2017年4月17日(月)
2017年4月17日(月)日本経済新聞
「節税策は」 セミナー活況 相続税の課税強化で関心 移住富裕層 帰国へ相談も
(記事)
国庫(国のお金の動きとその調整)(財務省)
ttp://www.mof.go.jp/exchequer/
【コメント】
亡くなった人の遺産を国が相続する(遺産が国庫に納付される)ケースが増えている、という内容です。
亡くなった人の遺産が国庫に納付されますと、土地であれ建物であれ有価証券であれ現預金であれ、
全ての財産の所有権は国に帰属することになるかと思います。
現行の法律上の厳密な定めについては知りませんが、国庫納付の場合、概念的・原理的には、
「相続財産管理人」が遺産を換金する、ということはしないのではないかと思います。
遺産であるそれぞれの財産の所有権が個別に国に帰属する、という流れになるのではないかと思います。
他の言い方をすれば、遺産の種類とは無関係に、現物が現物のまま国庫に納付される、という流れになるのではないかと思います。
財政上の理由から現物を換金する場合は、国自身が換金(競売その他により)する、ということではないかと思います。
「国の財産」とは、現金だけではないわけです。
「税収」という文脈では、公平性・客観性・透明性の確保の観点から、理論的には納付は現金でなければなりませんが、
遺産が国庫に納付されるという場面では、ただ単に財産の所有権がそのまま国庫に帰属する、というだけで問題はないわけです。
遺産の国庫納付の流れは以上のようになるのではないかと思いますが、
ただそのように考えますと、実務上少しだけ問題が起こる場合があります。
それは例えば株式の所有権です。
遺産に株式が含まれており、その株式が国庫に納付された場合、株主の名義は誰になるのだろうかと思いました。
国庫となりますと、財務省の管轄ということになりますので、株主の名義は「財務大臣」になるのだろうかと思いました。
「財務大臣」という職位に就いている人物(自然人)が、株主の名義になるのだろうと思いました。
ただ、内閣改造などで財務大臣が交代した場合は、株主の名義も変更になるのだろうか、とも思いました。
それとも、「財務大臣」という職位自体が「法律上の人」という取り扱いになるのだろうか、とも思いました。
これは、「国有財産」の名義は誰になるのか、という議論になると思います。
「国有財産」というのは国が所有者だ、というのは概念的には理解できるのですが、
例えば株主名簿にはどのような名が記載されるのだろうかと思いました。
例えば、不動産登記簿であれば、登記がなされていない(所有権者がいない)不動産は国が所有者と考えても
問題はあまり生じないように思いますが、
株主名簿の場合は、「株主がいない株式」というのは観念できないと思うわけです。
株式が国庫に納付されますと、株式の名義は「財務大臣」などとなるのかもしれないなと思いました。
この点についてあれこれと考えを巡らせてみますと、「ひょっとしそういうことか?」と思い当たることがありました。
それは、「国は動産は所有しない。」という考え方です。
この考え方についてはまだ自信はないのですが、不動産と株式とを比較してそう思いました。
動産は占有しないと所有権は発生しませんが、国の場合、一体誰が動産を占有をするというのでしょうか。
これは、「国は法律上の人なのか?」という議論につながるように思います。
それとも、国の場合は、法律上の人に関する取扱いとは異なり、占有をせずともそして登記や記載を行わなくても、
当然にその財産についての所有権を有する、と考えるのだろうか、とも思いました。
ただ、そのように考えるとしても、では「議決権は誰が行使するのか?」という問題も生じるわけです。
「議決権を行使できるのは法律上の人だけではないのか?」という気がするわけです。
国という漠然とした枠組みではなく、もう一段階具体的に踏み込んだ所有権者が、株式の場合に必要ではないかと思ったのです。
仮に株主名簿に記載される名義が「財務大臣」であるとすれば、「財務大臣」という職位を擬人化している、
という考え方になるのだろうかと思いました(「財務大臣」が国庫の代表者、という捉え方をするのかもしれません)。
「法律の世界における国の位置付け(法律行為の主体性の問題)」という、法律分野における国家論のような議論になるのですが、
まだ頭が整理し切れていませんので、今後も自分なりに頭を整理しつつ、この点については機会があれば考えてみたいと思います。