2017年3月17日(金)


2016年12月3日
American Family Life Assurance Company of Columbus
日本法人への会社形態の変更について
ttp://www.aflac.co.jp/news_pdf/2016120301.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



 アフラック(日本における代表者・社長:山内裕司)は、このたび、
金融庁をはじめとする日米の関連当局の認可ならびに関係法令上の諸手続きの完了を前提として、
米国生命保険会社の日本支店から日本の生命保険会社(日本法人)に会社形態を変更する方針を決定しましたことをお知らせします。
なお、新しい会社の営業開始は2018年中を予定しています。
また、この日本法人への変更にあたっては、長期かつ安定した資産運用をこれまで通り継続していくために、
新たに資産運用会社を2017年中に設立したうえで資産運用部門を移管することも予定しています。
 当社は、「アフラック・インコーポレーテッド(Aflac Incorporated)」を親会社とする
生命保険会社「アメリカンファミリー ライフ アシュアランスカンパニーオブ コロンバス
(American Family Life Assurance Company of Columbus)」の日本支店として、
1974年11月から40年以上にわたり日本国内において営業を行ってまいりました。
その結果、現在、当社は2,400万件を超えるご契約をお預かりするまでに成長することができました。
 今般、当社は日本法人への移行によって名実ともに日本の生命保険会社となり、お客様の“「生きる」を創る”会社として、
これまで以上にお客様のお役に立つ存在となることを目指します。
 なお、当社がお預かりしているご契約につきましては、監督官庁である金融庁の認可を含めた
関連法令上の諸手続きの完了を前提として、新設する日本法人に2018年中に承継する予定ですが、
お客様のご契約や保障内容、その他サービスについても一切の変更はございません。
また、本社・支社およびコールセンター等のお問い合わせ先にも変更はございません。

 


【コメント】
米国の大手生命保険会社であるアフラックの日本支店が、
米国生命保険会社の日本支店から日本の生命保険会社(日本法人)に会社形態を変更する、
という内容のプレスリリースになります。
日本で営業活動を行っている米国の大手生命保険会社は、
近年になってアフラックのように日本法人を設立するという会社が増えているのですが、
以前はほとんどの生命保険会社は米国本社の「日本法人」という位置付けで営業活動を行っていました。
なぜ日本法人ではなく日本支店なのだろうか、と以前から疑問には思っていたのですが、実は今でも理由は分からないままです。
法人ではなく支店ということは、日本での営業主体には例えば資本金はない、ということになりそうだが、と思っているところです。
例えば、東京に本社を置く日本企業の大阪支店に、資本金があるでしょうか。
大阪支店は、会社(法人)の資本金の一部でもって開設(支店が運営)されているはずです。
プレスリリースにも、日本法人を新設する(法人を新たに設立する)、と書かれていますので、
現在日本で営業活動を行っているのは少なくとも法人、すなわち、日本の人ではないわけです。
法理的には、なぜ日本の人ではない人が日本国内で営業活動を行えるのだろうか、という疑問はあります。
アフラックの日本支店には、「日本における代表者」の肩書きを持つ人物はいますが、
それはやはり「会社の代表者」ではなく、一支店長と変わらない位置付けに過ぎないように思います。
会社の大阪支店にある財産は大阪支店所有の財産ではなく、あくまで会社所有の財産であるわけです。
大阪支店のみが所有する財産などはない(大阪支店の所有財産というのは法理的に観念できない)わけです。
所有権を持つことができるのは、あくまで「人」であって、「人」の一部である支店には所有権を持つことはできないわけです。
そう疑問に思いながら、アフラックのホームページを見ていますと、日本支店のみの決算情報が掲載されていました↓。


