2017年1月22日(日)



2017年1月21日(土)日本経済新聞
■ファースト・プライベート銀行(ミャンマー地場有力銀) ヤンゴン証取に上場
(記事)




ファースト・プライベート銀、ヤンゴン証取上場

 ■ファースト・プライベート銀行(ミャンマー地場有力銀) 20日、ヤンゴン証券取引所(YSX)に上場した。
終値は3万4000チャット(約2900円)で事前に公表された基準価格(3万9000チャット)は下回った。YSXへの上場は4社目。
 出来高は約5700株だった。YSXは昨年3月に取引が始まった。
 同日、YSXでの記念式典に参加したセイン・マウン会長は「国内の貧困削減に貢献する。
銀行業務のデジタル化への対応も急ぐ」と述べた。マウン・マウン・ウィン財務副大臣も「東南アジア諸国の証取と比較して、
YSXの立ち上がりは着実だ」と強調した。
ファースト・プライベート銀の2016年3月期の総資産は約2074億チャット(約180億円)で、国内に約30支店を展開する。
 YSXでは今春以降、現在認められない外国人投資家の参加も解禁される見通し。
農産物商社のミャンマー農業ビジネス公社(MAPCO)や建設大手のグレート・ホー・カムなども上場を計画している。
(日本経済新聞 2017/1/20 23:23)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDX20H0R_Q7A120C1FFE000/

 

 

2017年1月20日
株式会社大和証券グループ本社
ミャンマー ヤンゴン証券取引所における上場第4 号案件について
ttp://www.daiwa-grp.jp/data/attach/2049_07_20170120a.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 



【コメント】
ミャンマーの銀行であるファースト・プライベート銀行がヤンゴン証券取引所に上場した、という内容の記事になります。
日本経済新聞の記事には全く記載されていませんが、ファースト・プライベート銀行がヤンゴン証券取引所に
上場することに関しては、日本の株式会社大和証券グループ本社が支援を行ってきていたようです。
株式会社大和証券グループ本社からは、このたびの上場に関するプレスリリースが発表されています。
プレスリリースを要約すると、株式会社大和証券グループ本社は、ミャンマーにおける持分法適用関連会社である
ミャンマー証券取引センター(Myanmar Securities Exchange Centre Co., Ltd.)が
上場を支援してきたファースト・プライベート・バンク(First Private Bank Ltd.)が、
2017年1月20日にヤンゴン証券取引所に株式を上場し取引を開始した、となります。
さらに、プレスリリースには、株式会社大和証券グループ本社は、今後とも上場企業を順次増加させていくべく、
ミャンマーのミャンマー証券取引センターを通じ、より一層充実した金融サービスを提供することで、
ミャンマーの経済発展に貢献してまいります、と書かれています。
このたび上場を果たしたファースト・プライベート銀行自体は純粋にミャンマーの企業であり、
株式会社大和証券グループ本社が出資や経営参画を行っている企業というわけではないようです。
ただ、ミャンマー証券取引センターという企業が株式会社大和証券グループ本社の持分法適用関連会社であり、
そのミャンマー証券取引センターがファースト・プライベート銀行の上場を支援してきた、という経緯があるために、
株式会社大和証券グループ本社がファースト・プライベート銀行の上場に関するプレスリリースを発表しているのだと思います。
ミャンマー証券取引センターという企業は、金融サービスを提供する企業とのことですので、
日本で言えばいわゆる証券会社に相当する会社なのだろうと思います。
株式会社大和証券グループ本社は当然証券会社ですので、
ミャンマー証券取引センターは株式会社大和証券グループ本社にとって、
ミャンマー現地子会社ならぬ、ミャンマー現地持分法適用関連会社、といった位置付けになるのだと思います。
株式会社大和証券グループ本社は、持分法適用関連会であるミャンマー証券取引センターを通じて、
今後ともミャンマーの経済発展に貢献していきたい、と考えているようです。

 


ただ、ミャンマーに関しては、次のような記事がありました。


2017年1月16日(月)日本経済新聞
ミャンマー、外資誘致加速 国内企業への出資解禁 今春めど 貿易業や土地所有も
(記事)



