2017年3月28日(火)



2017年3月28日(火)日本経済新聞
TASAKIがストップ高 TOBで個人が値幅取り
(記事)



2017年3月28日(火)日本経済新聞
すかいらーく株 筆頭株主が追加売却へ
(記事)


2017年3月28日(火)日本経済新聞
中国不動産大手の万科 役員改選 当面見送り 投資会社の影響排除か
(記事)

 

過去の関連コメント

2017年3月27日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201703/20170327.html

 


【コメント】
昨日、株式会社TASAKIのMBOを題材に、数多くの論点についてコメントを書いたかと思います。
本日2017年3月28日(火)の日本経済新聞に、昨日書きました論点と関連のある記事がいくつかありましたので紹介します。
まず、最初の記事は、公開買付の発表を受けて、株式会社TASAKIの株価が買付価格にさや寄せした、という記事です。
記事には、MBOのことを”経営陣が参加する買収”と書かれていますが、
昨日私が書きました内容を踏まえますと、正しくは・元来的には「経営陣自身が実施する買収」と言わねばならないでしょう。
それから、記事には、株式会社TASAKIはMBOを公開買付方式で実施する、と書かれているのですが、
この場合も株式会社TASAKIはいきなり株主総会を招集・開催しても何の問題もない、と言えると思います。
つまり、公開買付者は公開買付を実施する必要はなく、株式会社TASAKIはすぐに株主総会を招集・開催し、
株式会社スターダストを完全親会社、株式会社TASAKIを完全子会社とする、
現金を対価とする株式交換を実施するための決議を取るようにすれば、それで事足りる、となると思います。
プレスリリースによりますと、株式会社スターダストは現時点では株式会社TASAKI株式を1株のみしか所有していませんが、
それでも何の問題もありません(株式会社TASAKI株式を1株も所有していなくても何の問題もありません)。
現在の、より正確に言えば基準日の、株式会社TASAKIの株主が株式交換の議案に賛成しさえすれば、
株式交換は実施できますし、株式交換の効力発生日に株式の非上場化・MBOは完了します。
MBOの場面であっても、公開買付への応募=株式交換の議案への賛成、という関係は成り立っているのです。
次の記事についてですが、すかいらーくの筆頭株主である投資ファンドが所有株式を売出す、という内容になります。
すかいらーくは、2011年に投資ファンドから資金提供を受けてMBOを行ったのですが、2014年10月に再上場を果たしたようです。
すかいらーくに出資をしている投資ファンドの立場からすると、投資資金の回収を行う必要がありますので、
会社には再上場を果たしてもらいたい(そして市場で所有株式を売却していきたい)、という気持ちがあるのはもちろん分かります。
しかし、MBOを行う最終目的が再上場なのであれば、それは始めからMBOを行う必要はない、ということを意味するわけです。
経営再建や戦略的投資を行う計画があり、投資額がかさんで収益が短期的に押し下げられる可能性があるため、
株式の非上場化を行う、というふうにMBOの目的については説明されますが、
率直に言えば、一時的に収益性が低下することなど会社は気にしなくてよいと思います。
経営再建や戦略的投資は、株式を上場したままでも行えます。
昨日私が書きました論点を踏まえて書けば、経営再建や戦略的投資が経営(会社側)の目的です。
このことと所有(株主側)の目的とは関係がないのです。
他の言い方をすれば、理論的には、経営再建や戦略的投資を行っても所有(株主側)の目的は達成されない、
ということになるのです。
一時的に収益性が低下しても、それが将来の業績回復や利益の拡大につながるのなら、株主に迷惑がかかるということはないのです。
経営再建や戦略的投資が将来の業績回復や利益の拡大につながるかどうかを判断するのは、
投資家の役割(投資判断の範疇)なのです。
経営再建や戦略的投資のたびに非上場化を行うのなら、全ての上場企業が非上場化しなければならなくなるでしょう。
端的に言えば、MBOを行う目的は非上場化だけだ(MBOでは再上場は一切想定しない)、という言い方ができるのです。
昨日も書きましたが、MBOを行う目的は「所有と経営の一致」だけなのです。
その意味において、投資ファンド等がMBOを行う際に出資することはあり得ない、と言えるのです。

 



最後の記事についてですが、では資金の出し手である投資ファンド等が取締役を会社に派遣するとしたらどうか、
という論点もMBOでは考えられようかと思います。
この記事は、敵対的買収が行われた後も会社が取締役のメンバーを変更しないという意思表示をしたという内容ですが、
日本同様、株主総会議案は会社が作成する、ということが事の問題点の原因なのであろうと思います。
MBOという場面では、会社と投資ファンドとが協力するというむしろ友好的な買収であるわけです。
MBOを行った後、会社が投資ファンドの意向を受けて投資ファンド側の人材を取締役に選任する、ということはあり得ます。
その場合は、確かに、「所有と経営が一致している」状態が(事後的ではあるものの)実現している、と言えるわけです。
しかし、それでもやはり問題があります。
それは、結局のところ、投資ファンドは所有株式を売却することが本業だ、という点です。
たとえ一時的に「所有と経営が一致している」状態を作り出しても、投資ファンドは所有株式を売却しなければならないのです。
それは、どこまで行っても「所有と経営の分離」が潜在している、ということなのです。
それに比べ、経営陣が、この文脈に沿って厳密に言えば「現経営陣」が、必要な資金を全額個人財産から拠出して
MBOを行う場合というのは、所有株式を売却する必要がない、ということになるわけです。
さんちゃんストア(家族経営)ではありませんが、株式の譲渡を前提とはしない会社組織が、そのMBOでは完成するわけです。
この状態というのは、まさに「所有と経営の一致」が名実共に結実している(所有と経営がその後分離することはない)状態だ、
と言えるわけです。
一時的にでは決してなく、会社が存続する限り「所有と経営とが一致している会社」を作ること、
それが元来的なMBOの目的だ、と言えると思います。

 

When the ultimate purpose of a MBO lies in the re-listing,
the purpose of management is different from the purpose of ownership from the beginning.
It means that not a private equity fund nor financial services but management themselves only
should invest their own money in funds for a MBO.

MBOを行う究極の目的が再上場にあるのなら、最初から経営の目的と所有の目的は異なっているということになります。
つまり、MBOのための資金は、プライベート・エクイティ・ファンドや金融機関が出すのではなく、
経営陣達自身が個人で所有する現金でもって全額拠出するようにしなければならない、ということです。

 

Even though directors are elected by shareholders,
the directors can't raise a stock price itself in the market by any means.
The reason for it is that,
the operation of a company is a company's business, whreas the trading of shares is shareholders' business.

たとえ取締役が株主に選任されているのだとしても、
取締役はどのような手段を用いても市場における株価そのものを上昇させることはできないのです。
その理由は、会社の運営は会社の本分であり株式の取引は株主の本分だからです。