2017年3月11日(土)
2017年3月8日(水)日本経済新聞
「ヤマト」値上げ 追随期待 運輸株、軒並み買われる ネット通販企業は下落
(記事)
2017年3月9日(木)日本経済新聞
宅配便 一部大口と値上げ交渉 佐川と日本郵便が検討 通販など採算悪化に限定
(記事)
企業向け値上げ検討=宅配便、個人は据え置き−日本郵便
日本郵便が、通信販売各社などとの間で個別に設定している宅配便の法人顧客向け料金について、
値上げを検討していることが8日分かった。
日本郵便は宅配便事業で、荷物の発送量が多い法人向け料金(割引料金)を会社ごとに設定し、4月に見直しを行っている。
今春は、人手不足に伴う人件費上昇などを背景に同事業の採算が悪化していることを踏まえ、
値上げを含め改定交渉を進めることにした。
一方、「ゆうパック」の名称で展開している個人向け宅配便事業については、
2015年8月に本格的な値上げを実施したことを踏まえ、現行料金を維持する方針だ。
(時事通信 2017/03/08-20:36)
ttp://www.jiji.com/jc/article?k=2017030801271
【コメント】
2017年3月8日(水)付けの日本経済新聞の記事は、
ヤマト運輸が宅配便の基本運賃を引き上げる方針を固めたとの報道を受けて、運輸業界の株価が軒並み上昇した、という内容です。
ヤマト運輸の運賃値上げに伴い、他の企業も追随するとの思惑が株式市場では浮上した、と書かれています。
運賃の値上げは運輸業者にとって収益改善要因と言えるでしょうから、株価が値上がりしても全く不思議ではないと思います。
また、2017年3月9日(木)付けの日本経済新聞の記事は、実際に佐川急便と日本郵便がヤマト運輸に追随する形で、
大口顧客と個別に結んでいる宅配便の割引運賃契約の引上げを検討している、という内容になります。
他社と差別化を図ることが難しい業界では、業界1位の動きに連動して業界全体が足並みを揃えることがあったりしますが、
このたび運輸業界がそのような状態になるのだろうと思います。
ただ、業界で足並みを揃えることは、悪く言えば、「カルテル」であろうと思います。
運輸業界の企業全てが一斉に運賃を値上げすれば、顧客としては他に選択肢がないため、
値上げをそのまま受け入れざるを得ない、という状況になります。
一般に、「カルテル」は消費者保護の観点から禁止されているわけです。
ただ、これは「カルテル」が禁止されていることの裏返しかもしれませんが、
「カルテル」を行えば企業の収益力は確実に高まると言えるでしょう。
自社1社だけが値上げをしても顧客が他社に流れてしまうだけに終わる恐れがありますが、
「カルテル」を行い、業界全体で一斉に値上げを行えば、自社の収益力も他社の収益力も高まるわけです。
そしてそのことは、結局、「カルテル」は株主の利益に適う、ということになるわけです。
他の言い方をすれば、違法性の論点を度外視すれば、株主は会社が「カルテル」を行うことを望むものだ、
という言い方ができると思います。
ところで、記事では、アマゾンジャパンのことを「大口顧客」と表現しています。
アマゾンジャパンには消費者から数多くの注文があり、非常に数多くの荷物をアマゾンジャパンが出荷しているので、
出荷している荷物の数から記事では「大口顧客」と表現しているのだと思います。
ところが、運輸業から見ると、アマゾンジャパンは全く「大口顧客」とは呼べないと思います。
なぜなら、運輸業は、アマゾンジャパンから預かった荷物を結局それぞれ異なった住所宛てに配達するからです。
運輸業はアマゾンジャパンから一度に数多くの荷物を預かります。
その意味では・その時点では、アマゾンジャパンは運輸業にとって確かに「大口顧客」でしょう。
しかし、運輸業は、アマゾンジャパンから預かった荷物を、結局1軒1軒個別に宅配することになるわけです。
これは結局のところ、運輸業にとっては、小口の宅配をしていることと何ら変わりはないわけです。
つまり、アマゾンジャパンから大量の荷物を預かることは、小口(個人)の顧客から個別に大量に荷物を預かることと同じなのです。
その意味において、運輸業から見ると、アマゾンジャパンは全く「大口顧客」ではないのです。
アマゾンジャパンから大量の荷物を預かるのならば、運輸業にとっては集荷が楽だということではないかと思われると思います。
確かにそれはそうです。
しかし、ヤマト運輸が値上げに踏み切る原因の1つは「再配達」だと言われています。
結局のところ、宅配業というのは「配達」に費用がかかるわけです。
「集荷」には相対的には費用はかからないわけです。
荷物が何個あるからどこそこに何時頃に取りに来てくれ、と顧客から言われて荷物を取りにいくだけなられほど労力はかかりません。
しかし、荷物を持って配達先に伺っても不在だったとなりますと、再び同じ荷物を持って同じ配達先に伺わねばならないわけです。
運輸業にとっては、集荷よりも配達に費用がかかるわけです。
その意味において、法人から法人への大量運送を手掛けているのならともかく、事業特性上宅配業には「規模の経済」が一切働かず、
したがって、一般消費者を顧客としているアマゾンジャパンは、運輸業にとっては「大口顧客」とはやはり言えないのです。
カルテルは株主の利益にはなります。
Concerning a home delivery service, even though a customer is a giant retail
store,
the customer's customer, or general consumers, is an individual
therefore scattering.
A home delivery service has no concept "big customer"
in it.
A certain famous giant retail store itself is a pickup point as it
is,
so, in such case, it certainly costs much less to collect parcels for the
forwarding business, though.
In any case, it certainly costs more to
re-deliver, and it also certainly costs re-collect parcels,
but, compared
with re-delivering, re-collecting parcels almost never happens.
宅配便に関して言えば、たとえ顧客が巨大小売業であっても、
顧客の顧客すなわち一般消費者は、個人でありしたがって分散しているのです。
宅配便には、「大口顧客」という概念はないのです。
某有名巨大小売業は、それ自体がそのまま集荷場になっていますので、
その場合は配送業者にとっては集荷にはるかに費用がかからないのは確かですが。
どの場合であれ、再配達には確かに費用がかかりますし、また、再集荷にもまた確かに費用がかかります。
しかし、再配達に比べて、再集荷はほとんど発生しないのです。
Concerning a home delivery service, "economies of scale" are not achieved at
all.
For parcels are certainly collected on a large scale at a pickup
point
but the parcels are delivered only on a small scale in the
end.
宅配便に関しては、「規模の経済」は全く実現しないのです。
というのは、確かに荷物は集荷場で大規模に集荷されますが、集められた荷物は最後は小規模にしか配達されないからです。
From a standpoint of the forwarding business. a "big customer" in the true
meaning asks the business
to deliver a lot of parcels from one point "to one
point" at a time many times.
Such delivery means "economies of scale" on a
delivery service.
配送業者の立場から言えば、真の意味の「大口顧客」とは、
1地点から「1地点へ」一度に多くの荷物を配達してくれるよう何度も依頼してくれる顧客のことなのです。
そのような配達が配送業における「規模の経済」なのです。