2017年9月30日(土)



2017年9月29日
オリックス株式会社
オリックス自動車株式会社
長崎県内初、長崎銀行と商用車両の「動産担保融資」で提携
ttp://www.orix.co.jp/grp/news/2017/170929_ORIXJ.html
ttp://www.orix.co.jp/auto/press/pdf/release_170929.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



 


【コメント】
今日は、「動産の担保」について一言だけコメントを書きたいと思います。
担保の目的物と聞きますと、通常は不動産を思い浮かべるわけですが、
最近では、動産を担保の目的物とすることができるようです。
動産を担保とする際には、「動産譲渡登記」と呼ばれる制度を活用することになるようです。
通常は、動産は占有のみにより所有権が発生する(所有権を有するのに他の要件は必要ない)と考えるわけなのですが、
それだけでは動産を担保の目的物とすることができませんので、占有の状態とは無関係に「誰が動産の所有権を有しているのか」
を登記簿で一意に明らかにする手法が近年になり考え出され、そして実際に「動産譲渡登記」制度として活用されているようです。

 



私はここで、法理的な観点から、「担保の目的物」の条件について考えてみました。
まず思い付いたのは、目的物が「遺失しない」ことと「損壊しない」ことです。
担保期間の最中に目的物が遺失してしまっては、担保の意味自体がなくなってしまいますし、
担保期間の最中に目的物が損壊してしまっては、たとえ目的物を取得しても債権者は十分な弁済が受けられなくなってしまいます。
考えてみますと、「遺失しない」目的物としては、土地と建物と常識的には非常に大きな機械・設備類等等ということになる
かと思いますが、「損壊しない」目的物となりますと、もはやこの世には土地くらいしかない、ということになると思います。
「損壊しない」とは他の言い方をしますと、時間が経過しても「価値が減少することがない」、という意味になると思います。
頑丈な鉄筋コンクリートで作られた建物でさえ、倒壊などはしないにしても、時間の経過と共に価値は下落していくわけです。
その意味において、本来的・元来的な担保の目的物というのは、やはり「土地」のみということになると思います。
土地というのは、更地に戻しさえすれば、上に何を建てどんなに時間が経過しても、必ず元の価値に戻るのです。
法理的な観点から言えば、「担保の目的物」の条件を全て満たしているのは、この世に「土地」だけということになると思います。
考えてみますと、動産というのは「担保の目的物」の条件を最も満たしていない資産であると思います。
動産というのは、現実には、遺失もしますし損壊もするからです。
さらに言いますと、「担保を設定するそもそもの目的」という点について考えてみますと、
その目的というのは、一言で言えば、「債務の履行を強制すること」であるわけです。
すなわち、債務者が債務を履行しない場合は債権者は強制的に目的物の取得ができなければならない、ということになるわけです。
そうしますと、担保の目的物が動産の場合、債務者が債務を履行しない時は、法務局にある動産譲渡登記ファイルでは、
動産の所有権者は債権者となっているでしょうが、実際には動産(目的物)は債務者が占有したままにできてしまうわけです。
これでは担保の意味が全くないわけです。
債務を履行しない債務者は現実には目的物も引き渡しはしないでしょうから。
動産というのは占有してこそ意味があるのです。
占有こそが動産の本質なのです。
逆に、土地というのは、占有が難しいわけです。
むしろ、土地は占有が難しいからこそ登記制度が考えられた、と言っていいわけです。
土地は占有が難しいからこそ、担保という制度が成り立つ(担保の目的物となり得る)、とすら言っていいのかもしれません。
債務不履行が生じた時、別途債権者は引き渡しを債務者に請求しなければならない、というのは全く担保ではないのです。
自動車(動産)が担保の目的物の場合、車両そのものは取得できても、債務者が車の鍵を債権者に渡さないかもしれません。
その時、「これがほんとのキーレスエントリーだ。」("It's truly a keyless entry.")と債務者は開き直ることでしょう。



In theory, an asset which is pledged as collateral presupposes that it is never lost and is never damaged.
And, concerning a collateral, ownership of an object is determined "uniquely" only by a register independent of occupancy.
The meaning of "uniquely" in this context includes "compulsorily" or without any further negotiations with an obligor.

理論的には、担保として提供される資産というのは、決して遺失することもなければ決して損壊することもない、
ということが前提になっているのです。
そして、担保に関して言えば、目的物の所有権は占有とは無関係に登記簿のみによって「一意に」決まるのです。
この文脈における「一意に」の意味には、「強制的に」、すなわち、債務者とさらなる交渉は一切行うことなしに、
という意味が含まれるのです。