2017年4月8日(土)



2017年4月8日(土)日本経済新聞
突然の相続、費用や手続きは? 税申告だけで数十万円
(記事)




2017年4月8日(土)日本経済新聞
親から贈与 賢く使う 生活費や教育費は非課税
(記事)


 



【コメント】
話の簡単のため、母(親)1人子1人の家族を例に考えてみましょう。
親から子へ現金を譲り渡されたとしましょう。
その譲り渡しが生前のことであれば、子には所得税(受取寄附金)が課税され、
その譲り渡しが死後のことであれば、子には相続税(財産の相続)が課税されるわけです。
この時、所得税率と相続税率が同じであれば税務上は何の問題も生じないわけですが、
所得税率と相続税率が異なっていた場合は、親子は節税をしようとするでしょう。
所得税率の方が相続税率よりも高い場合は、生前に現金を寄附するのは避けるべきでしょうし、
所得税率の方が相続税率よりも低い場合は、生前に現金を寄附するようにするべきでしょう。
このような節税策が考えられるという点を鑑みますと、やはり所得税率と相続税率が同じであるべき、
という考え方に行き着くわけですが、現行の税制ではそうはなっていないわけです。
所得税制も相続税制も複雑な仕組みになっています。
そこで、相続は親子間でのみ行われる、という点において、相続は通常の寄附とは明確に定義・位置付けが異なるわけですが、
生前に親から子へ現金が寄附された場合は、所得税法上、相続税率と同じ税率を所得(受取寄付金)に適用する、
という考え方はどうであろうかと思いました。
つまり、「誰から現金を受け取ったか(誰から所得を稼得したか)」で適用する税率を変えるわけです。
勤務先(給与)や顧客(売上)や上場企業(配当金)や市場の投資家(株式譲渡益)や国(国債の利息)や友達(寄附金)から
所得を稼得した場合は、所得税率40%を適用するが、
親(生前贈与)から所得を稼得した場合は、所得税率20%を適用する、
といった具合に所得を稼得した相手方によって所得にかかる税率を変える、という考え方はどうであろうかと思いました。
もちろん、この設例における相続税率は20%、ということになりますが。
法理的には、所得に区別はない(100円は100円、その人にとっては同じ価値を持つ)わけです。
勤務先から受け取った100円と親から受け取った100円は、金銭的価値としては全く同じであるわけです。
所得(所有現金の増加額)はどちらも同じ、ということから、
所得を稼得した相手方(友達からか親からか)によって所得にかかる税率を変えるのはおかしい、という考え方になるわけです。
税というのは、その本質として金銭的価値(簡単に言えば「金額面」)以外は度外視するものです。
しかし、親からの寄附の場合は、家族生活上、相続ということも現実には考慮に入れていかなければならないわけです。
実生活上、親から子への生前の贈与は相続の前渡しに過ぎない、という側面もあるわけです。
そうしますと、その生前贈与に通常と同じ所得税率を課するのは正しいとは言い切れないわけです。
親子関係(将来の被相続人と相続人という関係)を特段に鑑みた所得税率であるべきだ、という考え方が出てくるわけです。
つまり、所得額に応じ所得税率が累進する累進課税ならぬ、親から稼得した所得のみに特別な税率が適用されるという”親類課税”、
という課税方法が考えられるように思ったわけです(”親類課税”というのは私の造語です)。

 



税制度として相続税を所得税に一本化するべきだ、と言いたいのではありません。
死亡を起因とする相続という概念は税制上もあっていいと個人的には思います。
不毛な節税策を生まないように、親から子への生前贈与には相続税率と同じ税率の所得税率を課する、と考えるわけです。
以前、同じ親から子への「遺産の受け取り」でも、遺言に基づく場合は贈与(所得税の課税対象)という取り扱いになり、
法定相続に基づく場合は相続(相続税の課税対象)という取り扱いになる、という考え方はどうかと私案として提示しましたが、
同じ「所得の稼得」でも、親から稼得した所得には相続税率と同じ所得税率が適用され(相続税ではなく所得税の課税対象)、
親以外から稼得した所得には通常の所得税率が適用される(これも所得税の課税対象)、という分類も可能だと思いました。
これは、課税の際「所得にどのような類型を設けるか」、という制度構築上の議論になるわけです。
今日紹介している2つ目の記事を例に書けば、子が親から稼得した所得について、
「遊ぶ金」か「生活費や教育費」という類型を現行の所得税法では設けているわけです。
子が親から「遊ぶ金」を受け取った場合は通常の所得税率が適用されるが、
子が親から「生活費や教育費」を受け取った場合は0%の所得税率が適用される、
と現行の所得税法は定めているわけです。
要するところ、所得の類型の問題であるわけです。
他の言い方をすれば、「所得をどう区分するか」の問題であるわけです。
民法に相続という概念と規定がある以上、所得税法上も、その概念を取り入れた課税方法を行う必要があると思うわけです。
親から稼得した所得と親以外から稼得した所得は異なる、という線引きを行うことも、所得税の概念上可能なことだと思いました。