2016年12月14日(水)
2016年12月3日(土)日本経済新聞
眠る預金活用 関連法が成立 放置口座から福祉に
(記事)
2016年12月14日(水)日本経済新聞 社説
透明な休眠預金の活用を
(記事)
休眠口座とは?|休眠口座について考えるための情報サイト
ttp://kyumin.jp/about/
>「休眠口座」はどう扱われているのですか?
>銀行で10年、ゆうちょ銀行で5年経つと、全国銀行協会などの内規により、その預金は銀行の収入になります。
>これは不当なことではありません。
>基本的には、預金者の権利が失われるわけではないのです。
>通帳や印鑑などを持って窓口に行けば、いつでも払い戻しが受けられます。
諸外国における休眠預金の一元的管理について(預金保険機構)
ttp://www.dic.go.jp/katsudo/chosa/yohokenkyu/200611-7/7-5-1.html
>全国銀行協会通達における「休眠預金」の定義
>全国銀行協会通達「睡眠預金に係る預金者に対する通知および利益金処理等の取扱い」において次のとおり規定されている。
>最終取引日以降、払出し可能の状態であるにもかかわらず長期間異動のないものを睡眠預金という。
>最終取引日以降10年を経過した残高1万円以上の睡眠預金については、最終取引日から10年を経過した日の6か月後の応答日までに、
>各預金者の届出住所宛に郵送による通知を行うものとする。
>郵送による通知が返送された睡眠預金および通知不要先のうち預金者が確認できなかった睡眠預金については、
>その通知または確認手続を行った日から2か月を経過した日の属する銀行決算期に、利益金として計上するものとする。
>最終取引日以降10年を経過した残高1万円未満の全ての睡眠預金については、
>最終取引日から10年を経過した日の6か月後の応答日の属する銀行決算期までに、利益金として計上するものとする。
民間公益活動を促進するための休眠預金活用法案要綱(衆議院)
ttp://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/190hou43youkou.pdf/$File/190hou43youkou.pdf
>休眠預金等移管金が預金保険機構に納付されたときは、当該納付の日において当該預金等に係る債権が消滅する旨
>休眠預金等に係る債権が消滅した場合において、当該休眠預金等に係る預金者等であった者は、
>預金保険機構に対して主務省令で定めるところによりその旨を申し出たときは、
>預金保険機構に対し、当該債権の元本の額に利子に相当する金額を加えた額の金銭(以下「休眠預金等代替金」という。)の
>支払を請求することができること。
>銀行などで眠る年500億円程度のお金はこれまで金融機関の収入になっていた
>金融機関では毎年、約1千億円の休眠預金が発生する。
>預金者から請求があったり、金融機関からの連絡がついたりして払い戻した分を差し引いても、
>年500億〜600億円が金融機関の利益となっていた。
と書かれています。
全国銀行協会通達「睡眠預金に係る預金者に対する通知および利益金処理等の取扱い」によりますと、
確かに、睡眠預金(休眠預金)は所定の手続きを経た後の銀行決算期に利益金として計上するものとする、と定められています。
全国銀行協会通達の通りの取り扱いを行うとしますと、金融機関は所定の手続き後に、睡眠預金について、
(普通預金) xxx / (睡眠預金に係る利益金) xxx
の仕訳を切ることになります。
一言で言えば、金融機関が睡眠預金を上記のように利益金処理する結果、預金者は払い戻しを受ける権利を失うわけです。
しかし、2016年12月14日(水)付けの日本経済新聞の社説を読みますと、このたび成立した法律上の取り扱いとして、
>法律が施行されても、預金者からの請求があれば預金は払い戻される
と書かれています。
この記述が正しいのなら、一言で言えば、睡眠預金が金融機関の利益金になった後も、
預金者が請求すればは預金は払い戻される、ということになります(つまり、その後も預金者の預金に対する債権は消滅しない)。
