2017年3月26日(日)
2017年3月26日(日)日本経済新聞
財団株主 じわり増加 「会社のいいなり」 海外投資家NO
(記事)
一般財団法人とは? | 一般社団法人設立.net
ttp://www.koueki-houjin.net/zaidan/
法務省:一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A
ttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html
過去の関連コメント
2017年3月21日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201703/20170321.html
2017年3月23日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201703/20170323.html
ざいだん【財団】
1 一定の目的のために提供された財産の集団で、法律上一個の物権と見なされるもの。
2 「財団法人」の略。
用例・作例
育徳―
【財団法人(―ハフ―)】
公益法人の一つで、育英財団・図書館・病院などに多く見られるもの
国語辞書の第1の説明は非常に難解だなと思います。
前半の意味は分かるのですが、後半の「法律上一個の物権と見なされるもの」という意味がよく分からないなと思います。
例えば、株式会社でも、法人は複数の財産を所有していますが、その複数の所有財産の全てを「株式」という形で表象している
かと思います(株式に所有財産の全てが集約されているイメージ)。
財団もそれに近いイメージでよいのだろうか、と思いました。
また、結局のところ、今私が抱いているイメージに近いということなのだと思いますが、
財団とは「財団法人」の略である、と第2の説明が国語辞書には載っています。
以下、財団とは「財団法人」のことだと考えることにしましょう。
現在では、法律が変わり、「財団法人」という名称は用いず、「一般財団法人」という名称を用いているようです。
紹介している「一般社団法人設立.net」の解説ページには、一般財団法人について次のように書かれています。
>一般財団法人は、一般社団法人と同じく平成20年12月からはじまった「新公益法人制度」により、設立できるようになった
>法人形態です。
>今までの財団法人とは異なり、団体の公益性や目的は問われず、一定の財産があれば誰でも設立することができます。
>一般財団法人は、財産に法人格を与えるもので、設立しようとする者が、300万円以上の財産を拠出し、
>財産の管理者が財産を運用し、運用によって生じる利益をもって、事業を行います。
この説明を読む限り、現在の「一般財団法人」とは、事業の器としては結局株式会社にも近いものではないか、と思いました。
特に、「団体が営利を目的としているかどうかは問われない」という点において、
現在の「一般財団法人」は株式会社の代替となり得る、と思いました。
それで、本日2017年3月26日(日)の日本経済新聞の記事には、財団が会社の株主になることの問題点が指摘されています。
この記事では、財団の位置付けがごちゃ混ぜになっているように思います。
財団の位置付けは大きく分けると3パターンあると思いましたので、まず財団の位置付けを整理したいと思います。
「財団の位置付け」
「財団の位置付け」を見てもらうと分かるように、財団の位置付けには、
「@財団法人の設立者が会社設立者の場合」と「A財団法人の設立者が法人の場合」と
「B財団法人と株式会社とが全く関係がない場合」の3つに分けられるかと思います。
パターン@とパターンAの場合は、記事に指摘してある問題点が当てはまるように思いました。
パターンBの場合は、記事に指摘してある問題点はあまり当てはまらないように思いました。
少なくとも、意思決定という点においては、財団は「会社のいいなり」という部分は全くないと思いました。
ただ、上場企業における財団は、パターン@かパターンAもしくはそれらの折衷の形態になっているのかもしれません。
また、先ほど、現在の「一般財団法人」は株式会社の代替となり得る、と書きましたが、この点に関して言えば、
パターンAの場合は財団法人を株式会社の連結の範囲に含めるべきではないか(連結外しができてしまう)、と思いました。
それから、2017年3月21日(火)のコメントでは書かなかったのですが、
プレスリリース中の図がその時は理解できなかった点がありましたので、一言だけ追記をします。
2017年3月9日
DMG森精機株式会社
(追加版)一般財団法人森記念製造技術研究財団の社会貢献活動支援を目的とした自己株式の処分、取得及び消却に関するQ&A
ttps://www.dmgmori.co.jp/corporate/ir/ir_library/pdf/20170309_manufacturingresearch_qa.pdf
「Q10:従来の現金寄附が配当に移行したことによるキャッシュアウトの変化」
(3/3ページ)
結論だけ言えば、この「Q10」のQ&Aはこれで合っています。
ただ、2017年3月21日(火)の時点では、「なぜキャッシュアウトが105百万円減少するんだ?」と私は分からなかったのです。
今日改めて考えてみると、キャッシュアウトが105百万円減少する理由は分かったのですが、
プレスリリースの資料(解説図)は少し説明が不足していると思いましたのでその点について書きたいと思います。
キャッシュアウトが105百万円減少する理由は、株式の譲渡が行われるからだ、と理解すればよいと思います。
実際には株式の譲渡そのものは行われないのですが、「自己株式の処分」と「自己株式の取得」が同時に行われることで、
「自己株式の取得」に応じた株主から財団へ株式の譲渡が行われたことと同じ効果が生じるわけです。
他の言い方をすると、これは結局、他の株主が「105百万円」現金を受け取らなくなった、ということです。
受取配当金が譲渡株主から財団へ移行した、ということです。
その分、キャッシュアウトが減少したのです。
From another viewpoint, the fact that somebody transferred his shares to
the foundation
has enabled the company to reduce the amount of a donation to
the foundation.
