2017年9月28日(木)
2017年9月28日(木)日本経済新聞
ニトリ、為替予約が下支え 3〜8月経常益は2%減 通期は31年連続増 70億円の増益要因に
(記事)
【コメント】
今日は「為替予約」について一言だけ書きたいと思います。
紹介している記事を読んでふと思ったのですが、「為替予約」を活用すれば、寄附を損金算入できるのではないかと思いました。
「為替予約」契約を締結し債権債務の履行を行ったことに伴い生じる為替差損は、税法上は損金となるのではないかと思います。
この為替差損を利用して、寄附金を損金とすることができると思いました。
例えば、甲から乙へ100円寄付をしたいと思っているのですが、
甲としてはこの寄附金100円を税務上損金としたいと考えているとします。
そこで、甲は次のような「為替予約」を考えました。
為替予約契約締結日(予約日):2017年9月28日
為替予約契約の履行日(決済日):2017年9月29日
予約日の為替レート:1ドル=100円 (ここでは、次の日のことですので決済日の為替レートも1ドル=100円だと想定します。)
契約内容:甲と乙は1ドル=200円で1ドル分の為替予約を行う。
すなわち、甲は乙へ200円支払い、乙は甲へ1ドルを支払う、という取引を決済日に行うとする。
上記のような「為替予約」を締結しますと、その後甲と乙はそれぞれ次のような行動を取ります。
まず乙はすぐに(予約日に)、外国為替市場で誰かに100円を支払い1ドルを購入します。
そして、決済日に、乙は甲へ1ドルを引き渡し、甲は為替予約契約の通りに、乙に200円を支払います。
甲は乙から受け取った1ドルを外国為替市場ですぐに売り、100円を受け取ります。
この為替予約が履行された時のそれぞれの損益の状況は次の通りです。
甲:100円−200円=−100円(米ドルを一金融商品として捉えれば、税法上譲渡損(=損金)となる。事実上、寄附が損金となる。)
乙:200円−100円=100円(米ドルを一金融商品として捉えれば、税法上譲渡益(=益金)となるが、当然それは想定内のこと。)
トリならぬキツネにばかされたかのように感じるかもしれませんが、これで甲にとって寄附金100円が税法上損金となります。
直接的に会計上の「為替差損」が認識されるわけではない(税法上の「為替差損」という損金項目が生じるわけではない)ので、
最初に書きましたことは実は少し不正確であったのですが、概念的には為替差損を人為的に生じさせていると思って下さい。
この取引の味噌は、「『為替予約』契約を締結することによって、資産の取得原価を時価(為替レート)から解放している。」、
という点になるといえると思います。
会計の世界では、米ドルというのは、一金融商品として定義されている・捉えられているかと思いますが、
同時に、米ドルというのは、日本における法定通貨ではないものの、極めて客観性の高い時価があるものとされています。
会計の世界では、外国為替レートというのは、絶対的な基準であるとして取り扱われているわけなのですが、
つまり、「外貨建ての勘定科目は適切な外国為替レートで換算をする」という会計処理を行うことが基本であるわけなのですが、
当事者間で為替予約契約を締結した場合は、その予約レートの方が外国為替レートより優先され、換算の基準となるわけです。
為替予約があるかないかで、会計上(税法上)の取り扱いが非常に大きく変わることになります。
この設例の取引を為替予約契約の締結をしないで行った場合は、
甲は乙から引き渡しを受けた1ドルを、外国為替レートで換算した「100円」で取得したもの、と税法上は見なされるかと思います。
すなわち、受け取った代金と外国為替レートで換算した取得原価との差額は、寄附金(損金ではない)と見なされると思います。
「為替予約契約の締結により、取得原価が予約レートで換算した価額になる。」、これがこの取引におけるポイントなのです。
参考までに言いますと、土地や建物の取引に関しては、「為替予約」に相当する手法はありません。
すなわち、時価から任意の価額への変更を可能とする言わば”不動産取引予約”(私の造語ですが)は会計上はありません。
土地や建物は、税法上は定められた時価でしか取引ができません。
土地や建物に関しては、任意の価額での取引を行うと、差額は寄附(損金にならない)ということになります。
米ドルは、日本における法定通貨ではないものの、米国の法定通貨であり、世界的に見れば基軸通貨であるわけです。
米ドルは、日本においても通貨(現金)の側面が非常に強いわけです。
一方、土地や建物は、米ドルに比べると、現金の側面は相対的に弱いわけです。
何が言いたいのかと言えば、米ドルに「為替予約」があるのなら、
土地や建物に関しても”不動産取引予約”がある方が論理的だと、ということです。
「時価で取引を行ったと見なす」ということの理論的背景は、
「その目的物を現金の側面が非常に強いものと見なしている」ということです。
例えばマンションをただでもらった場合、「それは(時価相当の)現金をもらったことと同じだ。」
と税務当局は言っている(任意の価格による取引は認めない)わけです。
米ドルをたたでもらった場合、それはなおさら現金をもらったことと同じだと税務当局からは見えるでしょう。
それほどまでに現金の側面が強い米ドルに、「為替予約」という手法が用意されていることは、概念的には矛盾でしょう。
したがって、「為替予約」を廃止するか、さもなくば、土地や建物に関しても任意の価額による取引を認めるべきでしょう。
土地・建物に関しても米ドルに関しても、時価評価はしない(任意の価額による取引を認める)、
ということであれば、取り扱いが首尾一貫していることになると思います。
いずれにせよ、今日の結論としましては、「為替予約とは外貨を任意の価額で取引するための手段である。」となります。
From a standpoint of the Japanese,
the U.S. dollar in Japan is more
equivalent to cash than lands and buildings in Japan are.
日本人の立場から言えば、日本国内にある米ドルは日本国内の土地・建物よりも現金同等物であるのです。