率直に言えば、2つの記事の記載内容が完全に矛盾しているわけです。
「民間公益活動を促進するための休眠預金活用法案要綱」の条文を読んでも、所定の手続きを経た後の睡眠預金に関しては、
預金者の預金に対する債権は消滅する一方、預金者は預金の払い戻しを請求できる、と書かれてあるのですが、
やはりこれらの定めでは条文間で完全に矛盾しています。
以下、法律の趣旨を踏まえつつ、睡眠預金についてどのように考えればよいか考えてみましょう。
まず、預金者からの睡眠預金の払い戻し請求には応じる一方で、睡眠預金の有効活用を考えていくならば、法律の条文に即して言えば、
端的に言えば、「休眠預金等移管金が預金保険機構に納付された後も当該預金等に係る債権は消滅しない」と定めるべきでしょう。
このように考えるならば、金融機関に「睡眠預金に係る利益金」は発生しません(つまり、払い戻しに応じることができる)し、
また、金融機関は休眠預金等移管金を預金保険機構に納付することができるようになります(つまり、法律の目的を果たせる)。
「休眠預金等移管金」というのは、結局のところは、金融機関から預金保険機構に対する一種の貸出金なのだと思います。
法律の条文上は明文の規定はないようですが、「休眠預金等移管金」は適宜預金保険機構から金融機関へ返還されると思います。
「休眠預金等移管金が預金保険機構に納付された後も預金者は睡眠預金の払い戻しを請求できる」
という制度にするためには、そのように考えるしかないと思います。
その場合は、金融機関は所定の手続き後に、睡眠預金について、
(休眠預金等移管金) xxx / (現金) xxx
の仕訳を切ることになります。
すなわち、預金者にとっては、金融機関に特段睡眠預金に相当する概念の預金はない(従来通り普通預金のまま)、
ということになります(この場合は、結局、預金者が睡眠預金を意識することはないということになります)。
しかし、第二の考え方として、仮に私がこの法律で行うこと(睡眠預金の活用方法)を間違えて解釈しており、
実は正しくは「休眠預金等移管金」は預金保険機構から金融機関へ返還されることはないのだとすると、
「休眠預金等移管金が預金保険機構に納付された後は当該預金等に係る債権は消滅する」と考えなければならないでしょう。
正確に言えば、睡眠預金に係る債権が消滅するからこそ、
「休眠預金等移管金」は預金保険機構から金融機関へ返還されることはなくなる(そのような活用方法が可能になる)、
ということになると思います。
当然この場合は、預金者は睡眠預金の払い戻しは請求できなくなります。
要するに、「睡眠預金に係る債権は消滅するのか否か」で話(活用方法)が根本的に変わってしまうわけです。
この場合は、金融機関は所定の手続き後に、睡眠預金について、
(普通預金) xxx
/ (睡眠預金に係る利益金) xxx
(休眠預金等移管金) xxx (現金) xxx
の仕訳を切ることになります(金融機関は「普通預金」勘定を消滅させなければならない)。
理論上は、この2行の仕訳は同時に切ることになります。
「睡眠預金に係る債権が消滅する」と同時に金融機関は「休眠預金等移管金」を預金保険機構に納付することになります。
金融機関にとって、「睡眠預金に係る利益金」は収益、「休眠預金等移管金」は費用です(トータルでは損益に影響はない)。
法人税法上は、「睡眠預金に係る利益金」は益金、「休眠預金等移管金」は損金、と考えるのが自然かと思いますが、
「民間公益活動を促進するための休眠預金活用法」に基づく特例のような位置付け(このたびの法律の趣旨を特段に鑑みて)で、
法人税法上、「睡眠預金に係る利益金」は益金不算入、「休眠預金等移管金」は損金不算入、と整理することもできると思います。
改めて法律の条文を読みますと、預金保険機構は「費用」により預金者への預金の払い戻しに応じることになっているようです。
預金者への預金の払い戻しに応じる以上、経理としてはそのように処理するしかない(預かったお金を返すのとは違う)のでしょう。
しかし、実はまさにここにこの法律における「睡眠預金に係る債権」にまつわる矛盾が内在しているのです(取扱いが混在している)。