2017年5月15日(月)



2017年5月15日(月)日本経済新聞
銀行窓口 設置しやすく 経験者配置の規制撤廃へ 小売り参入促す
(記事)




2017年5月15日(月)日本経済新聞 経営の視点
セブン、成長神話を棚卸し 再定義する「共存共栄」
(記事)


 


【コメント】
43年前の今日、東京の豊洲でセブン・イレブン1号店が開店した、とのことです。
小売業というのは、一般消費者が買い物をしに来店してこそ成り立つわけですから、
創業日や会社設立日ではなく、開店日が小売業にとって一番記念すべき日であると言えるでしょう。
セブン・イレブンにとっては、5月15日がある意味創業日と言えると思います。
そのコンビニエンスストアですが、この世にコンビニエンスストアが誕生して以来、
非常に多くの新しいサービスを提供するようなっているわけです。
その中の1つが、ATM機の設置を中心とする銀行業の開始・提供であると思います。
そこで、主にコンビニエンスストアを主に念頭に置いているのだろうと思うのですが、
金融庁が、金融サービスの提供を容易にするために、銀行法の改正を計画しているとのことです。
記事には、

>金融庁は銀行の代わりに預金や融資を仲介する「銀行代理店制度」の規制を緩める方針だ。

>百貨店やスーパー、コンビニなどに代理店業務を広げる狙いだ。

>銀行代理店制度は、銀行法が認める出店形態の一つ。

と書かれています。
現在、大手コンビニエンスストアには「コンビニATM」が設置されているわけですが、
ATM機ではなく、担当者が受付にいる実際の窓口を小売り店舗内に開設できるようになる、ということなのだと思います。
コンビニエンスストアに買い物に行ったついでに、口座開設を行ったりローンの申し込みを行ったり外貨両替を行ったり、
ということができるようになるようです。
ただ、これはコンビニエンスストアが銀行業に参入する、ということとは異なるようです。
「銀行代理店制度」を活用するのは、「銀行」の方だと思います。
例えば、三菱UFJ銀行がセブンイレブンの店舗内に自行の銀行窓口を設置する際に、
この「銀行代理店制度」を活用するのだと思います。
また、セブン銀行がセブンイレブンの店舗内に自行の銀行窓口を設置する際も、
この「銀行代理店制度」を活用するのだと思います。
しかし、セブンイレブン(コンビニエンス事業を営む会社)がセブンイレブンの店舗内に銀行窓口を設置する、
という話をしているわけではないのだと思います。
一言で言えば、「銀行代理店制度」を活用するのは、銀行側の話(コンビニエンスストア側の話ではない)だと思います。
見出しには、「小売り参入促す」と書かれていますが、この「銀行代理店」に参入するのは銀行だと思います。
確かに、記事には、例えばファミリーマートは代理店に参入できるよう定款を変更したと書かれていますが、
そもそも銀行がないと代理店にならないわけです。
銀行からすると、小売事業者の協力なしには代理店網を広げていくことはできないのですが、
小売事業者側が銀行業を新たに展開する(セブンイレブンがセブン銀行を設立したように)、というわけではないわけです。
代理店というのは、本体(銀行)があってこそ代理店という出店形態(ビジネスモデル・委託関係)が成り立つわけです。

 



記事には、「銀行代理店制度」は銀行法の改正により2006年に一般事業者に開放された、と書かれていますが、
実際には、銀行は一般事業者を銀行代理店として活用できる(代理店の形で出店できる)ようになった、
という言い方をしなければならないと思います。
例えば、銀行法の規定により、銀行は以前は「支店」という形でしか出店できなかった(銀行業を展開できなかった)のだが、
2006年の法改正により、銀行は「代理店」という形でも出店できるようになった(銀行業を柔軟に展開できるようになったかった)、
記事や「銀行代理店制度」の中心的存在は、コンビニエンスストア等の小売業者ではなく、あくまで銀行なのだと思います。
例えば、ファミリーマートの店舗で口座を開設するとしても、それはあくまで代理店契約を締結している銀行(のある支店)に
口座を開設するという意味であって、「ファミリーマート何々店」に口座を開設するという意味ではないわけです。
「銀行代理店制度」を活用し銀行代理店事業に参入する中心的存在はあくまで銀行であって、
代理店契約を締結する相手(代理店として銀行窓口を設置する先)としてコンビニエンスストアが実務上は想定される、
ということだと思います。
代理店契約を締結するに際し、結果的に小売事業者にも銀行法が適用されるわけですが、
金融サービスを提供する(代理店を実際に運営する)のは、結局のところは銀行自身(行員)、ということになると思います。
簡単に言えば、代理店という形で出店できれば新たに支店を建設・開設しなくて済む、という利点が銀行にはある、
と言えると思います。
2002年のちょうど今頃に聞いた話ですが、ある損害保険会社に勤務する高校の同期から、
「自分が入社する前に社内でリストラの嵐が吹き荒れて、会社から代理店に飛ばされた人もいたらしい。」
という話を聞きました。
これはやや極端な例なのかもしれませんが、代理店に勤務している人というのは結局かつては本体(会社)に勤務していた人、
という言い方ができるのかもしれないなと思います。
コンビニエンスストア事業におけるフランチャイズ契約(直営店ではなくフランチャイズ展開)がまさにそうであるように、
代理店とは、本来的には本体(フランチャーザー・委託者)とは資本関係や人的関係がない会社や人が、
代理店業務を請け負う、ということではないかと思います。
代理店とフランチャイズは同じ意味ではないものの、非常に近い概念のものと捉えることができると思います。
本来ならば、会社がお金を出して直営店(銀行で言う支店)を開設・運営していかねばならないわけですが、
マニュアルや経営指導体制や商品の納入体制を整備することで、フランチャイズという形態で出店を進めていくことが
コンビニエンスストアでは可能になっているわけです(フランチャイズ店にいる人は本部とは関係がない人です)。
「銀行代理店制度」というのは、コンビニエンスストア事業における「フランチャイズ制度」に似ている、
と思えばよいのではないかと思います。
現行の銀行法では、銀行経験者(元銀行員もしくは現銀行員)を店舗(代理店)に配置しないといけないルールとなっている
ようですが、その理由は、金融監督上・行政指導上・サービス利用者保護上の理由というよりも、
実は代理店運営上・実務上・実際上の理由なのではないだろうかという気がします。
銀行ではなく損害保険会社に関してのことでしたが、15年前にそのような話を聞いただけに、そのような気がします。
代理店と言っても、銀行に勤務した経験がない人が窓口(代理店)にいるとなると、簡単には展開できないと思います。
結局のところ、代理店が開設されるのはコンビニエンスストアの中なのでしょうが、
それはコンビニエンスストアが銀行業に進出したのではなく、銀行が代理店の形で出店をした、という見方をするべきでしょう。
例えばファミリーマートは、どこかの銀行と代理店契約を締結する用意は既に整えている(定款も変更済み)のだが、
実際には銀行側からの依頼・申し出を待っている状態だ(代理店での業務運営マニュアルを作成するのはあくまでも銀行です)、
ということになると思います(小売事業者から銀行に代理店契約締結を申し込むことは現実にはない、と言っていいと思います)。