営者に対しては、経営権の安定化を認め、自由な経営を継続させたほうが、株主の利益にかなう
という判断によるものと思われます。”と説明されていますが、株式市場では、「理論では十分に説明できないけれども
現実には確かにそういったこともある。」というような現実的対応も同時に考えていかなければならないのではないかと思いました。


Some investors in the market regard an "investment unit" (the amount of each trade of shares)
as a participation barrier in practice.
Concerning a brand with a very large "investment unit," in practice,
only the privileged classes who have affluent financial wherewithals can trade the brand in the market.
To put it simply, a "investment unit" can be a status in the stock market.

市場の投資家の中には、「投資単位」(株式の各売買の金額)を実務上の参入障壁だと考える投資家もいます。
「投資単位」が非常に大きな銘柄に関しては、実務上は、
豊富な資力を持つ特権階級だけが市場ではその銘柄を取引することができるのです。
簡単に言えば、「投資単位」というのは株式市場におけるステータスになり得るのです。