2017年2月28日(火)


2017年2月28日(火)日本経済新聞
純利益通期目標 4〜12月の到達度 6社に1社「すでに達成」 ゲームや化学、先行きは慎重
(記事)

 

 


【コメント】
この記事は、通期(1年間)の決算と四半期(3ヶ月間)の決算との関係、といった論点になろうかと思いますが、冒頭を引用します。

>2016年4〜12月期の9ヶ月間で順調に業績を上げ、すでに年間の予想純利益を達成する企業が相次いでいる。

3月期決算の企業を対象に集計が行われたようなのですが、4〜12月期の純利益がすでに会社の通期予想に到達した、とのことです。
2016年4〜12月の9ヶ月間で、会社の通期予想(1年間の純利益額)を既に達成した、という内容であるわけです。
見出しなどを見て私がまず思ったのは、第3四半期まで(9ヶ月間だけ)で利益目標を既に達成したと言っても、
仮に第4四半期に損失を計上するならば、結局全く目標達成になっていないではないか、という点です。
第4四半期も利益を計上するのならば、確かに第3四半期まで(9ヶ月間だけ)で利益目標を達成したと言えるのですが、
第4四半期に利益を計上するのか損失を計上するのかはまだ誰にも分からないわけです。
これでは、第3四半期まで(9ヶ月間だけ)で利益目標を既に達成したとはとても言えない、と思いました。
簡単に言えば、1年間が経たないと通期の利益目標を達成できたかどうかは判断が付かない、と言えると思います。
この点については記事でも触れてありまして、既に利益目標を達成した企業の中には、
2017年1〜3月期(第4四半期)に大きな損失を見込むところもある、と書かれています。
通期の目標を果たして達成出来たのか否かは、第3四半期が終わった時点ではまだ何とも言えないわけです。
この記事を読んで改めて思ったのは、四半期決算の位置付けです。
例えば、日本の制度会計では、四半期決算という場合には「累計期間」を意味します。
しかしアメリカの制度会計では、四半期決算という場合には「当四半期のみ(当3ヶ月間のみ)」を意味します。
日本の制度会計では、第1四半期は3ヶ月間ですが、第2四半期は6ヶ月間、第3四半期は9ヶ月間、そして、
第4四半期に関しては、事業年度の最後の3ヶ月間を意味する場合もありますが、
制度会計(財務情報開示)上は通期(1年間)を指す(その場合は「第4四半期」という呼び方をしない)ことが多いと思います。
この「通期(1年間)の決算と四半期(3ヶ月間)の決算」に関する相違点や問題点については以前も書いたことがあると思います。
この点に関する結論を書きますと、会計理論的には、やはり「会計期間に累計という考え方はない。」が結論だと思います。
四半期決算に関し、累計期間で財務諸表を作成しようが、単四半期間で財務諸表を作成しようが、貸借対照表は同じになります。
損益計算書だけが異なっており、累計期間で財務諸表を作成すると累計期間の損益を計上した損益計算書になり、
単四半期間で財務諸表を作成すると単四半期間の損益を計上した損益計算書になります。
以前コメントを書きました時は、累計期間という考え方のおかしさについて、
損益計算をする期間を3ヶ月間と決めて損益計算を行っていくのが四半期(3ヶ月間)決算である、
また、第1四半期の次の四半期は第2四半期のはずである、
第1四半期末日の貸借対照表は、第1四半期の損益や第1四半期末日時点での財務状況を反映したものであり、
その後の損益計算において第1四半期末日より前の日に戻る(第1四半期の損益を反映し直す・再度反映する)という考え方はない、
したがって、例えば第2四半期の期首日は第1四半期末日の次の日である(第2四半期の期首日は第1四半期の期首日ではない)、
と書いたかと思います。
この考え方は今でも正しいと思っています。

 



