2017年4月5日(水)



2017年4月5日(水)日本経済新聞
不動産の所有者情報 「ネットで常に無料公開を」 規制改革会議論点案 企業が開発しやすく
(記事)




登記情報提供サービス(一般財団法人民事法務協会)
ttp://www1.touki.or.jp/gateway.html

 


【コメント】
政府は、不動産登記情報をインターネットで常時無料公開にする方針であるようです。
現在は、一般財団法人民事法務協会が不動産登記情報をインターネットで提供しているのですが、協会のホームページには、

>登記情報提供サービスは,登記所が保有する登記情報をインターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービスです。

と書かれてあり、事実上同じサービスは既に提供されている、と言えると思います。
ただ、今後、利用料金が無料になり、サービス利用時間も平日のみから24時間に変更になる、ということなのだと思います。
また、登記手数料についても、料金の引き下げや無料化を検討しているとのことです。
不動産登記情報の公開に関してですが、不動産の所有情報は個人情報で公開する必要はないのではないかと感じる人もいる
のかもしれません(個人の所有財産を公開する必要があるのかと)が、法理的にはその考え方は全く逆です。
そもそも、物というのは、現に手元に持っている人のものです。
なぜある物がその人の所有物であると分かるのかと言えば、現にその人が手元にそれを持っているからであるわけです。
甲さんがある目的物を現に手元に持っている、だから、その目的物は甲さんの所有物なのです。
つまり、所有物(誰がどのような物を所有しているのか)というのは、実は誰の目にも明らかなことであるわけです。
むしろ、人が目で見て「ああ、あの人はあれを所有しているのか。」と分かることこそが、所有していることの証であるわけです。
現に手元に持ってはいないのに、遠くにある物を指し「あれは私の所有物です。」と主張しても、それは通らないわけです。
しかし、不動産の場合は、言葉通りの意味で「現に手元に持っておく」ということが物理的にできません、
ですので、権利関係を明らかにするための代替的手段として、登記ということを行うことにしたのです。
法理的には、所有物が他人に(公に)明らかにならないことなどない(むしろ逆に、それでは権利関係が不明確になる)のです。
インターネットで他人の所有財産を自由に見れる、とだけ聞きますと、何やら恐ろしい気がするかもしれませんが、
法理的には逆に、「現に手元に所有している」という状態(その状態が他者に見えること)こそが、
そのまま所有という権利・状態を表している、と考えなければならないのです。
童話「星の王子さま」では、「大切なものは、目には見えない。」という人生哲学が語られますが、
昨今話題の道徳教育や情操教育に関してはその考え方でよいのですが、
「権利関係」というのはむしろ誰の目にも見えなければならないわけです。
童話「星の王子さま」では、所有財産(金持ちになること等)は人生では大切ではない、と教えたいのかどうかは知りませんが、
法律の世界では、むしろ「誰の目にも見えること」こそが所有の状態を明らかにするもの、と考えなければならないのです。
したがって、法務局やインターネット上で不動産登記情報を自由に見ることができるというのは、当たり前のことと言いますか、
他の言い方をすれば、そうでなければ所有が明らかにならない、という言い方をしても言いと思います。
不動産登記情報は、昨今話題の個人情報ではありません。
むしろ、不動産登記は「所有している」という状態を別の形で体現したものに過ぎないのです。
あなたが今手に持っている物(所有物)について、他者に対し「私が今手に持っている物を見ないで下さい。」とは言えないように、
「俺の個人財産の登記情報を勝手に見るな。」とは法理的には決してそして当然に言うことはできないのです。
「所有」(の状態)というのは、実はそもそも self-explanatory (他者が目で見てそのまま分かる)なものなのです。

 

Owners of real estate are opened to the public. Or rather, owners of all kinds of estate are self-explanatory.

不動産の所有者は公開されるものです。というよりはむしろ、あらゆる種類の財産の所有者は、そのままで明白なのです。