2017年5月20日(土)


2017年5月19日(金)日本経済新聞
実質株主も総会出席OK Jフロント、定款変更へ 「上場企業で初の取り組み」
(記事)



2017年4月27日
J.フロント リテイリング株式会社
第10期定時株主総会招集ご通知
ttp://www.j-front-retailing.com/ir/stock/pdf/170427_jfr.pdf

 

株式実務法規集(全国株懇連合会)
ttp://www.kabukon.tokyo/data/

 


【コメント】
「第10期定時株主総会招集ご通知」には、株主総会に主席できる株主に関する部分の定款変について、

>当社は、2015年12月25日策定の「コーポレートガバナンス方針書」において、いわゆる実質株主の皆様から株主としての
>権利行使について事前申出があった場合は、名義株主である信託銀行及び当社株主名簿管理人等の関係者と協議の上、
>株主としての権利を行使していただけるよう対応を講じる旨定めております。
>この方針に従い、信託銀行等の名義で株式を保有し自己名義で保有していない機関投資家が株主総会に出席して
>その議決権を代理行使することができるとする旨を>現行定款第18条に新設いたします。
> 当社株主総会に出席してその議決権を代理行使することができる実質株主の皆様の範囲や総会出席に必要な
>要件・手続等の詳細は、当社株式取扱規程において定めることといたします。

と書かれています(6/64ページ)。
具体的には、定款を以下のように変更する計画であるようです(7/64ページ)。

(議決権の代理行使)
第18条 株主は、当会社の議決権を有する他の株主1名を代理人として、その議決権を行使することができる。
 前項の規定にかかわらず、取締役会において定める株式取扱規程に定めるところにより、信託銀行等の名義で株式を保有し
自己名義で保有していない機関投資家は、株主総会に出席してその議決権を代理行使することができる。
 株主または代理人は、株主総会ごとに代理権を証明する書面を当会社に提出しなければならない。

 


会社法上は、議決権の代理行使を行うことができるのは会社の株主のみ、と定められているようです。
このことは、株主総会に出席できるのは結局のところ株主(株式の所有者)のみである、
という考え方を会社法はしている、ということなのだろうと思います。
例えば、株主総会招集通知は、株主名簿に記載されている株主宛に送付されるわけですが、
そのことはイコール、株主以外の人が株主総会招集通知を受け取ることはなく、
したがって、株主以外の人が株主総会の事実(開催日時や議案内容等)を知ることはない、
ということを会社法は前提としている、ということだと思います。
他の言い方をすると、会社法ではそもそも議決権行使に代理という考え方をしていないのではないかと思います。
つまり、たとえ会社の株主であろうとも、本来的には議決権の代理行使はできない、ということではないかと思います。
率直に言えば、株主名簿に記載されている株主が株主であり、
株主名簿に記載されている株主が議決権を行使できる、というだけのことではないかと思います。
「第10期定時株主総会招集ご通知」を見ていると、興味深い記載がありました↓。

2.会社の株式に関する事項
(3) 株主数 91,185名
(4) 大株主
(37/64ページ)


株主名簿に記載されている株主以外の人もが株主であると認めるならば、
J.フロント リテイリング株式会社の株主数は一体何人なのでしょうか。
また、「第10期定時株主総会招集ご通知」に記載されている各大株主の持株数と持株比率も間違っている、
ということになるでしょう。
発行済株式総数は同じでしょうが、株主の数が記載されている株主数とは全く異なる、ということになります。
それでは、株主数や各株主の持株数と持株比率を一意に表現する書類はない、と言っているようなものでしょう。
信託銀行による議決権の代理行使のためには、その前提として、株主は議決権の不統一行使を行えなければならないわけですが、
どちらかというと、議決権の不統一行使を行うことで、信託銀行は議決権の代理行使を行う、と考えるべきだと思います。
すなわち、J.フロント リテイリング株式会社の事例では、
議決権の不統一行使そのものをどこか否定しているように感じるわけです。
つまり、これは株主名簿上は紛れもなく議決権の不統一行使ですが、
それを実質株主や代理権といった言葉を用い「これは議決権の不統一行使ではない」と強弁しているように感じるわけです。
株式所有の代理は、純粋に信託銀行とその委託者(機関投資家等)との間の関係に過ぎません。
その関係は、本質的に会社には関係がないはずなのです。
信託銀行による議決権の代理行使は、会社法上の議決権の不統一行使のみで済ますべきなのです。

 

From a standpoint of a company,
a shareholder is only whether "being a shareholder" or "not being a shareholder."

会社の立場からすると、株主には「株主である」か「株主ではない」かのどちらかしかないのです。