この記事には、ミャンマーの現在の外国資本政策に関して、

>現在は外資による国内企業の株式取得を禁じる明文規定はないが、運用上、認められていない。

>現行法は外国企業が1株でも持てば外資と見なし、国内資本保護の要請が強い分野への参入を禁じている。

>貿易は現在、自動車や医療機器など限られた品目についてのみ国内企業との合弁形式で外資の参入を認めている

と書かれています。
端的に言えば、限られた極一部の例外分野を除き、外国企業がミャンマーの会社の株式を所有することはできない、
という取り扱いに現在はなっているようです。
もし私のこの理解が正しいなら、株式会社大和証券グループ本社は、
ミャンマー証券取引センター(Myanmar Securities Exchange Centre Co., Ltd.)の株式を所有することはできない、
ということになるのではないだろうか、と思いました。
すなわち、株式会社大和証券グループ本社は、ミャンマー証券取引センター(Myanmar Securities Exchange Centre Co., Ltd.)を
持分法適用関連会社にすることは当然にできない、ということになると思います。
証券業の分野において、現在外国企業がミャンマーの証券業に出資をすることができるのか田舎については、
記事からだけでは分かりませんが、外国企業は現在、ミャンマーでは土地の所有すらできない、という外資規制になっている、
ということから考えますと、外国企業は証券業への出資も認められていないのではないかと思います。
記事には書かれていないだけで、外国企業による証券業への資本参加が可能な方法が現在でも何かあるのかもしれません
(例えば、国内企業との合弁会社を新設するのであれば、現行法でも証券業へ外国企業は資本参加できる等)が、
その点については記事からだけでははっきりしないなと思いました。

 


それから、記事には、ミャンマーには「計画・財務省」という省があるようです。
「計画」をする省があるということで、私はかつて日本にもあった「経済企画庁」を思い出しました。
興味がわき、「myanmar ministry of finance」というキーワードで検索しますと、それらしい公式サイトが2つヒットしました。


Ministry of Finance
ttp://www.mof.gov.mm/en

Ministry of Planning and Finance
ttps://www.mopf.gov.mm/


URL(ドメイン名)から判断して、どちらも公式サイトと言えば公式サイトなのだろうと思います。
ただ、どちらも英語のサイトであり、現地の言語(つまり公用語)によるサイトではありませんので、
公用語の公式サイトに比べれば更新が遅れていたり情報量が少なかったり(さらには一部放置も)しているのだろうと思います。
沿革が書かれていますので、Ministry of Finance(ttp://www.mof.gov.mm/en)のサイトから、省の紹介文を引用し訳してみます。
2017年1月現在は、「Ministry of Planning and Finance」(計画・財務省)という1つの省になっているのだと思います。

 

The Ministry of Finance and the Ministry of National Planning
were formed as separate ministries in 1948 when Myanmar gained independence.
They remained as separate ministries at the advent of the Revolutionary Council in 1962 up to 14 March 1972.
However, those ministries were combined together as the Ministry of Planning and Finance on 15 March 1972
according to socialist administrative system.
Again, the Ministry of Planning and Finance was reformed into two ministries
as the Ministry Finance and Revenue and the Ministry of National Planning and Economic Development
according to the Notification Order (12/ 93) of the State Law and Order Restoration Council dated 17 February 1993.

【参謀訳】
財務省と国家計画省は、ミャンマー国が独立した年である1948年に別々の省として設立されました。
財務省と国家計画省は、1962年に革命評議会が結成された後も、1972年3月14日までは別々の省のままでした。
しかしながら、社会主義政治体制に従い、財務省と国家計画省は1972年3月15日に計画・財務省として1つの省に再編されました。
その後、計画・財務省は、1993年2月17日結成の国家法秩序回復評議会における秩序公告(1993年12月)に基づき、
再び財務・歳入省と国家計画・経済発展省という2つの省に再編されました。

 


