2017年1月14日(土)
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2017年1月14日(土)日本経済新聞 大機小機
取締役会は奮起せよ
(記事)
【コメント】
2016年に企業の休業・廃業が増加した、という内容の記事ですが、記事の冒頭には次のように書かれています。
>2016年に休業、廃業したり解散したりした会社の数が2万9500件を超え、過去最多を更新する見通しとなった。
また、記事によると、東京商工リサーチの定義は次のようになっているとのことです。
>休廃業は資産が負債を上回る「資産超過」の状態で事業を停止することを指す。
>解散は資産に余力を残した状態で清算手続きすることで、倒産とは別に分類される。
「休業」というだけですと、会社はその後事業を再開することもあり得る、という状態なのだろうと思います。
しかし、「廃業」となりますと、会社はその後事業を再開することはない、ということを意味するのだろうと思います。
したがって、会社が「廃業」を意思決定するということは、会社を解散する意思決定をするということと同じなのだろうと思います。
東京商工リサーチの定義上は、倒産は支払不能が原因で会社を清算することであり、
解散は支払不能以外のことが原因で会社を清算することだ、と考えてよいのだと思います。
ただ、これらの分類は、あくまで会社を清算するに至った「原因」に基づく分類に過ぎません。
すなわち、これらの分類は、会社を清算し終わった後の「結果」に基づく分類ではありません。
何が言いたいのかと言えば、「原因」と債務の弁済額とは関係はない、ということです。
支払不能が原因で会社を清算する場合でも、清算人が会社財産を処分し終わってみると、
債務は全額弁済される、ということは理論上も現実にもあり得ることです。
また、支払不能以外のことが原因で会社を清算する場合でも、清算人が会社財産を処分し終わってみると、
債務は全額が弁済されるというわけではない、ということは理論上も現実にもあり得ることです。
支払不能が原因で会社を清算する場合は債務は全額が弁済されるというわけではないと思ってしまいがちですし、
支払不能以外のことが原因で会社を清算する場合は債務は全額が弁済されると思ってしまいがちですが、
実はそれらは理論的にはどちらも間違いなのです。
確かに、現実には、支払不能が原因で会社を清算する場合は債務はわずかしか弁済されないことが多いでしょう。
また、現実には、支払不能以外のことが原因で会社を清算する場合は債務は全額が弁済されることが多いでしょう。
それどころか、休業・廃業状態から会社を解散する場合は、清算手続きに入る前に会社の全債務を弁済し終わる(平時に弁済を行う)、
ということを通常はすると思います(つまり、清算手続きにおいて債務を弁済するということは通常はしない、ということです)。
ただ、清算手続きに関しては、支払不能か否かという「原因」と債務の弁済額は満額か否かという「結果」とは全く関係はないのです。
現実には、清算手続きに関しては、「原因」と「結果」は整合すると思います。
しかし、理論上は「原因」と「結果」が整合するという理論的根拠はありません(「原因」と「結果」はこの場合全く関係ない)。
記事も「原因」のみに基づき事象を分類していますので、理論的には「結果」は別なのだ、という点について一言書きました。
東京商工リサーチや帝国データバンクは、休業や廃業や解散や倒産の「原因」については十分調査をしているのだと思うのですが、
清算手続きにおいて債権者は満額の弁済を受けられたのかどうかという「結果」については調査をしていないのかもしれません。
清算手続きにおいて債権者は満額の弁済を受けられたのかどうかという「結果」については、
調査会社は、全債権者に対し調査(一種の追跡調査)を行うか、もしくは、
(ある意味直接)清算人に質問して聞くしかないと思います。
清算人は清算手続きの全てを把握・管理しているわけですから、この場合清算人が第一次情報源であるのは確かでしょう。
裁判上の手続き(つまり、公開が原則)になりますが、清算人に守秘義務があるのかどうかは条文上は明らかではないと思いますが。
清算人は、言わば清算手続きの執行を「受託」していると言えるでしょう。
つまり、清算人には公正な清算手続きを執行する「フィデューシャリー・デューティー」(受託者責任)があるわけです。
清算人は、公正な清算手続きを執行したことの証として、全債権者に対する弁済額・残余財産分配額を明らかにする、
ということもまた1つの「フィデューシャリー・デューティー」(受託者責任)ではないかと思います。
これも債権者保護の観点から大切なことなのではないでしょうか。
例えば、債権者によって債務の弁済率が異なっていることなど決してない、ということを明確にすることも大切だと思いました。
清算人が負うべき「フィデューシャリー・デューティー」(受託者責任)とはどの範囲のことを指すのか、
紹介している2つの記事を読んで考えさせられました。
平時においてだけではなく、清算手続きにおいても、「フェア・ディスクロージャー・ルール」が求められるべきなのではないか、
つまり、このたびの事例に即して言えば、清算人が調査会社からの調査に回答するのならば、
(法制度として)清算人は清算手続きの「結果」を官報に掲載するということが要請されるべきではないか、と思いました。