2017年7月7日(金)


2017年7月7日(金)日本経済新聞
数千億円の社債発行 ソフトバンク ファンドに充当 ドル建て
(記事)



2017年5月20日
SoftBank Vision Fund L.P.
ソフトバンク・ビジョン・ファンド、初回クロージングを完了
ttps://www.softbank.jp/corp/d/group_news/press_20170520_01.pdf

 

2017年5月22日
ソフトバンクグループ株式会社
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の初回クロージング完了に関するお知らせ
ttps://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2017/20170522_01/

>本ファンドの投資決定は英国子会社に設置される予定の投資委員会(以下「投資委員会」)により行われますが、
>当社はこれらの子会社を通じ本ファンドへの支配力を有していると考えられることから、
>会計上、本ファンドは当社の連結対象となります。

 

2016年10月14日
ソフトバンクグループ株式会社
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立について
〜サウジアラビア王国のパブリック・インベストメント・ファンドとの戦略的提携〜
ttps://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2016/20161014_01/

 


【コメント】
コメントを書く上で重要な部分を記事から引用します。

>ソフトバンクグループが、近く数千億円規模のドル建て社債を発行する。
>調達した資金は主にサウジアラビアなどと立ち上げた10兆円規模の投資ファンドへの出資に充てる。

>欧州とアジアで需要を探り、機関投資家向けに発行する。

>同社はファンドに出資する資金を今後も社債発行などで賄う方針。

端的に言えば、ソフトバンクグループは、傘下の投資ファンドに出資することを目的に社債を発行する、と言っているわけです。
他の言い方をすれば、社債発行により調達した資金の使途は傘下の投資ファンドへの出資である、
とソフトバンクグループは言っているわけです。
しかし、私がこの記事を読んでまず思ったのは、
「それならば、傘下の投資ファンド自身が社債を発行した方が話は早いのではないだろうか。」ということです。
他の言い方をすると、社債発行により調達した資金の使途を鑑みれば、ソフトバンクグループの立場から言っても
ソフトバンクグループが発行する社債を引き受ける機関投資家の立場から言っても、
理論的には(経営上得たい効果を考えると)、ソフトバンクグループが社債を発行することと
傘下の投資ファンド自身が社債を発行する(そして機関投資家がその社債を引き受ける)こととは同じであると私は思うわけです。
確かに、ソフトバンクグループが社債を発行した後、調達した資金を傘下の投資ファンドへの出資に充てる、
という手法を用いる場合は、傘下の投資ファンドの資本(金)は他方の手法を用いる場合に比べて相対的に大きくなります。
逆に、傘下の投資ファンド自身が社債を発行する、という手法を用いる場合は、
傘下の投資ファンドの資本(金)は他方の手法を用いる場合に比べて相対的に小さくなり
そして同額だけ負債(社債勘定)の金額が大きくなるわけです。
どちらの手法を用いるかにより、傘下の投資ファンドの財務体質(負債比率や自己資本比率等)に違いが生じるのは確かです。
しかし、
@最終的に資金調達を行う投資ファンドは、ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドである。
 すなわち、ソフトバンクグループの出資比率(出資金額)は問題にならない。
A機関投資家が引き受ける証券(投資の形態)はどちらの手法を用いるにせよ「社債」(負債の証券)である。
という2つの特徴を鑑みますと、「傘下の投資ファンド自身が社債を発行するべきだ。」と私は思うわけです。

 



ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドに対しサウジアラビアなどがどのような形で資金を拠出(投資)するのか分かりませんが、
ここではサウジアラビアなどは資本ではなく「負債」の形で資金を投資ファンドに拠出(投資)する、と考えました。
ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドの名称は、「SoftBank Vision Fund L.P.」(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)
であるわけですが、プレスリリースを読む限り、
概念的には、「SoftBank Vision Fund L.P.」はソフトバンクグループの100%子会社、という位置付けではないかと思います。
「SoftBank Vision Fund L.P.」における「ジェネラル・パートナー」と「リミテッド・パートナー」の違いなど、
まだ正確には理解し切れていない部分もあるのですが、
「ジェネラル・パートナー」は全出資者のうちソフトバンクグループ(の海外100%子会社)のみであるという点と、
「SoftBank Vision Fund L.P.」は会計上はソフトバンクグループの連結対象となるというプレスリリースの記述を鑑みますと、
概念的な捉え方になりますが、投資者からの投資金額が会計上負債勘定を構成するのか資本勘定を構成するのかはともかく、
「SoftBank Vision Fund L.P.」は株式会社でいうところのソフトバンクグループの100%子会社である
(すなわち、「SoftBank Vision Fund L.P.」に対し「資本」の形で拠出しているのはソフトバンクグループのみ)、
という捉え方をして間違いではないと思います。
ここでは以上の投資ファンドに関する私の理解が正しいことを前提にしますが、私のこの理解が正しいならば、
投資ファンドの会計上の資本の金額は全く問題にならないわけなのですから、
上記のどちらの手法を用いても、ソフトバンクグループや投資ファンドが得たいであろう(すなわち意図している)経済的効果を
当事者は得ることができる、と私は思うわけです。
社債を引き受ける機関投資家の立場から見た方が、私が今言いたい論旨はもっとすっきりのかもしれません。
社債の額面金額や利率が同じであれば、どちらが発行した社債を引き受けても、機関投資家にとっては同じであるわけです。
そして、ソフトバンクグループや投資ファンドにとっても、後は投資ファンド内の現金(運用可能な現金)をいかに増加させるか
だけの問題に過ぎない(現金に色はない。資本による資金調達も負債による資金調達も同じことである)わけですから、
わざわざソフトバンクグループが社債を発行しその調達資金を投資ファンドへの出資に充てる、
という回りくどい手法を用いる必要は全くない、ということになるわけです。
ソフトバンクグループは、株式会社でいう配当金をより多く受け取ることを目的に追加的な出資を行うわけでは全くないわけです。
極端なことを言えば、ソフトバンクグループは、純粋な負債(まさに普通社債など)の形で投資ファンドに現金を拠出しても、
経営上の目的は果たせる、と私は思うわけです。
「L.P.」という法的形態の組織(社団)では、利益の分配(割合や金額等)については投資時などに事前に任意に決められる
のかどうか分かりません(「L.P.」についてはまだ十分に理解していませんが)が、要するところ、
ソフトバンクグループは投資ファンド内の運用可能な金額を増加させたいだけ(資本額や議決権割合は眼中にない)なのですから、
それならば、投資ファンドが直接に社債(もしくはそれに相当する類似した証券等)を発行するべきだ、と思いました。
また、どちらの手法を用いるにせよ、機関投資家にはそもそも投資ファンドの資金運用に関与する気は全くないのです。
このたびの資金調達は、投資ファンドの資金運用(の意思決定)には影響を与えない形の資金調達を始めから考えている、
という場面なのですから、投資ファンド自身が直接に負債の形で資金を調達するべきだ、と思いました。


Whether by means of equity or by means of debts,
cash-suppliers to a company can't participate in the decision-making on usage of cash of the company.

資本を用いてであろうが負債を用いてであろうが、
会社に対して現金を拠出した側は、現金の運用に関する会社の意思決定に関与することはできないのです。