To put it simply, he no longer receives a dividend afterward
(The foundation will receive the same amount instead.).
異なる観点から言えば、誰かが所有株式を財団に譲渡したので、会社は財団への寄附の金額を減らすことができたのです。
簡単に言えば、株式を譲渡した人はその後は配当を受け取らない(財団がその分代わりに受け取る)、ということです。
法務省の「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」には次のようなQ&Aが載っています。
>Q11 遺言により一般財団法人を設立することはできますか。
>A11 遺言によっても,一般財団法人を設立することが可能です。
遺言により、遺産を既存の・設立済みの社団法人や財団法人に寄附する(遺言に基づき遺言執行者が遺言の内容を執行する)、
というのは聞いたことがありますが、遺言により一般財団法人を設立できる、というのは初めて聞きました。
以前、遺産や生前贈与や遺贈や相続に関するコメントの中で、
「戦前の相続は、戸主の地位に専属するものを承継するものであった」と書きました。
一方で、「現在の相続は、被相続人から分離・独立できるものを相続することだ」と書きました。
「戸主の地位に専属するもの」とは、家族を扶養するための権利や義務のことです。
一方、「被相続人から分離・独立できるもの」とは、まさに財産のことです。
「家族を扶養するための権利や義務」は他者に絶対に譲渡できない(制度上、分離が観念できないもの)ものである一方、
「財産」は他者に自由に譲渡・処分ができ、分離・独立が観念できるものであるわけです。
これらのことと遺言により一般財団法人を設立することと何の関係があるのかと思われるかもしれませんが、
このQ&Aを見て私は直感的に「設立者が死亡して一体どうやって財団法人を運営していくんだ?」と思ったのです。
Q14には、一般財団法人の定款の記載事項が載っているのですが、設立者に関する記載事項として、
>(4) 設立者の氏名又は名称及び住所
>(5) 設立に際して各設立者が拠出をする財産及びその価額
と書かれています。
一般財団法人の設立時には設立者が既に死亡している、というのはやはり意味不明だと思いました。
一応、設立後の一般財団法人の事業運営自体は評議員と理事と監事が行っていく(設立者が事業運営を行うわけではない)わけですが、
そうは言っても、設立者(=出資者)がいない(死亡している)法人というのはあり得ないわけです。
以前、「法人は始めに『資本』ありきだ。」と書きましたが、出資する側から見ると、法人には必ず出資者がいるわけです。
例えば、遺言により株式会社を設立することができるでしょうか。
仮に遺言執行人が設立の手続きは代行するにしても、その時会社の株主は一体誰になるというのでしょうか。
死亡者が株主になれるでしょうか。
株式会社では出資者(株主)は定款に記載したり登記をしたりしませんが、出資者(株主)がいない株式会社はないわけです。
私が思うのは、「死亡者は何かを行う(法律行為を行う)ことはできない。」ということなのです。
生前贈与は、紛れもなく生きている人の法律行為です。
しかし、遺贈は、一見すると死亡者の法律行為に見えますが、意思こそ死亡者のものですが実際には遺言執行人による法律行為です。
これは、財産だけは人から分離・独立できる(譲渡や処分ができる)ものだからこそ、
例えば遺言執行人による代行(死亡者に代わり遺言執行人が贈与を代行する)が可能というだけだと私は思うわけです。
人から分離・独立できないものは、誰かが代行することはできないのです。
法人の設立はどうでしょうか。
法人の設立というその人本人しか行えない法律行為を、誰かが代行することなどできるでしょうか。
財団への贈与と寄附というだけなら、贈与と寄附の対象物は人から分離・独立できるものですから、誰かが代行できるだけなのです。
他の言い方をすると、寄附と出資は根源的に異なる(寄附はその時点で全てが終わるが出資はその後がある)、ということなのです。
「戦前の相続」は、まさに「その後」が中心的事柄(家族の扶養等)なのですが、「現代の相続」は相続時に全てが終わるのです。