2017年12月3日(日)
2017年12月2日(土)日本経済新聞
JDIの現金収支 資料で異なる計上区分 投資家に戸惑い
(記事)
JDI、現金収支で異なる開示 四半期報告書と説明会資料
ジャパンディスプレイ(JDI)の現金収支(CF)についての開示が資料によって異なり、
投資家の一部に戸惑いの声が出ている。法定開示の四半期報告書と任意の決算説明会資料では、
設備投資のためにあらかじめ顧客から受け取る「前受け金」の計上区分が違っており、営業CFなどの数値にズレが生じている。
4〜9月期の説明会資料では顧客から受け取る前受け金の影響(356億円の減少)を財務CFに反映した。
本来なら営業CFに計上するが、「前受け金を長期性負債とみなした。
借入金に近いと考えれば財務CFの方が実態に合う」(JDI)と主張。この結果、営業CFは308億円のプラスと表示されている。
しかし、四半期報告書では前受け金を営業CFに計上し、営業CFは48億円のマイナスとなっている。
JDIが「印象を良くするため、説明会資料はCFの計上区分を変えたのでは」(市場関係者)とのうがった見方も出ている。
(日本経済新聞 2017/12/1
20:30)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO2415359001122017DTA000/
2017年11月8日
株式会社ジャパンディスプレイ
平成30年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1529042
2017年11月8日
株式会社ジャパンディスプレイ
2017年度
第2四半期決算説明会
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1529047
2017年11月9日
株式会社ジャパンディスプレイ
2018年3月期
第2四半期報告書
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=2606289
「四半期連結キャッシュフロー計算書」
(18/24ページ)
「四半期連結貸借対照表」の「負債の部」↓
(15/24ページ)
証券取引所の規則に基づく(半法定の)開示(「平成30年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」)↓
「四半期連結キャッシュフロー計算書」
(13/14ページ)
「四半期連結貸借対照表」の「負債の部」↓
(10/14ページ)
任意開示(「2017年度 第2四半期決算説明会」)↓
「四半期連結キャッシュフロー計算書」
(8/13ページ)
「連結貸借対照表」の「負債の部」↓
(7/13ページ)
【コメント】
紹介している2017年12月2日(土)付けの日本経済新聞の記事(=「2017/12/1
20:30」付けの日本経済新聞の電子版の記事)は、
全体的に書かれている内容がおかしいわけなのですが、会計の観点から言えば、紹介している記事で論点となっているのは、
「『前受金』勘定はキャッシュフロー計算書ではどの区分に計上するべきなのか?」、という点になります。
記事に書かれている内容を確認するために、法定開示(「2018年3月期
第2四半期報告書」)、
証券取引所の規則に基づく(半法定の)開示(「平成30年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」)、
そして任意開示(「2017年度
第2四半期決算説明会」)の3つの開示資料から、
「前受金」勘定が記載・計上されている部分をキャプチャーしてみました。
確かに、任意開示(「2017年度
第2四半期決算説明会」)に記載されているキャッシュフローの状況だけが、
他の開示資料に記載されているキャッシュフローの状況と大きく異なっています。
そして、任意開示(「2017年度
第2四半期決算説明会」)の8/13ページには、次のように書かれています。
>注:「前受金」を長期性負債とみなし、財務キャッシュフローに含めています。
>※1 運転資金 =
売上債権+たな卸資産+仕入債務+未収入金、
まず、会計上の結論(定義や定義から導かれる理論上の帰結とすら言っていいと思います)から書きますと、
「前受金」勘定は、キャッシュフロー計算書上は「営業活動によるキャッシュフロー」の区分に計上しなければなりませんし、
貸借対照表上は「負債の部」の「流動負債の部」の区分に計上しなければなりません。
その理由は、一言で言えば、「正常営業循環基準」です。
「前受金」勘定は、企業の営業活動(企業の主たる営業目的の取引)から生じるものであり、
会計上・財務上は言わば「マイナスの売上債権勘定」と表現できる勘定科目であるわけです。
一言で言えば、営業活動以外で前受金勘定が計上されることはない(だから「営業活動によるキャッシュフロー」の区分に計上)、
と言っていいわけです。
また、同様の理由により、たとえ「前受金」勘定が収益の認識に伴い売上勘定に振り替えられるのが
期末日時点から見て1年以上将来のこと(目的物の引渡し期日や役務の提供の完了期日が1年超後のこと)であるとしても、
「正常営業循環基準」に従い、「前受金」勘定は常に「負債の部」の「流動負債の部」の区分に計上しなければなりません。
「前受金」勘定を長期性負債(長期借入金のようなもの)とみなすことなど理論上も実務上もできませんし、また、
「前受金」勘定の増減額を財務キャッシュフローに含めて計上・計算することなども理論上も実務上もできないのです。
任意開示(「2017年度
第2四半期決算説明会」)の資料の8/13ページの注記を修正・加筆しますと、
「運転資金」の計算式は、より正確には次の計算式になります。
運転資金 = 売上債権+たな卸資産−仕入債務−前受金+前払金
「未収入金」勘定は、通常の取引(営業活動)以外の取引に基づいて発生した未収金額を表示しているわけなのですが、
運転資金の計算上重要なのは「正常営業循環」の概念・考え方になりますので、
運転資金の計算式に「未収入金」勘定が出てくるのはおかしいわけです(そもそも売上債権勘定自体が未収金勘定なのです)。
逆に、営業取引における債権債務の前払いや前受けまでも運転資金の計算式に包含したいならば、
営業活動に基づき認識・計上される「前受金」勘定と「前払金」勘定を計算式に加減する、ということをしなければなりません。
通常の取引(営業活動)以外の取引に基づいて発生する未収・未払・前受・前払を運転資金の計算式に反映するのは、
率直に言えば間違いなのです(運転資金の計算とは、経常的な資金需要を算出しようとするものです)。
蛇足になりますが、ジャパンディスプレイと聞きますと、液晶テレビを思い浮かべるかと思います。
液晶テレビと聞きますと、シャープを思い浮かべます。
シャープについては次のような記事がありましたので紹介します↓。
2017年12月1日(金)日本経済新聞
シャープ 今月7日に東証1部復帰
(記事)
2017年11月30日
シャープ株式会社
東京証券取引所市場第一部への指定承認に関するお知らせ
ttp://www.sharp.co.jp/corporate/ir/pdf/2017/171130-1.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
If you enter a company, you lead a life, and you enter another company,
you lead another life.
ある会社に入社すればある人生を送りますし、別の会社に入社すれば別の人生を送ることになります。