2018年7月25日(水)
2018年7月10日(火)日本経済新聞
近畿全10行、貸出金利息が減少 「大阪金利」で地銀苦境 越境で低金利競争過熱
(記事)
2018年7月19日(水)日本経済新聞
審査「引き伸ばしでない」 公取委委員長 長崎地銀統合めぐり
(記事)
2018年7月19日(水)日本経済新聞
金融庁20年 当事者に聞く
佐藤隆文 元金融庁長官 地域金融、優劣の可視化を
(記事)
2018年7月24日(火)日本経済新聞
金融庁20年 当事者に聞く
冨山和彦 経営共創基盤CEO 地銀存続
統合こそ有効
列島発
埼玉りそな銀 池田一義社長 増える預金、運用力生かす
(記事)
2018年7月25日(水)日本経済新聞
信金、過半の18で本業減益 人口減
融資増に足踏み 九州・沖縄の前期 有価証券の運用拡大も
各信金、経費削減は進むが・・・ 生産性向上 これから
(記事)
【コメント】
金融行政における護送船団方式というのは、金融機関の貸出金利と預金金利を金融当局が決定する、
という金融規制であったわけです。
この銀行に預金をすれば他行よりも高い金利が付く、ということはありませんでしたし、
この銀行から借り入れれば他行よりも低い金利で済む、ということもなかったわけです。
銀行法の規定と金融当局から適宜発表される通達が護送船団方式の基盤となっていたわけです。
貸出金利と預金金利との差(スプレッド)はどの金融機関でも共通であったわけです。
では、金融機関が受け取る貸出金の利息と金融機関が支払う預金の利息はどの金融機関でも同じであったのかと言えば、
一言で言えば、金融機関毎にそれらの金額は異なっていたわけです。
その理由は、金融機関毎に預金者の人数と預金の金額は異なっていたからであり、
金融機関毎に貸出先の会社数と貸出金の金額は異なっていたからであるわけです。
簡単に言えば、いくら利率(割合、interest)を共通化しても預金と貸出金それぞれの金額(元金、principal)が異なりますと、
自ずと受取貸出金利息の金額と支払預金利息の金額は金融機関毎に異なってくるわけです。
論理的には、たとえ「貸出金利(利率)>預金金利(利率)」であっても「受取貸出金利息の金額<支払預金利息の金額」となる、
ということは全く考えられることであるわけです。
「受取貸出金利息の金額<支払預金利息の金額」である場合、その金融機関は完全に赤字であるわけですが、
たとえ「受取貸出金利息の金額>支払預金利息の金額」であっても、行員の給与等や本支店の減価償却費等や一般管理費等を
控除すれば赤字になる、ということは十分にあり得ます。
金融機関の「受取貸出金利息の金額−支払預金利息の金額」が一般の会社でいう「売上総利益」に該当するわけですが、
たとえ「売上総利益」が黒字でも販売費及び一般管理費を控除すれば赤字、ということは全く起こり得ることであるわけです。
そうしますと、金融当局が金融機関を一行も潰さないことを金科玉条にするならば、
必然的に金融機関の販売費及び一般管理費をも金融当局が決定しなければならない、ということになるわけです。
金融当局は当時、箸の上げ下げまで指導すると言われたものですが、
金融機関の販売費及び一般管理費を現実にどの程度まで決定できたのだろうか、とふと思いました。
行員の給与等は決定できるように思いますが、では採用し雇用する銀行員の人数は金融当局が決定していたのでしょうか。
本店や支店の規模毎に労務を行う行員の人数に行政上の制限があっても、理屈ではおかしくないと思いました。
水道光熱費も、本店や支店の規模毎に支出金額を一定以下に抑えるようにとの行政指導があっても、
理屈ではおかしくないと思いました。
本店や支店の減価償却費はどうでしょうか。
減価償却費を管理するためには、本店や支店を取得する(新規に開設したり建て替えたり改装をしたりする)時点で
前もって十分な管理を行わなければならない
(減価償却費は典型的な固定費であり、固定資産の取得後は減価償却費を変更させることはできない)わけです。
そうしますと、本店や支店の開設や建て替えや改装に要する金額を金融当局は管理しなければならないことになります。
金融機関が支店を開設するのには金融当局の許可がいる、というような話を以前に聞いたことがある気がします。
また、これは金融行政ではなく公共交通に関する規制や行政になりますが、
バス会社がバス停の位置をわずかでも移動させる場合は建設省の許可がいる、というような話を以前に聞いたことがあります。
こうやって考えてみますと、金融当局は金融機関のほとんど全てのことを管理・指導しようと思えば現実にできるわけです。
しかし、いくら金融当局が金融機関の全てのことを管理・指導しても、管理できないことがあります。
それは、貸出先の意向・思惑(需要者の行動)であり預金者の意向・思惑(供給者の行動)です。
貸出先に関しては、「借入金利は全く同じなのでこの金融機関からではなくあの金融機関から借り入れてくれませんか?」
というような何らかの仲介・斡旋が現実には可能かもしれません(金融機関間の受取貸出金利息の平準化、偏りをなくすこと)が、
預金者に対し「預金の金利は全く同じなのでこの金融機関ではなくあの金融機関へ預け入れてくれませんか?」
とは金融当局は言えないわけです(既存の預金の他行への移転を預金者に対し依頼をするというのも同様におかしいわけです)。
金融当局は、あくまでも金融機関に対する監督当局であり、預金者に対する監督当局ではないからです。
「貸出先の会社数<<預金者の人数」であり「貸出先1社当たりの貸出金の金額>>預金者1人当たりの預金の金額」です。
預金者の生活や利便性(家の近くに支店やATMはあるのか等)を鑑みれば、預金の他行への移転は現実には極めて難しいのです。
また、金融機関間の受取貸出金利息の調整を目的として、たとえある貸出先に他の金融機関を仲介・斡旋することを考えても、
