2018年9月22日(土)
【コメント】
記事の最後の部分に次のように書かれていますが、意味がよく分からないなと思いました。
>カギとなるのは、2020年7月12日までに新設される「配偶者居住権」
>居住権には一定の財産価値がある。
>ところが、これは配偶者の保護を目的とするため、本人が亡くなれば「権利は消滅する」
>現時点で居住権の税制上の扱いは未定だが、財産価値がなくなれば相続時に「課税対象から省かれると考えるのが自然」
>配偶者居住権の税制上の取り扱いは早ければ19年度、遅くとも20年度の税制改正で決まることになる。
「配偶者居住権の税制上の扱い(配偶者居住権の税務上の財産価値)」とは一体どういう意味だろうかと思いました。
簡単に言えば、人が居住をする権利に価額はないのではないだろうか(権利としてあるだけなのではないか)と思ったわけです。
最初は記事に書かれてあることの意味がよく分からないなと思っていたのですが、
「どういう意味なのだろうか?」と考えていたのですが、
配偶者が自分が居住する(相続した)家を譲渡する場合のことを言っているのだろうか、と思い当たりました。
そして、配偶者が居住するために夫から相続した家の相続税評価額のことを記事では言っているのかもしれないと思いました。
配偶者が、新設される「配偶者居住権」を行使して居住するための家を相続する場合、
その家の取得原価は配偶者にとっていくらになるのか、という点について記事では解説しようとしているのかもしれない、
と思っているところです。
ただ、「配偶者居住権」を行使して取得するその居住する家の取得原価がいくらになるのかは、
相続税法上まだ規定はない(現時点では未定である、今後相続税法が改正される見通しである)、
と記事では言っているのだと思います。
配偶者が「配偶者居住権」を行使すると、(たとえ子がその家を相続したいと主張しても)配偶者は子よりも優先して
居住する家を相続できる、という取り扱いに民法上はなるのだと思います。
居住する家を、子が相続する場合の相続税評価額と配偶者が相続する場合の相続税評価額とは異なる(後者が当然に低いはずだ)、
というようなことが「配偶者居住権」の趣旨を踏まれば言えるわけです。
その辺りの取り扱いが相続税法にはまだ規定がないため、このたびの改正民法との整合性を取るために、
今後相続税法も改正されることになっている、と記事では言っているのだと思います。
○夫が死亡した場合は妻(配偶者)が全財産を相続する(子は一切相続できない)。
○その際の相続には相続税は一切かからない(配偶者が相続税を支払うことは一切ない)。
○妻は夫の財産の取得原価を承継する(その後の相続財産の譲渡を想定してのことであろうが、夫の財産=妻の財産と考える)。
この話を聞いて「なるほど、それは正しいな。」と思いました。
戦後の家の制度における夫と妻の関係性を鑑みれば、当然に上記のような取り扱いになるわけです。
いつのころからか、夫(父)が亡くなった時にはなぜか子までもが財産を相続できるようになったようです。
「戦後の家の制度における元来の相続」では、子が財産を相続できるのは妻(配偶者、母)が亡くなった時だったわけです。
「戦後の家の制度における元来の相続」から考えると、「配偶者居住権」という考え方はある意味おかしいわけです。
なぜなら、配偶者が居住する家を相続するのは当然だ
(居住する家を配偶者が相続により失うということ自体が元来的には起こり得ない)からです。
また、記事には、「2次相続」や「2度目の相続」という言葉が書かれています。
夫(父)が亡くなった時に子までもが財産を相続できるとなりますと、
確かに概念的・実質的には子は合計2回以上(例えば兄弟がいれば3回以上)親の財産を相続することにはなります。
しかし、相続というのは、あくまで「被相続人から相続人へ」で完結している行為です。
被相続人が異なれば行われる相続も異なると考えるわけです(簡単に言えば、人が死亡すると1回だけ相続が行われるわけです)。
子の立場から見ると、夫(父)からの相続と妻(母)からの相続とは別の相続だ(それぞれ分離・独立した相続だ)、となります。
民法上は「2次相続」や「2度目の相続」という考え方はないのです(相続人は、1人の被相続人からは1回しか相続を行えない)。
それから、日本語の「被相続人」は英語では"decedent"という単語が相当するようです。
"decedent"は、英和辞書には「死者、故人」としか載っていないのですが、「被相続人」という意味があると聞きました。
"ancestor"や"inheritee"という単語でも「被相続人」という意味として十分に通じるようですが、
「相続というのはあくまで被相続人が死亡した時に発生するものだ。」という意味合いを特に強調したい時には、
「被相続人」の英訳としては"decedent"が最もふさわしいということではないかと思います。
Mr.X's spouse inherits an inheritance from Mr.X only one time,
whereas
Mr.X's children inherits an inheritance more than one time in total.
But,
each inheritance has only one decedent in it.
X氏の配偶者はX氏から相続財産を1回だけ相続しますが、X氏の子は相続財産を合計2回以上相続します。
しかし、1回の相続にはただ1人の被相続人しかいません。