2017年2月14日
アフラック(日本社)
平成28年度第3四半期報告
ttp://www.aflac.co.jp/news_pdf/20170214.pdf


米国の生命保険会社の日本支店の決算公告は今まで何回か紹介したことがあるかとは思います。
改めて日本支店の決算情報を見てみますと、日本支店の貸借対照表が作成されています。
純資産の部には、「持込資本金」という勘定科目と「供託金」という勘定科目があります。
これらを見ると、日本支店には、「持込資本金」と「供託金」という支店固有の資本が存在するようです。
別の言い方をすると、日本支店の「持込資本金」と「供託金」を、アフラック米国本社が使用することはできない、
ということになります。
日本支店が使用する資本とアフラック米国本社が使用する資本とは互いに完全に分離・独立している、と言えるわけです。
このことは、日本支店は組織形態としては極めて独立しているものだ、という言い方ができると思います。
アフラック・グループのグローバル経営戦略上は、もちろん日本支店は米国本社の主導の下営業を行っていくわけですが、
私がここで言いたいのは、営業組織の法的形態・法律上の独立性の話です。
会計で言えば、どの範囲の資産負債が貸借対照表に計上されるのか(さらには、そもそも貸借対照表を観念できるのか)、
という点について考えているわけです。

 



日本企業の大阪支店の貸借対照表というのは作成できません。
しかし、米国の生命保険会社の日本支店の貸借対照表というのは観念できるようです。
このことは、煎じ詰めれば、同じ「支店」とは言っても、
日本企業の大阪支店と米国の生命保険会社の日本支店とでは、「支店」の定義が異なる、と言っていいように思います。
上記決算情報を見ますと、日本支店には法人税法が適用されているようです。
日本支店には固有の所得(識別できる所得、独立した所得)があるということでしょう。
例えば日本企業の大阪支店には固有の所得(識別できる所得、独立した所得)はないわけです。
また、日本支店は有価証券の所有者にもなっています。
さらに、日本支店は住民税まで支払っています(米国在住ではないということでしょう)。
これもまた日本支店のことを独立した「人」であると見なしているということでしょう。
しかし、そうかと思うと、損益計算書には「本社配賦経費」という費用項目があります。
これは管理会計の費用項目と言いますか、少なくとも「会社内部における費用」を意味するのではないかと思うのですが、
独立した会社間(親子会社間など)では配賦という考え方はしないと思います。
支店毎の収益性を管理する上で、本社共通費(固定費)を各支店に配賦するという考え方は管理会計上・経営管理上ありますが、
親会社の費用を子会社に配賦するという考え方は管理会計上も経営管理上もそして当然財務会計上もありません。
「本社配賦経費」という費用項目は、逆に、日本支店は損益計算の上では独立してはいない(独立した損益計算書にならない)、
ということを示しているでしょう。
日本支店では独立した損益計算書を作成できないということは、日本支店には例えば法人税法は適用できないということです。
日本支店は当然のことながら日本に法人登記はなされていない(だから支店と呼んでいる)わけなのですが、
法人税法の適用は登記された法人単位なのではないだろうか、という気がします(税務署に商業登記簿謄本の提出が必要なはずです)。
また、「持込資本金」という勘定科目名も、会社法上の正式な勘定科目名ではないわけです(管理会計上の科目名に思えます)。
上記決算情報を見ますと、独立した「人」としての取り扱いと社内の一部署としての取り扱いとが混在しているように思えます。
法律面と会計面の両面から考えてみたのですが、支店というのはやはり独立した固有の資本や固有の所得を識別できる存在ではない、
という見方になるように思います。
結局、それらを有している・識別できる存在が法律上の「法人」ということだと思います。
そして、資本金が法人を定義している(資本金が法人を定義する一要素)という捉え方が大切だと思います。
法人はその資本金を元手に、法人固有の所得を稼得する、という捉え方が大切だと思います。
登記と共に(登記は確かに必須ですが)、法人のことは「始めに資本ありき」と表現できると思います。
資本とはすなわち元手であり、法人の根源として元手が存在する(そして法人は法人固有の所得を稼得する)という意味です。
法人は、資本から始まるわけです。
資本に基づいて、権利義務の固有の帰属主体や所得の固有の帰属主体(つまり納税者)を切り分けるわけです。
資本から見ますと、米国の生命保険会社の日本支店とは何かが見えてくる気がしました(実はそんなのはないのではないか、と)。
様々な観点から考えてみたのですが、結論を言えば、
米国の生命保険会社は、日本国内で営業活動を行おうと思えば、日本支店ではなく、
実は営業開始当初から日本法人を設立するしかなかったはずだ、ということになると思います。

 

What you call a "Japanese branch office" of a global giant life insurance company doesn't have a capital in Japan.

巨大グローバル生命保険会社のいわゆる「日本支店」には、日本には資本金はないのです。