2018年3月2日(金)
【コメント】
企業が顧客に対して発行するポイントに関する会計処理についての記事になります。
少し長くなりますが、記事の前半部分を紹介します。
>NTTドコモは顧客に付与する共通ポイントサービス「dポイント」について、
>2019年3月期から一部を売上高に相当する営業収益から差し引く会計処理にする。
>従来の米国会計基準では顧客に付与した時点ですべて営業費用として計上していた。
>ドコモは19年3月期から国際会計基準に変更する。dポイントの付与により、営業収益が数百億円押し下げられる可能性がある。
>内容によって営業費用に計上するか売り上げから差し引くか、細かく決める方針だ。
>また顧客が自ら獲得したdポイントを使った場合、使用分はドコモの収入として計上する。
>ローソンや高島屋など提携する店舗での利用時の会計処理は今後詰める。
記事を読んで、企業が顧客に対して発行するポイントに関する会計処理に、絶対的な会計処理方法はないようだ、と思いました。
米国会計基準では顧客に付与した時点ですべて営業費用として計上するという会計処理方法を行う一方、
国際会計基準では付与した金額を売上高から差し引くという会計処理方法を行うようです。
また、日本基準における議論ではなかったかと思いますが、
発行したポイント全額ではなく、将来使用されると合理的に見積もることができる金額分についてだけ
営業費用として計上する(さらには、他の会計処理方法としては、その金額分だけを売上高から差し引く)、
という会計処理方法も考案され、実際にそのような会計処理方法を実務上行っている企業もあるかと思います。
企業が顧客に対して発行するポイントに関しては、本当に非常に多くの種類の会計処理方法が考えられるように思います。
企業が顧客に対して発行するポイントに関する会計処理方法については、
私も過去何回かコメントを書いたことがあるかと思います。
今日改めてこの論点について考えてみたのですが、結局のところ、私が今考える最も望ましい会計処理方法は、
「企業が顧客に対して発行するポイントに関しては、何らの会計処理も行わない。」となります。
ポイントが使用される際、特に「顧客が企業に対して支払う対価」に着目してみますと、
結局のところ、「顧客が企業に対して支払う対価」は「正規の金額−ポイント使用分」となるわけです。
これは結局のところは、値引販売と同じことであるわけです。
顧客は、ポイントを使用することで、正規の価格よりも値引された価格で買うことができる、という状態であるわけです。
顧客は、ポイントを保有していると、ポイントの使用を通じて企業に対し値引きを請求することができるわけです。
しかし、その「値引きを請求できる権利」は会計事象ではないわけです。
一般的な取引で言えば、「目的物の引渡し」は会計事象ですが、「目的物の引渡しの約束」は会計事象ではないことと同じです。
売買は会計事象ですが売買契約は会計事象ではないのです。
したがって、「値引きを請求できる権利」は、会計事象ではないので、会計処理の対象外なのです。
大学生の時、某大手家電量販店で発行されるポイントについて、「ポイント使うと値引されていることと同じなんだよね。」
という話を何気なくしたことがあるのですが、いみじくも、顧客から見るとポイントは「値引きを請求できる権利」なのです。
そして、記事を読んで思ったのですが、ドコモが発行したdポイントはローソンや高島屋などの提携する店舗でも使用できる、
ということで、顧客の立場からすると、顧客はドコモ以外に対しても「値引きを請求できる権利」を行使できるわけです。
こうなりますと、その際のドコモの会計処理方法はと言われても、答えはない(取引を仕訳に反映させる方法がない)わけです。
結論を言いますと、ポイントの付与は、マーケティング上有効な販売戦略(顧客の囲い込みに功を奏する)というだけであり、
その際の「値引きを請求できる権利」の付与に関しては特段会計処理を行う必要はない、となると思います。
企業は、ポイントが使用された時に、顧客から受け取った対価(現金)を売り上げとして計上すれば、それで必要十分なのです。