2017年4月23日(日)



2017年4月23日(日)日本経済新聞
遊遊漢字学
「稽古」とごほうび
(記事)




【コメント】
「稽古」という言葉の語源についての記事です。
国語辞書には、「稽古」とは「昔の事を手本にし参考にする」という意味だと載っています。
記事によると、「稽古」の「稽」には、「考える」という意味があるとのことです。
記事には、

>「稽古」とはもともと、古代の書物を読み、そこから聖人の教えを学びとるという意味だった。

と書かれています。
この記述を呼んで、私は「温故知新」という言葉が頭に思い浮かびました。
何事においても、「昔の事を学ぶこと」が大切なのだろうと思いました。

 

An attempt to discover new truths by studying the past through scrutiny of the old.

温故知新

 

 


2017年4月23日(日)日本経済新聞
建築業者者から紹介手数料 アパート融資 地銀、利益相反か 金融庁是正へ
(記事)

2017年4月23日(日)日本経済新聞
きょうのことば アパート融資
相続税対策で需要急増
(記事)

 

チャイニーズウォール(ちゃいにーずうぉーる)

1989年の証券取引法改正で、インサイダー取引(企業の内部情報を利用した不公正な取引)への規制が強化されたことを受け、
証券界が自主ルールを設定。
企業の非公開情報を知り得る立場にいる引受部門と、投資家に銘柄選定のアドバイスをする営業部門の間に情報の壁をつくるため、
両部門を異なる場所に離したり、管理体制を徹底するなどの対策が行われている。
チャイニーズウォールとは、もとは中国の万里の長城のこと。
(野村證券株式会社 証券用語解説集)
ttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/ti/china.html

 

ファイアウォール (ファイアウォール)

直訳すると「防火壁」ですが、金融用語では銀行業務と証券業務の間における情報の隔壁のことです。
利益相反の防止、不正な取引を規制するために設けられている施策です。
なお、証券会社の引受部門と営業部門との間などに設けられている情報の隔壁は、「チャイニーズウォール」と呼ばれています。
(SMBC日興証券株式会社 初めてでもわかりやすい用語集)
ttp://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/fu/J0466.html

 



【コメント】
記事を読んでまず最初に思ったのは、単純な疑問として、「なぜ銀行と顧客との間で利益相反が起こるのだろうか?」と思いました。
よく分からないなと思い、頭を整理するために、銀行と顧客と建築請負業者との関係を図に描いて見ました。


「利益相反の関係図」

【背景】
地銀と資産家(顧客)とは、従来から取引関係(預金・融資等)にあったのだが、
資産状況から判断して過大な建築費用をこの資産家は負担できると地銀は考え、
「顧客紹介手数料」を目当てに、建築請負業者に顧客を不当に紹介する、
という事例が増えている、ということが背景にあるようです。


図に描いてみますと、確かに、「アパートの建築費用」が大きくなれば大きくなるほど、
銀行の収入は増加する(顧客紹介手数料と受取利息の2つが銀行に入ってくる仕組みになっている)、ということが分かりました。
簡単に言えば、銀行が顧客のために最善のサービス提供をするとは限らない、ということがこの利益相反の原因である、
と言えるのだろうと思いました(少なくとも性悪説に立てばそう言える)。
ただ、これではいささか表面的な気がしていまして、この「利益相反が起こり得る原因」についてもう一段考察を深めてみますと、
「銀行が顧客の資産内容をよく知っている」ということが、この場合における利益相反の原因と言えるのではないかと思いました。
私の頭に最初に浮かんだのは、銀行業と証券業の分離を要請する「チャイニーズウォール」という概念です。
「チャイニーズウォール」については、インターネット上にたくさん解説記事がありますので、各自で読んで下さい。
今改めて検索してみますと、証券会社内で引受部門と営業部門との間に必要なのが「チャイニーズウォール」であり、
銀行と証券会社との間に設けるべき情報の隔壁は「ファイアウォール」と呼ばれている、との解説がありました。
ひょっとすると、「チャイニーズウォール」に関する私の理解はやや不正確なところがあり厳密性に欠けるのかもしれず、
正確・厳密には私が言っているのは「ファイアウォール」であるようですが、
要するところ、「利益相反の防止のために、銀行業務と証券業務の間に情報の隔壁を設けなければならない」
という考え方が銀行業界と証券業界にはあるわけです。
利益相反の構図としては、記事で言っている「地銀と顧客との関係」が「ファイアウォール」に言う「銀行と顧客との関係」
に極めて類似している、と思いました。
「ファイアウォール」では、銀行が顧客の資産内容(預金額など)を知っていることが利益相反の原因とされているのです。
当事者の立ち位置を鑑みれば、アパート建築について地銀から建築請負業者の紹介を受けることについても、
「ファイアウォール」で論じられる問題点がそのまま当てはまるように思いました。

