2017年3月21日(火)



2017年3月18日(土)日本経済新聞
DMG森精機の株譲渡議案 「安定株主作りではない」
(記事)




2017年3月2日
DMG森精機株式会社
第69回定時株主総会 招集ご通知
ttps://www.dmgmori.co.jp/corporate/ir/stock/pdf/69invite.pdf

 

2017年3月8日
DMG森精機株式会社
Shareholders Relations資料(当社の新しいガバナンス体制および株主総会議案に関する補足説明資料)
ttps://www.dmgmori.co.jp/corporate/ir/ir_library/pdf/20170308_srppt.pdf

 

2017年3月9日
DMG森精機株式会社
(追加版)一般財団法人森記念製造技術研究財団の社会貢献活動支援を目的とした自己株式の処分、取得及び消却に関するQ&A
ttps://www.dmgmori.co.jp/corporate/ir/ir_library/pdf/20170309_manufacturingresearch_qa.pdf

 


【コメント】
今日は「国際森林デー」ということで、DMG森精機株式会社の記事を紹介します。
また、DMG森精機株式会社は明日、定時株主総会が開催されるようです。
記事では、会社の社長が代表を務める財団に対する自己株式の譲渡といった書き方がなされていますが、
プレスリリースを読みますと、正確には、信託銀行を割当先とする自己株式の処分、と言うべきだと思います。
そして、この自己株式の処分では、処分価額が1株当たり1円となっている点が問題となっているようです。
そこで、有利発行に関する特別決議を株主総会で採る、と会社側は言っているわけです。
また、財産の保全及び効率的な管理と議決権を分離して客観的な基準による行使を担保するため、
自己株式の処分には「信託スキーム」を採用すると書かれています。
つまり、自己株式の処分は信託銀行が引き受ける一方、議決権の行使は信託銀行が自分の意思に基づき独立して行い、
配当は財団が受け取る、というスキームになっているようです。
この手の信託については詳しくは分からないのですが、例えば法人税法上は配当は信託銀行をパススルーしないと思います。
つまり、自己株式の処分を引き受けた信託銀行は文字通りのDMG森精機株式会社の株主であるため、
信託銀行には受取配当金(益金)が認識されると思います。
仮に、信託銀行が信託の設定に基づき「収益支払い」という形で財団に対しDMG森精機株式会社から受け取った配当を支払うならば、
それはただ単に信託銀行から財団への寄附金(損金不算入)という取り扱いになると思います。
簡単に言えば、出資者をパススルーするなどという課税方法はないわけです。
会社制度上、事業で稼得した所得が事業の器をパススルーことは観念できますが、出資者をパススルーことは観念できないわけです。
DMG森精機株式会社への出資者は、この場合は紛れもなく信託銀行なのです。
DMG森精機株式会社も財団も、信託銀行には議決権行使の指図はできない契約(信託の内容)となっているとのことですが、
私的な契約により議決権の行使は誰が指図するかを任意に決めることは当事者の自由だとは思いますが、
私的な契約により配当を株主から他の誰かへパススルーさせることはできないのです。
当事者間でどのように信託に関する契約を締結しようとも、信託銀行には受取配当金(益金)が認識されます。
それから、「第69回定時株主総会招集通知」についてなのですが、会社のウェブサイト上の開示日付は2017年3月2日であり、
「第69回定時株主総会招集通知」そのもの(書面)の日付は2017年3月3日になっています。
DMG森精機株式会社は、2017年3月3日付けで株主に対し「第69回定時株主総会招集通知」を送付したのだと思います。
株主に対し送付された「第69回定時株主総会招集通知」は計72ページあるわけなのですが、
DMG森精機株式会社は「第69回定時株主総会招集通知」だけでは説明不足だと考えたのでしょう、
2017年3月8日になって、補足説明資料とQ&Aの追加版を会社のウェブサイト上で開示しています。
これらの追加的開示情報を見て私が思ったのは、会社はこれらの追加的情報も株主に送付したのだろうか、という点です。
株主総会で議決権を行使するのに十分な情報を「株主総会招集通知」に記載しなければならないわけです。
会社のウェブサイト上で追加的情報を開示するだけで済ませてよいのであれば、始めから招集通知の送付はいらないわけです。
株主に送付する招集通知には、「必要な情報は弊社ウェブサイトをご覧下さい。以上」とだけ記載すればよい、となるわけです。
これは会社法上定義される「招集通知の範囲」の問題になりますが、情報不足なら補足送付・追加送付が求められると思いました。
最後に、これは若干言葉尻を捉えた指摘になりますが、自己株式の処分・割当は少なくとも株式の「発行」ではありません。
なぜなら、処分・割当を行う株式は既に発行されているからです(発行済みの株式を処分するのが自己株式の処分です)。
ただ、自己株式の処分については、会社法上、原則として新株発行と同じ規制(募集株式の発行等の規制)が加えられています。


This is not the favorable issue.

これは有利発行ではありません。