2017年1月6日(金)
2017年1月5日
株式会社ジョイフル本田
固定資産の取得に伴う特別利益の計上の見込みに関するお知らせ
ttp://www.joyfulhonda.info/wp-content/uploads/9ad19615bf11ba3f702102ef3dd0d0d4.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
>借地の原状回復に備えて積み立てていた引当金の戻し入れ益が発生する。
>借地を返却するする際の店舗の取り壊しなどに備えて計上していた引当金が不要になった。
プレスリリースには、戻し入れる勘定科目は、引当金ではなく「資産除去債務」と書かれています。
「資産除去債務」と「借地の原状回復に備えて積み立てる引当金」は、この場合本質的に同じ意味です。
土地を賃借している場合、土地を貸主に返還する際にはその土地を更地にして返還しなければならないわけです。
それで、今までは「資産除去債務」を計上していたのだが、土地の取得の結果、「資産除去債務」が不要になった、とのことです。
記事を一読した時は、店舗を取り壊す(土地を更地に戻す)ことは、土地が借地であろうが自社所有であろうが、
どちらの場合でも発生することであるのだから、賃借している土地を取得すれば「資産除去債務」を積み立てる必要はなくなる
というわけでは全くないのではないかと思いました。
つまり、賃借している土地を取得することは「資産除去債務」を取り崩す理由には全くならない、と思いました。
自社所有の土地の上に建てている店舗であっても、会社が将来取り壊すことは全くあり得ることだからです。
端的に言えば、株式会社ジョイフル本田は「資産除去債務」を取り崩す必要はないように思いました。
このたびの株式会社ジョイフル本田の会計処理は間違いなのではないかと思います。
ただ、このたびの会計処理を好意的に解釈することはできると思います。
その解釈とは、賃貸借には当然に期限があるのに対し、所有には期限はない、という解釈です。
他の言い方をすれば、賃貸借契約には賃貸借契約の終了日があるのに対し、所有という概念には終了日はない、という解釈です。
賃貸借契約には賃貸借契約の終了日があるということは、その終了日に土地を返還しなければならないということです。
その場合、その土地の上に建っている店舗は当然に取り壊しが予定されている、ということになります。
一方、所有という概念には終了日はないということは、概念的には会社はその土地を永久に使用し続けることができる、
という意味であり、その土地の上に建っている店舗の取り壊しは何ら予定されてはいない、ということになります。
店舗は有体物ですので、経年劣化や改修・改装は経営上はある程度は想定されている、とは確かに言えます。
その時に備え、「資産除去債務」を積み立てていくことは間違いではないと思います。
ただ、その「将来の店舗の取り壊し蓋然性」が、土地が賃借か自社所有かで根本的に異なるのだけは間違いないでしょう。
一般に、賃貸借契約では借主の権利が保護される傾向にあるとは言われますが、
賃貸借契約はあくまでも貸主と借主との間の合意により締結されます。
予め合意した賃貸借契約の終了日には、借主は賃借物を返還しなければなりません。
「もうすぐ終了日が到来するのだが、今後貸主は賃貸借契約の更改に応じてくれるだろう。」
という期待を借主が持つことは法律的には間違いであるわけです。
法律的な観点から言えば、土地の賃貸借契約の終了日には、借主は店舗を取り壊して土地を更地にし土地を返還する、
という前提に立たねばなりません。
そして、その法律的前提に基づき、会社は会計処理を行っていく必要があるわけです。
賃貸借の法理から言えば、賃貸借契約の終了日には店舗は取り壊す、という前提に立って会計処理をする必要があるわけです。
賃貸借借約の更改を前提にした会計処理(「資産除去債務」の積み立て)は間違いであるわけです。
以上のことを踏まえますと、土地が自社所有の場合は、「いついつに店舗を取り壊す」という法律上の期限はないわけですから、
「資産除去債務」の計上を行わない、ということが考えられるわけです。
例えば、経営上、店舗は10年で取り壊すという経営計画を持って店舗を建設した場合は、
10年間に渡り「資産除去債務」を計上していく、という会計処理を行うことは正しいわけですが、
特段店舗取り壊しの計画がない場合は、「資産除去債務」を計上していくことはできないように思います。
店舗(建物勘定)の減価償却期間を「資産除去債務」計上の目安・基準とすることは、理論的には間違いなのだと思います。
なぜならば、店舗の減価償却期間が終了することは店舗の取り壊しを意味しないからです。
また、経済的耐用年数という言い方もありますが、それは会計上・法人税法上便宜上設定した年数というに過ぎないのであって、
経済的耐用年数が経過した後も店舗を稼働させることは経営上も法律上も会計上も何ら間違いではないのです。
店舗を取り壊すのは、経済的耐用年数が経過する前でも後でもよいのです(だから、土地が借地の場合は店舗を途中で取り壊せる)。
その意味では、土地が借地が自社所有かで「資産除去債務」に関する会計処理が変わることはあり得ると言えると思います。
引当金を計上する第一目的は、「費用・収益対応の原則」を守ることです(第二目的は一定額の財産を会社内に留保すること)。
店舗の取り壊しの期日が予め明確でないと、取り壊し費用を正しく期間配分することができない、ということになるのです。
The secondary purpose of recording a provision is to make a specific sum
of assets retained inside a company.
引当金を計上する第二の目的は、一定額の財産を会社内に留保することなのです。