ただ、この考え方から言えば、第4四半期というのは、3月期決算の企業で言えば、1〜3月のみを指すわけです。
第4四半期というのは、4月から翌3月までを指すわけではないわけです。
そうしますと、制度会計上は、第4四半期の財務諸表とは別に、通期(1年間)の財務諸表も開示するべき、
という考え方になるわけです。
ただ、通期(1年間)の財務諸表を作成・開示するとなりますと、結局、4つの四半期決算を累計しているかのようになるわけです。
会計期間に累計という考え方はない、というやや反しているように感じる部分もあるわけです。
この点を鑑みますと、日本の制度会計は、通期(1年間)の財務諸表は結局、単四半期決算から見れば累計期間のようになるので、
開示する四半期決算も始めから累計期間で財務諸表を作成するようにしている、ということなのかもしれないな、と思いました。
前事業年度(1年間)の財務諸表と当事業年度(1年間)の財務諸表を累計する、ということは決してしないように、
第1四半期(3ヶ月間)の財務諸表と第2四半期(3ヶ月間)の財務諸表を累計するということも本来的にはしないわけです。
法人税の課税所得額の計算期間が1年間なものですから、当然に企業会計もそれに合わせ1年間で損益計算を行うわけなのですが、
企業会計上、利益の計算期間は1年間ではなく3ヶ月間であると想定して損益計算をし財務諸表を作成するのが四半期決算であるわけです。
その意味において、四半期決算と通期の決算は根本的に異なるとすら言えるわけです。
通期の決算では、法人税の課税所得額の計算期間と完全に合致した財務諸表を作成するのに対し(ここに累計という概念はない)、
四半期決算では、法人税の課税所得額の計算期間は完全に度外視している財務諸表を作成するわけです。
四半期決算では、法人税の課税所得額の計算期間はあたかもその3ヶ月間であるかのように見なしているだけなのです。
通期の決算における法人税額は法人税法上確定した法人税額ですが、
四半期決算における法人税額は法人税法上は何ら確定してはいない法人税額に過ぎないのです。
今の日本の制度会計は、四半期決算と通期の決算とを折衷した形で行われていると思います。
累計期間という考え方をしている点もそうですし、第4四半期の決算を通期の決算で代用している点もそうです。
理論的には、結局のところ、「通期の決算と四半期決算の両方を開示する(通期が主、四半期はあくまで補助的位置付け)」、
という開示方法が一番論理的だと思います(通期の決算と四半期決算の二本立てで決算の開示を進めていくイメージ)。
四半期決算は早期開示に最重点を置いた補助的な開示に過ぎない、と考えれば、開示方法の整理が付きそうな気がします。
第4四半期と通期とは異なる(ただし、第4四半期の決算と通期の決算は同時に開示してもよい・開示するべき)、と考えるわけです。
四半期決算と通期の決算とでは財務諸表の作成手続きが異なる、とすら考えてもよいと思います。
もちろん、簿記の手続き(精算表の作成など)は同じですが、開示制度上の位置付けが両者では異なる、と考えてもよいと思います。
四半期決算はあくまで3ヶ月間のみの業績を発表するものだ、と考えるわけです。
そしてそれと通期の決算とは別だ(四半期決算と通期の決算は別の開示制度)、と考えるわけです。
日本の制度会計が累計期間という考え方をしているので論点が分かりづらくなっているのだと思いますが、
四半期決算と通期の決算は全く別の開示方法を行っていくものだ、と両者の位置付けを整理してはいかがでしょうか。
このように両者を捉えれば、四半期決算と通期の決算とで期首日や期末日が異なっていても何の問題もない、
という考え方になるのではないでしょうか。
たまたま、第1四半期の期首日と第4四半期の期末日が、通期のそれらと一致するというだけだ、と考える・整理するわけです。
「累計期間」という考え方は、良く言えば折衷案、悪く言えば無理のある最大限の辻褄合わせ、に過ぎないものなのです。

 

Profits and losses of the first quarter and those of the second quarter are summed up,
whereas those of this business year and those of the following business year aren't.

第1四半期の損益と第2四半期の損益は通算されますが、当事業年度の損益と次の事業年度の損益とは通算されません。