2017年4月9日(日)


2017年4月8日(土)日本経済新聞
株主総会 電子化じわり 議決権投票 東証1部の半数 負担減らし対話深める
(記事)



【コメント】
株主総会をインターネットを通じて執り行う上場企業が増加している、という内容になります。
東証1部に上場している企業の48%がインターネット経由で議決権を行使できる仕組みを導入している、とのことですが、
そのことに関連して、インターネットによる招集通知の発送を法制度上容易にする法改正が現在検討されているとのことです。
記事には、

>海外では招集通知を郵送せずホームページとメールで代替する企業が増えている。

と書かれていますが、日本では招集通知を電子化するための法的条件が非常に厳しいようで、記事には、

>日本では招集通知の郵送をやめるためには株主が同意する必要があり、電子化は0.03%にとどまる。

と書かれています。
記事には、この厳しい法的条件を緩和するため、

>法制審議会では、株主の同意なしでの電子化についても議論している。

と書かれています。
議決権の電子投票は法制度上2002年から可能になったとのことですが、
招集通知の電子発送に関しては法制度上厳しい要件を見なさなければならないというのは、率直に言えば整合性を欠くと思います。
なぜなら、株主総会において、招集通知の発送(招集)と議決権の行使(開催)とは一体不可分のもののはずだからです。
株主総会において、開催が主、招集は従、という関係にあろうかと思いますが、
それらのために用いる手段は統一されていなければならないわけです。
招集が書面なら開催も書面であるべきであり、開催が書面なら招集も書面であるべきなのです。
また、招集が電子的方法なら開催も電子的方法であるべきであり、開催が電子的方法なら招集も電子的方法であるべきなのです。
つまり、招集と開催は独立しているものではなく、互いに完全に連動しているものであるわけです。
ですので、現在の法制度のように、開催は電子的方法によるが招集は書面による、という株主総会が一番整合性を欠くわけです。
したがって、議決権の電子投票が法制度上2002年から可能になったのであるならば、
実は、招集通知の電子発送も法制度上2002年から可能に(容易に)する、という法改正が同時に必要だったわけなのです。

 


ある会社で議決権の電子投票を行うということは、株主はインターネットを使用できる、ということが前提だということです。
そうであるならば、古今東西、インターネットに接続するためのアカウントは持っているが電子メールは持っていない、
というインターネット利用者は現実には考えられないわけですから、
その会社では招集通知の電子発送を行うことを前提とした招集方法を取らなければ、
招集と開催の整合性がない、ということになるわけです。
現在の日本の上場企業における議決権の電子投票は、インターネットを利用しない株主もいることを考慮して、
書面による方法に加え、インターネット経由でも議決権を行使できる、という位置付けになっています。
ですので、招集通知の発送は書面によることが原則となっているのだと思います。
それはそれで、現実への対応ということで意味はもちろん分かるのですが、
私がここで言いたいのは、「招集と開催の整合性」なのです。
端的に言えば、招集の手段と開催の手段は同じであるべきなのです。
なぜなら、株主は同じ手段を用いて情報を受領しそして発信するからです。
受領の手段と発信の手段が異なることほど利便性を損なうものはないのです。
会社にとっても株主にとっても、情報受領の手段と情報発信の手段は統一するべきなのです。
もちろん、現実には、招集通知や議案は紙ベースの方が株主にとって読みやすい、ということはありますので、
紙ベースの招集通知や議案を否定するつもりは全くありませんが、
要するに、私がここで言いたいのは、手段としては統一する方が論理的だ、ということなのです。
それで、株主総会の招集通知の電子発送を行う場合の論点(今後の法改正の論点)に関して一言書きたいのですが、
それは、その場合は「株主名簿」の記載事項を現行の記載事項に1点増やさなければならない、という点です。
その追加すべき株主名簿記載事項とは、「電子メールアドレス」です。
現行の会社法(第121条)には、株主名簿の記載事項として「株主の氏名又は名称及び住所」が定められています。
しかし、この「株主の氏名又は名称及び住所」に加え、「株主の電子メールアドレス」を株主名簿の記載する必要があります。
そうでなければ、会社は株主に招集通知を発送できないからです。
株主総会について、会社が招集(招集通知の発送)と開催(議決権の行使)を電子的手段に統一する場合は、
電子メールアドレスを持っていない株主は当然に株主になれない、という考え方になります。
現行法上、住所がない株主は株主になれるでしょうか。
ですので、会社法上「株主名簿記載事項」を1点増やす、ということが今後の法改正の論点になるのではないかと思います。
現行の制度のように、株主によって議決権の行使方法が異なる、というのは、現実的な利便性が高まるという利点はある一方、
公平性や透明性を担保する観点からは、やはり理論的には議決権の行使方法は全株主で同じでなければならないと思います。
定款に「会社は、株主総会の招集通知の発送は電子的手段により行い、議決権の行使も電子的手段により行う。」と定めれば、
電子メールアドレスの記載が必須になる(電子メールアドレスを持たない株主は当然に会社の株主になれない)結果、
逆に株主名簿に「住所」を記載する必要はなくなる、という考え方も案としては出てくると思います。
招集通知の電子発送を制度化するとなりますと、会社法上は株主名簿に株主の電子メールアドレスを記載することになる、
という考え方になると思います。



That a notice of a calling of shareholders meetings is dispatched by means of an electromagnetic method
means that an e-mail address of shareholders' is entered in a shareholder register.

株主総会招集通知を電子的方法を用いて発送するということは、
株主の電子メールアドレスを株主名簿に記載する、ということです。