 



The fundamental cause of this kind of conflict of intersts lies in
the fact that a bank knows the details of assets of its client.
In other words, to put it grammartically correctly,
a bank does not "know about" its client but "know" its client.

この種の利益相反の根本原因は、銀行が顧客の資産内容を詳しく知っていることなのです。
他の言い方をすると、文法的に正しく表現すれば、
銀行は、「顧客のことを聞いて知っている」ではなく、「顧客のことを熟知している」ということなのです。

 


Lendings to rental apartments.

賃貸アパートへの貸出金

 


「アパート建築の場合、なぜ利益相反が生じ得るのか?」という点について理解を深めるため、もう1点考察を試みてみましょう。
比較・対照するために、類型として似ている取引と言いますか、
関連する取引(資産家は建築したアパートを賃貸するわけです)として、賃貸不動産を斡旋・紹介する場合を考えてみましょう。
賃貸不動産を斡旋・紹介する場合は、次のような関係図になります。


「では、不動産業者と借主の場合は?」

【分析】
一般に、不動産業者は借主(顧客)のことを全く知らない。
仮に家賃の高い物件を紹介しても、借主は断るだけであろう。
良い物件がなければ、借主は他の業者の店舗へ行くであろう。
一言で言えば、不動産業者間の競争は著しく厳しい状態にある。
また、賃貸アパート情報は、業者の店舗だけではなく、
雑誌やインターネット上に大量にあり、借主は物件の比較・検討が極めて容易。
さらに、借地借家法を始め、借主保護を目的とした法令も十分に整備されている。
アパートを建築する場合に比べると、顧客が相対的に有利な立場にあり、
不動産業者と借主との間に利益相反の恐れはないと言っていいであろう。


一言で言えば、事の問題点の本質は「競争状態」にある、とも言えるのかもしれないなと思いました。
資産家がアパート建築をしたいと思っても、相談相手や建築請負業者を紹介してくれる相手というのは取引先である銀行しかない、
という場合が現実にはあるのだと思います。
そういう状況下では、「銀行が紹介した建築請負業者を資産家はあまり疑うことなくそのまま受け入れる」
ということになりがちであるわけです。
他の言い方をすると、資産家は建築費用に関する「相場が分からない」という状態にあるわけです。
また、「資産家が他の建築請負業者を選択する」ということが現実的には難しい、という状態にあるわけです。
このような状況下では、銀行と顧客との間に利益相反が起こり得る余地が生じてしまうのだと思います。
「顧客の選択能力の高さ」(情報や選択肢を持ってどれだけ自由に顧客は自分が希望する財やサービスを選べるか)が
低い状況下では、結果利益相反が起きやすい(顧客が損をしやすい)、と言えるのではないかと思いました。
「顧客の選択能力の高さ」は、英語に訳すならば、"selecting power"(選択力)となろうかと思います(個人的な私訳ですが)。
独占禁止法を始めとする競争に関する法令でも、実は今日私が書きましたような考え方が基底にあるのではないかと思います。
賃貸アパートの建築と斡旋を題材にして、前半は「銀行が顧客を知っていること」、後半は「競争状態が厳しくないこと」、
が利益相反(顧客が損をする状態)が起こり得る原因である、と分析してみました。

 

Then, how about a relatioinship between a real estate agent and a renter?

では、不動産業者と借主との場合はどうでしょうか?