2017年4月25日(火)



2017年4月14日(金)日本経済新聞
広島銀、融資の元本返済 震度6強以上で免除
(記事)




2017年4月14日
株式会社広島銀行
株式会社ワイテックに対し、震災時元本免除特約付きシンジケートローンを組成
ttp://www.hirogin.co.jp/ir/news/paper/news170414-1.pdf


2017年4月14日
株式会社広島銀行
地元自動車関連サプライヤーへの「震災時元本免除特約付き融資」の実施について
ttp://www.hirogin.co.jp/ir/news/paper/news170414-2.pdf

 


関連する昨日のコメント

2017年4月24日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201704/20170424.htm

 



【コメント】
昨日は、「コマーシャルペーパーの発行」(支払手形の割引発行)についてコメントを書きました。
昨日のコメントでは、支払利息の認識のタイミングが1つの論点にはなっていたわけですが、
昨日は書かなかった別の論点として、「債務の元本部分はどの部分か?(金額には利息部分が含まれているのか否か?)」
についても同時に考えなければならない論点ではないかと思います。
「利息込み」で債権債務関係が発生するとは言うものの、その場合「元本と利息とを分離して認識することはできるのか?」
という問題が生じるように思います。
昨日書きました設例では、「(コマーシャルペーパーを『利息込み』で4万7300円分発行した。」と考えました。
つまり、「コマーシャルペーパーの発行時」は、元本は4万円、利息部分は7300円、という認識方法になるわけです。
しかし、「コマーシャルペーパーの償還時の仕訳」を見ますと分かりますように、
元本は4万7300円、利息部分はやはり7300円、というふうにも見えるわけです。
一言で言って、コマーシャルペーパーの元本の金額は、4万7300円なのか4万円なのか、判然としないわけです。
そうしますと、「利息込み」でコマーシャルペーパーを発行することはできないのではないか、という考え方になってくるわけです。
この問題点は、コマーシャルペーパーに限らず、債務を表象する証券全般に当てはまることでしょう。
社債の割引発行が最も典型的な例になるわけですが、「この額面金額には利息が含まれています。」となった途端に、
元本部分と利息部分との区別が実はつかなくなるわけです。
概念的には、「発行価額(額面金額)−資金調達額(実際に払い込まれた金額)」が利息部分という捉え方になるでしょう。
しかし、取引を仕訳で書いていきますとよく分かるのですが、「一体いつ利息を支払ったのか?」が全く判然としないわけです。
仮に発行時に利息を支払ったと考えても、結局償還時にも利息を支払っている(利息込みの金額を償還している)、
というふうにも見えるわけです。
これは、現金主義会計と発生主義会計との間で整合性を取り切れないから、
このような説明が付かない状況が生じているのだろうと思います。
債権の捉え方としては、"Receivables are cash."(債権とは現金である。)、という理解が大切なのですが、
「現金に利息が含まれている。」という考え方はおかしいのではないでしょうか。
現金を、元本部分と利息部分とに分けられるでしょうか。
現金を元本部分と利息部分とに分けることができないのなら、「利息込みの債務」というのもまたないのではないでしょうか。
これが「利息込みの債務」(社債の割引発行等)について説明が付けられない根本原因であるように思います。
仮に、”現金に差額がある。”とすれば、それは支払利息ではなく単に「寄附金」なのではないでしょうか。
元本部分と利息部分とは根源的に異なるものであるわけです。
概念的には、元本部分は現金、利息部分は損益、と捉えるべきものであるわけです。
元本部分による損益はない、と考えなければならないのです。
元本部分と利息部分とが渾然一体となったものなどない、と理解するべきだと思います。
全く相容れない両者を一体ものと見なすから、割引発行に全く説明が付けられないわけです。
結論を言えば、割引発行などないのです。

 



以上の議論を踏まえて、株式会社広島銀行の事例について一言だけ書きます。
プレスリリース「地元自動車関連サプライヤーへの『震災時元本免除特約付き融資』の実施について」には、

>地震による元本免除特約を付与した融資商品は全国で初めての取扱いです。

>借入元本の免除部分については元本免除益となり、大規模地震発生時の財務面でのダメージの補填が可能となります。
>また免除部分による借入余力が生じるため、緊急時の資金調達も可能となります。

と書かれています。
先ほど、「元本部分による損益はないと考えなければならない。」と書きましたが、
元本を減らすという考え方はない、と考えなければならないわけです。
なぜなら、元本は現金だからです。
仮に元本を減らそうとすれば、それは先ほど書きましたようにまさに寄附金であるわけです。
「震災時元本免除特約付き融資」など行おうものなら、地震が起こった時に真っ先に倒産するのは株式会社広島銀行でしょう。
融資先は生き残るかもしれません。
しかし、株式会社広島銀行は倒産するでしょう。
なぜなら、株式会社広島銀行は「私は寄附をします。」と言っているからです。
災害時に社会的に融資先の支援をしたいのなら、融資先が債務の移転を行うようなことをしていかなければならないと思います。
つまり、融資先は始めから借り入れを行っていないかのような状態を作り出さなければならないと思います。
ただ、現実的には、株式会社広島銀行が貸出金を国に額面金額で譲渡する、というようなことをすることになると思います。
そうしなければ、株式会社広島銀行が損失を被るからです。
株式会社広島銀行のウェブサイトには次のような言葉が書かれています。

「真っ先にご相談いただけるファースト・コール・バンクを目指します」


しかし、利息を免除するなら理論的にはともかく、元本を免除するとなりますと、それは寄附をすることと同じであるわけですから、
株式会社広島銀行は「真っ先に倒産するファースト・フォール・バンクを目指している」、と言わねばならないと思います。

 


If a big-enough earthquake strikes Hiroshima, the Hiroshima Bank will be the "First Fall Bank,"
not the "First Call Bank."
If such disaster occurs, the Hiroshima Bank can not say, "No more Hirohimas."
For the Hiroshima Bank will have already gone bankruptcy at that time, and also gone under a court.
The term "court" has the meaning "bring disaster on oneself" in a verb.
That is, by means of this special agreement, the Hiroshima Bank is courting disaster.

広島で大きな地震があった場合は、広島銀行は「ファースト・コール・バンク」ではなく、
「ファースト・フォール・バンク」になるでしょう。
もしそのような災害が起こったら、広島銀行は「ノーモア・ヒロシマ」ということはできないでしょう。
なぜなら、広島銀行はその時には既に倒産してしまっているでしょうし、さらには裁判所の管理下にもあることでしょう。
「court」という言葉には、動詞で「災難を自分で招く」という意味があります。
つまり、この特約を用いることで、広島銀行は自分で災難を招くようなことをしているのです。