それから、今日紹介しているミャンマーの記事とプレスリリースに関しては、私は実は、日本経済新聞の記事よりも先に、
株式会社大和証券グループ本社が発表しているプレスリリース(のタイトル)を先に読んだのです。
つまり、今日は、ミャンマーに関する記事の見出しや内容を読むよりも先に、各社発表のプレスリリース一覧を見ていた関係上、
「ミャンマー ヤンゴン証券取引所における上場第4 号案件について」というタイトルを先に見たわけです。
それでは私は、このタイトルだけを読んで、
「株式会社大和証券グループ本社はヤンゴン証券取引所に上場を行ったのだろう。」と勘違いをしてしまいました。
そして、「ヤンゴン証券取引所に上場するに際しては、株式会社大和証券グループ本社は現地で預託証券を活用したのだろう。」
と思ってしまいました(日本の株式を外国の証券取引所に直接上場させるというのは、法的におかしいと思ったからです)。
結論だけ言えば、「株式会社大和証券グループ本社がヤンゴン証券取引所に上場を行った。」という私の考えは
完全に間違っていたわけですが、海外の証券取引所に株式を上場させる際に用いられるこの預託証券という証券について、
この時私はある興味深いことが頭に浮かびました。
それは、「海外の証券取引所に株式を上場させる際に用いられる預託証券は、
会社自身が取得・所有すると、一有価証券(資産勘定)になる。」という点です。
これは旧商法での取り扱いのことを言っているのではありません。
現行の会社法においても、「海外の証券取引所に株式を上場させる際に用いられる預託証券を会社自身が取得・所有すると、
一有価証券として計上される(純資産の部にではなく資産勘定として計上される)」のです。
預託証券というのは自己株式に準じた取り扱いになるのではないか、と思われるかもしれませんが、
実は会社にとって自社の預託証券は取得・所有した場合は自己株式ではなく有価証券になるのです。
若干言葉足らずかもしれませんが、以下にその説明を書きました。
端的に言えば、「預託証券に関し、株主名簿に株主として記載されているのは誰か。」から考えると答えが出ると思います。

 



As which account title is what you call a "depositary receipt" of a company's own recorded on a balance sheet,
a treasury share account or one of the securities (assets) account?

会社自身のいわゆる「預託証券」は、貸借対照表上にどちらの勘定科目として計上されるのですか?
自己株式勘定ですかそれとも一証券(資産)勘定としてですか?

 


The problem here is that a company doesn't issue a "depositary receipt" by itself.
Or rather, it is a local securities company overseas that issues  a "depositary receipt" of the company.
Now that a "depositary receipt" is legally separated from a share itself, it may be said
that the company can receive a dividend which it itself pays to its shareholders through the "depositary receipt"
and that the company can exercise a voting right to itself through the "depositary receipt."
If this understanding is correct, a "depositary receipt" of a company's own is recorded on a balance sheet
as, for example, a "depositary receipts of its own" account title (on the debit side even on the current Companies Act).

ここでの問題は、会社は自社では「預託証券」を発行しない、という点なのです。
正確に言えば、その会社の「預託証券」を発行するのは、海外の現地証券会社なのです。
「預託証券」は株式そのものとは法律的に切り離されているわけなのですから、
会社は自社が株主に支払う配当を「預託証券」を通じて受け取ることができますし、また、
会社は「預託証券」を通じて自社自身に対し議決権を行使できる、と言えるのかもしれません。
この理解が正しいとすると、会社自身の「預託証券」は、貸借対照表上には、
例えば「自社預託証券」勘定として(現行の会社法でも借方に)計上されることになります。

 



A company pays a dividend to shareholders which are registered on its shareholder registry,
and it is shareholders which are registered on its shareholder registry that exercise a voting right to the company.
Therefore, with relation to a "depositary receipt,"
a company itself is not registered on its shareholder registry as a shareholder.
In short, it is a securities company which provides "depositary receipt" services for overseas investors
that is registered on a shareholder registry of a company with the "depositary receipt" as a shareholder.

会社は、自社の株主名簿に記載されている株主に対し配当を支払いますし、
会社に対し議決権を行使するのは、その会社の株主名簿に記載されている株主なのです。
したがって、「預託証券」に関連して言えば、会社自身は自社の株主名簿に株主として記載されていないわけなのです。
簡単に言えば、「預託証券」が発行されている会社の株主名簿に株主として記載されているのは、
海外の投資家のために「預託証券」サービスを提供している証券会社なのです。

 


The fact that a "depositary receipt" of a company is listed on the stock exchange means
the fact that the company can buy the "depositary receipt" for itself.

ある会社の「預託証券」が証券取引所に上場しているということは、その会社はその「預託証券」を自分で買えるということです。