2017年3月20日(月)
2017年3月20日(月)日本経済新聞
チラシ広告も「勧誘」に相当 最高裁判決 契約 取り消し可能に 企業、表示内容・手法に注意
(記事)
>従来、勧誘とは対面販売や電話セールスなどで「特定の消費者に働きかけ、個別の契約を結ぶ意思の形成に直接影響を与えること」
>と解釈されており、
とのことです。
消費者契約法の定義に基づくと、「勧誘」とはあくまで「特定の消費者に対し勧誘すること」を意味するのだから、
不特定多数を対象にした広告や折込チラシは消費者契約法に言う「勧誘」には該当しない、という解釈になるようです。
しかし、今年2017年1月の最高裁判決では、「チラシ配布は消費者契約法に言う『勧誘』に該当する。」
という判断が示された、とのことです。
一審・二審では、「不特定多数向けのチラシ配布は勧誘に当たらない」との判断だったのですが、
最高裁判決では、「不特定多数の消費者に向けられた広告であっても、直ちに『勧誘』に当たらないということはできない」
との判断が示されたようです。
消費者契約法については詳しくは分かりませんが、記事を読む限り、一審・二審の判断が正しいように私は思います。
最高裁がこのような判断を示した理由として、記事には、
「消費者の意思形成に不当な影響を与える行為を規制する法の趣旨に照らせば」、と書かれています。
しかし、このことを理由とするのは間違いであろうと私は思います。
私がそう考える理由が2017年3月20日(月)の記事に書かれていましたので引用します。
>景品表示法などの表示ルール自体が変わったわけではない。
結局、「広告の表示が適切かどうか」は景品表示法で判断されることなのではないでしょうか。
消費者契約法は、あくまで「個別の契約」に関して消費者の意思形成に不当な影響を与える行為を規制しようとするものであって、
「個別の契約」以外の場面における消費者の意思形成に不当な影響を与える行為を規制しようとするものではない、
と解釈するべきだと思います。
他の言い方をすると、全く同じ内容の表示であっても、「個別の契約の際の表示」に関しては消費者契約法の規制対象となり、、
「広告の表示」に関しては景品表示法の規制対象となる、ということではないかと思います。
たとえ「消費者に対し意思形成に不当な影響を与えた」としても、「どの段階で」消費者に不当な影響を与えたのかで、
適用される法律が変わってくる、ということだと思います。
以上の私の理解が正しいとすると、チラシ広告は当然に消費者契約法にいう「勧誘」に該当しない、ということになるわけです。
「景品表示法と消費者契約法と『AIDMAモデル』の関係」
「AIDMAモデル」のうち、認知段階(attention)と感情段階(Interest, Desire,
Memory)に関しては景品表示法の規制対象となり、
行動段階(Action)に関しては消費者契約法の規制対象になる、という関係に、消費者の行動と法律とがなっていると思いました。
他の言い方をすると、「消費者の購買決定プロセス」のうち、上記2段階に関しては景品表示法の規制対象となり、
最後の1段階に関しては消費者契約法の規制対象になる、というふうにプロセスと法律とを整理できると思いました。
広告を一切行っていない商品の場合は、AIDMAモデルの全ての段階が対面販売や電話セールスのプロセスに含まれますので、
その場合は、AIDMAモデルの全ての段階が消費者契約法の規制対象、ということになるわけです。
判断が難しいのは、
広告も対面販売も電話セールスも行ってはいないが、商品に直接付されている表示(ラベルやPOPなど)が不当であった場合
かと思います。
一番分かりやすいのは、スーパーの棚に並べてある商品のラベルやPOPが不当であった場合です。
このような場合は、基本的には景品表示法の規制対象になるとは思います。
しかし、今日の私の捉え方を応用しますと、この不当表示は、
スーパーでの購入時点(まさに、Point
of
Purchase。Action時点)での不当な表示、ということになります。
他の言い方をすれば、ある1人の消費者とスーパー(売主)との間の売買契約締結時点での不当表示、ということになります。
売主は、個別の商品説明こそしなかったものの、
不当な表示のラベルやPOPを通じて、販売する商品について不当な説明をしたも同然、という解釈は成り立つと思います。
そうしますと、これらのラベルやPOPは、消費者契約法の規制対象になる、という解釈になると思います。
もしくは、これらのラベルやPOPは、景品表示法と消費者契約法の両方に違反している、という解釈になると思います。
また、店内で作成したPOPであればともかく、スーパーやコンビニ(いわゆる小売店)では、
メーカーが製造した商品をそのまま棚に並べて販売しているわけですから、仮にその商品のラベルが不当であったとしても、
売主(小売店側)には責任はない(ラベルの不当表示は製造者の責任ではないのか)、という解釈もまた成り立つと思います。
そのような場合、1つの解釈として、例えば、小売店には消費者契約法上の責任が生じ、
製造者には景品表示法上の責任が生じる、といった解釈・考え方もできるのではないかと思います。
少なくとも製造者には消費者契約法上の責任は生じない(表示を作成した責任が生じる→景品表示法上の責任が生じる、と考える)、
なぜなら、消費者と契約を締結したのはあくまで小売店だから、といった解釈も考えられると思います。
この点については、どのような不当表示についてどのような当事者に対しどのような法律に基づき責任が生じるのか、という、
切り分けの問題が本質的に潜在していると思います(どちらの法律が適用されるべきか、そして、どちらが責任を負うべきか)。
この点については非常に数多くの様々なケース(状況設定)が考えられると思いますが、クロレラかカローラか知りませんが、
「製造者と販売者とが異なる」というのは、消費者の立場から見ると切り分けが難しい法律問題が本質的に内在していると思います。
Actual contract of goods and services with advertisements.
広告を行っている商品(財やサービス)の実際の契約