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2017年6月9日(金)



2017年6月9日(金)日本経済新聞 公告
株券廃止公告
株式会社丸ノ内ホテル
(記事)



 

【コメント】
株券は英語で「share certificate」といいます。
株券とは、株式を所有していることを示す証書なのです。
端的に言えば、「株券を所有している人」が「株式を所有している人」(すなわち「株主」)なのです。
株券というのは、元来的には、本人確認の手段であったのだと思います。
簡単に言えば、株券を持っている人が株主本人なのです。
株券は、不動産登記における「登記済証」と同じ役割を果たすものと言えると思います。
しかし、「誰が株主であるか?」は株主名簿により一意に明らかにされるのも確かです。
その意味において、株券(紙)を譲渡しさえすれば株式を譲渡したことになる、というわけでは決してないわけです。
例えば、不動産登記において、「登記済証」(紙)を譲渡しさえすれば不動産を譲渡したことになるでしょうか。
不動産登記においては、「誰が不動産の所有者か?」は登記簿により一意に明らかにされるわけです。
「登記済証」はあくまで本人確認の手段であると言えるわけです。
その意味おいて、不動産登記においては、登記簿が主、登記済証は従であるわけです。
同様に、株式の所有者に関しては、株主名簿が主、株券は従であるわけです。

 



法理的には、「登記済証を所有している人が不動産の所有者である。」の一言であるわけです。
登記済証を提示することは、
イコール「私が不動産の所有者として登記されている人物です。」と言っていることに等しいわけです。
しかし、現実には、登記済証について紛失や遺失や盗難に遭う恐れがあるわけです。
そのため、「登記済証の提示のみで本人確認とする」ということは、実際には今まで一度も行われていないと思います。
実務上は、写真付きの公的な身分証等も併せて提示することで本人確認としているわけです。
不動産登記の実務では、法理上の考え方(登記済証の提示)に加え、性悪説に立って別途他の身分証の提示を求めることで、
本人確認としているのです。
ただ、(性悪説に立って)写真付きの公的な身分証等で本人確認を取るとなりますと、
不動産登記実務上は実はそれで本人確認の手段としては必要十分であるわけです。
それで、2004年の不動産登記法の改正により、この登記済証の制度は廃止となりました。
現実には、登記済証はあまり有用ではなかった(性悪説に立てば登記済証のみによる運用は危険性が大きかった)わけです。
以上の登記済証と全く同じ問題点が株券にもそっくりそのまま当てはまるわけです。
登記済証を株券に、不動産を株式に、不動産登記を株主名簿への記載に、置き換えてみると、
上記の文の意味が通るのが分かるでしょう。
それで、登記済証同様、2006年施行の会社法から、この株券の制度は廃止(正確に言えば「不発行が原則」)となりました。
旧商法では、株券を発行することが大原則であった(株券を発行しないと会社は株主が本人であることを確認できない)わけですが、
「株券を持っていさえすれば会社は提示者を株主本人と考える」というのはやはり現実には危険性が大きかったわけです。
実務上は、写真付きの公的な身分証等も併せて提示することで本人確認としていたわけです。
2006年施行の会社法から株券が廃止になったのは、不動産登記における登記済証が2004年に廃止になったのと同じ理由なのです。
株券とは、登記済証同様、日常用語では「権利証」とよばれるものです。
法理的には、「権利証」を持っている人が権利者本人(不動産の所有者本人、株式の所有者本人)なのです。
ついで書きますと、あの「印鑑」にも、「持っている人が本人」という「本人確認の手段としての役割」があります。
「印鑑」というのは、三文判やシャチハタは除きますが、
どの印鑑もこの世に1本しかありません(つまり、印影が同じ印鑑はこの世に1本もない)。
「印鑑登録」を市区町村役場で行えば、「印鑑登録証明書」を発行してもらえるのですが、
「印鑑」と「印鑑登録証明書」を提示することで、法理的には本人と確認できるのです。
すなわち、「印鑑」を持っていれば、自分は「印鑑登録証明書」記載の氏名の人物であることを公的に証明できるのです。
端的に言えば、「印鑑登録証明書」は紛れもなく公的な身分証明書なのです。
しかし、「印鑑登録証明書」にも現実には登記済証や株券と類似した問題点があると言えるでしょう。
市区町村役場においても、印鑑さえ持っていればその「印鑑登録証明書」を発行する、というわけではないわけです。
「印鑑登録証明書」の発行を申請する際、役場では写真付きの公的な身分証等を提示することを実際には求めていると思います。
法理的には、印鑑を持っている人が本人なのです(法理的には印鑑により本人確認ができる)が、性悪説に立って、
写真付きの公的な身分証等の提示により本人確認とする、ということが現実には行われているわけです。
そうしますと、現実には、「印鑑」と「印鑑登録証明書」は「本人確認の手段」としては有用ではない、ということになります。
契約書に押した印鑑(捺印)は本当に本人が押したものかどうかは「印鑑登録証明書」の印影と照合することで明らかになる
わけなのですが、それもやはりどちらかと言えば法理上の考え方だと言えるでしょう。
性悪説に立てば、盗難に遭った場合などは、印影が「印鑑登録証明書」と一致していても本人が押したとは全く言えないわけです。
「本人確認の手段」としては、現実には「印鑑登録証明書」には登記済証や株券と同じ問題点があるのは確かだと思います。
それでも、法理的には、やはり「印鑑」は本人確認の手段であり「印鑑登録証明書」は公的な身分証明書なのです。