その貸出先の調整は十分な借入人(需要者)がいることが前提となっているわけです。
資金を借り入れる必要が全くない会社に対し、「受取貸出金利息が不足しておりこのままでは赤字なってしまいますので、
あの金融機関からお金を借り入れてくれませんか?」、とは金融当局は言えないわけです。
金融機関の行員の給与等や従業員数や水道光熱費や減価償却費やマスコットや支店の出店計画や貸出先の融通・調整を決定することは
金融当局にはできるわけです。
もちろん、貸出金利と預金金利を決定することも金融当局はできます(護送船団方式の中心にある行政上の決定事項でしょう)。
しかし、銀行業のまさに中核部分の収益と費用である「受取貸出金利息の金額」と「支払預金利息の金額」を決定することが
金融当局にはできないわけです。
確かに、借入人(需要者)が十分にいる場面では、各金融機関の「受取貸出金利息の金額」を決定できますが、
借入人(需要者)が十分にいない場面では、「受取貸出金利息の金額」を金融機関間で融通・調整することはもはやできないのです。
地方を中心とした金融機関の昨今の経営統合では、借入人(需要者)が十分にいないことが理由となっているわけです。
金融機関間で競争が一切なくても(金融当局が金融機関の全てを調整・指導しても)、需要次第で金融機関は赤字となるのです。
極端なことを言えば、県内の「貸出市場シェア」が100%でも、金融機関は赤字になり倒産するのです。
銀行業は、他の業種業界とは異なり、新たな需要を生み出すことが、本質的に・規制上(特に預金者保護上)全くできないのです。
いわゆる市場シェアが競争規制上問題となるのは、会社は他の事業をも営み得る、ということが理由ではないでしょうか。
「その会社は他の事業を営むこともできるのだから、それ以上の市場シェアの追求は消費者の立場から見て望ましくないので、
今以上の市場シェアの拡大は認めない。その代わり、会社は他の事業を営むようにしなさい。他の事業を営むのは自由です。」、
というのが競争規制の背景なのではないでしょうか。
会社を倒産させることが競争規制の目的ではないはずです。
そもそも、競争規制というのは、当局による「供給力の調整」の役割があると言えるわけです。
企業自身による供給調整力が強過ぎます(価格の吊り上げを簡単に行える等)と、結果、消費者の利益を害する恐れがあるわけです。
そこで、消費者の利益を保護するべく、競争規制当局が企業の供給力を調整するわけです。
翻って、銀行業のことを鑑みますと、金融当局は始めから金融機関の供給力を調整できるわけです。
それどころか、伝統的には、金融機関の供給力(貸し出し)を調整することこそが金融当局の役割であるわけです。
最も需要が大きい頃は、総量窓口規制といって、金融当局は極めて直接的に金融機関に対して貸し出しを指導していたわけです。
銀行業に関しては、金融当局が始めからその役割を果たしている以上、他の行政上の指導は一切必要ないのです。
つまり、地方を中心とした金融機関の昨今の経営統合の問題に公正取引委員会(市場シェア)は全く関係がない、ということです。
いわゆる競争規制は、争点となっている事業以外の事業を企業は営むことができる、
ということが理論上の前提(すなわち、競争当局による措置や命令の根拠、企業行動を束縛できる理由)となっているのです。
Even though the financial authorities determine interest rates and salaries
of employees,
a bank doesn't always go into the black and on the contrary
sometimes goes into bankruptcy.
For the financial authorities can't generate
a demand by any means.
たとえ金融当局が金利と従業員の給与を定めることにしても、
銀行は必ずしも黒字になるとは限りませんし、それどころか、倒産することもあります。
というのは、金融当局はどうやっても需要を生み出すことはできないからです。
Regulations in general play a role not as an accelerator but as brakes
only.
規制というのは全般的に、アクセルとしてではなくブレーキとしての役割しか果たしません。
In theory, what you call "competition regulations" presuppose the fact
that a company is able to
operate businesses other than the business at issue
discussed by the competition regulatory authorities.
理論上は、いわゆる「競争規制」というのは、
競争規制当局により議論がなされ争点となっている事業以外の事業を営むことができる、
ということが前提となっているのです。
Companies in general are able to operate plural businesses
simultaneously.
But, the bank only is able to operate one single business
only (i.e. the banking business).
The reason for it is "depositor protection"
in its bankruptcy.
会社というのは全般的に言って、複数の事業を同時に営むことができます。
しかし、銀行だけは、唯1つの事業しか営めないのです(すなわち、銀行業のことです)。
その理由は、銀行倒産時の「預金者保護」なのです。