2017年6月10日(土)


2017年6月10日(土)日本経済新聞
相続で協議不要の財産は? 死亡保険金は受取人の「固有」に
(記事)

 


【コメント】
相続における生命保険の死亡保険金の取り扱いに関する記事になります。
生命保険の死亡保険金は、他の相続人が分け前を主張できる遺産とは見なされず、
受取人に指定された人にとって「固有財産」として取り扱われるようです。
最も典型的な契約例として、記事には、

>親が生前、自身を被保険者として保険料を支払い、死後に長男だけが保険金を受け取れるよう契約していたケースです。

と書かれています。
他の兄弟姉妹(他の相続人)からすれば、保険金もやはり公平に受け取りたいと思うわけです。
ところが記事によりますと、

>受け取る保険金自体は「故人が生前に持っていたおカネではなく、財産とは切り離して考える」

という取り扱いになっているとのことです。
以前もコメントしましたが、民法上は法定相続よりも遺言の方が優先されます。
例えば、兄だけに全財産を承継させるという内容の遺言があれば、
被相続人の遺産は兄だけが全て承継することができます。
この遺産の承継は、民法理上は相続ではなくやはり「遺贈」と呼ぶべきなのですが、
現行法人税法上は相続として取り扱われると思います。
記事の説例では、母が兄を死亡保険金の受取人として指定していたということは、
遺産のうちその保険金の部分だけは兄に遺贈すると遺言をしていたもの、と解釈するべきでしょう。
すなわち、死亡保険契約書は一種の正式な遺言書と解釈するべきだと思います。
死亡保険金の受取人を複数指定できるのかどうかは分かりませんが、
仮に複数指定できるにも関わらず兄のみを受取人として指定していた場合は、
それは生前に遺した母の明確な意思である(この財産は兄のみが承継をするべき、と)と考えるべきだと思います。
簡単に言えば、遺言書に「保険金は兄のみが受け取ること」と書き記していたことと同じであるわけです。

 



記事には、生命保険の死亡保険金の受け取りについて、

>「到底認めることのできないほどの不公平が生じている場合」

についても書かれていますが、その点については弁護士など専門家に相談をして下さい。
一般論を書きますと、土地、建物、預貯金、有価証券、自動車、宝飾品などなど、どのような種類の財産であれ、
「受取人を示す仕組みがある財産」については、被相続人の生前の意思があったものと考え、
受取人に対し排他的に承継が行われると考えなければならないと思います。
他の言い方をすると、「受取人を示す仕組みがある財産」については、遺産分割協議の対象外である、ということになります。
それから、死亡退職金や遺族年金の受取人は服務規程や就業規則等から一意に決まりますので、
そもそもそれらは相続の範疇外のことと考えるべきでしょう。
死亡退職金や遺族年金そのものは、被相続人が残した財産(生前の、すなわち、死亡時の所有財産)では全くありません。
死亡退職金や遺族年金は、国もしくは会社が遺された人に対し支払うわけです。
遺された人にとっては、それらは被相続人の所有財産の承継とは全く異なる類の財産の取得です。
死亡退職金や遺族年金の支払いや受け取りは、相続と呼ばれる概念とは根本的に異なるのです。
それらは相続とは支払人が異なる、と言えばいいでしょうか。

 



「生命保険の死亡保険金の受け取りと相続との関係」について記事では解説がなされているわけですが、
死亡保険金と聞いて、もっと簡単な「同じ類の取引(事の本質は同じ取引)」が頭に思い浮かびました。
言葉だけでは説明しづらいですので、図に描いてみました↓。


「被相続人のみから相続人に遺産が直接に承継される取引が相続と定義される。」

母は兄だけに財産を相続させたくて一計を案じた。
民法上の相続を迂回することにしたのである。
心から信頼できる親友に財産を託すことにした。
この場合、母から兄への財産の承継は、相続ではなく、単に母の親友からの贈与となる。
このような法定相続の範囲外の人物を経由した財産の贈与を行うと、弟は1円も財産を相続できない。
兄と弟との間で相続に関して明らかに不公平が生じていると言えるわけであるが、法理・法律的には、
母の親友から兄への個人的な贈与という見方しかできないのではないだろうか。


つまり、母の財産が、生命保険会社を一旦経由するのか、信頼できる親友を一旦経由するのか、の違いに過ぎない、と思ったわけです。
母の親友を経由する場合、それはやはり相続ではないわけです。
そうすると、生命保険会社を一旦経由する場合も相続ではないのではないでしょうか。
他の言い方をすると、死亡退職金や遺族年金の場合と同様に、財産の支払人は少なくとも被相続人ではない、
という言い方ができるように思ったわけです(被相続人から相続人へ財産が承継されるわけではやはりない)。
例えば、生命保険会社内にあるといえる現金は、母所有の財産(母名義の財産)でしょうか。
一般的に言えば、財産の名義が被相続人名義から相続人名義に変わること、それを相続というのではないでしょうか。

 

Inheritance is defined as a transaction that property left is transferred only from an inheritee directly to inheritors.

相続は、遺産が被相続人のみから相続人に直接に承継される取引として定義されます。

 

On the principle of law, each inheritor should be asked a question "Do you live with your parents?"
As for for the likes of me、several tens of years ago, even in my kindergarten days,
I have once said, "We should live with grandfathers and grandmothers."

法理的には、各相続人に対し「親御さんとはご一緒に住まわれてますか?」と尋ねなければならないのです。
私目についてはどうかと言いますと、数十年前のことになりますが、まだ幼稚園生のころだったのですが、
「じいちゃんやばあちゃんと一緒に暮らすべきだ。」と申し上げました。